chapter:1-9
時は少し戻り、燈弥方面。
彼は対峙した相手の言葉に、少しだけ目を
彼女の放った何気ない、「面倒」が理由の一言は想像以上に燈弥の頭を悩ませ ていた。彼女もここまでの効力があるとは思っていなかっただろう。逆にここまで考え て放った一言ならば、彼女は紛れもない「策士」だ。
彼女の何気ない一言から様々な想像が脳裏を駆け巡る。
基本的に、異能という「超能力」は脳の演算処理速度や予備範囲……所謂、対応能力や心の余裕といったものに比例すると言われる。
それはつまり、俗に「鋭い」や 「度胸がある」「頭が切れる」ということだ。
勉強ができる。っというくくりでではなく、頭がいい人間。そういった人間がより高gradeの位置につく。なるほど――。
「 いいねェ。最高だよ!俺をここまで悩ました奴は久しぶりだ。 俄然興味出て きた!!」
本能的にその対応が出てきた、っということは今までの原理ではなく、そこに「勘の良さ」というのが含まれてくるのかもしれない。
今までは「理性的な部分」の特出により能力が向上すると考えられてきたが、「勘」などという曖昧なもの「6センス」とい うものが作用してくるのならば、「本能的な部分」の問題が関わってくることになる。
能力というのは、そもそも人によって限界が決められているということになのかもしれな い。
彼女の言葉に、そこまで考えが行き届いた燈弥は、片手で額を覆うようにして天井を仰ぐとそんな風に告げる。
―― 要するに。 戦闘開始だ。
未だ動かない
―― 能力発動。「身体強化」「空間範囲知覚」
燈弥の能力。所謂スパコンを超える脳内処理と、それについてこれる体。
少しだけ足に力を込めると、派手な音と共に廊下には彼の靴の形にクレーターが出来上がり、斜め前に鋭角に飛び上がると、天井を経由して樹教皇の目の前に降り立つ。
「 ツレねぇなァ。 研究所でちっと眠っててくれればイイからよォ、なァ? 」
語尾が上がる、それと同時に表情には餌を前にした蛇のような、飢えた獣じみた笑みを浮かべた。
そんな燈弥に少女はぴくりとも反応をしない。面倒と伝えた言葉に嘘偽りはないからだ。
狩人を目の前にしてこの態度、流石に「王」といったところか。同格の相手に威圧的な態度はほとんど効果がない。
燈弥は多少下手に出ていたつもりだったが、やはりうまくいかなかったようだ。
流石に自分もここで争いを起こすのは気が引ける。っというよりか、ここで時間を潰すリスクと、現時点で概算的に検出できる研究結果を考えると、考えもなしに彼女に研究を持ちかけた自分の判断はミスだったようだ。
顔合わせ、そしてこちらが彼女に対し研究の意思がある。っということが彼女に伝わっただけでも良しとしよう。
「仕方がねぇ。今回は引くが......、考えておいたほうがいい。アンタが自身の能力の未熟さを知った時に、頼れるのは俺か......。いや、まぁいい」
燈弥はセリフの途中で苦虫を噛み潰したような表情となる。
そう、「王」gradeの能力者を強化できるのは、自分自身か同gradeの研究者たる燈弥くらいのもの。そして、全く別系統でもうひとり。計3つの方法程度しか存在しないのだ。
そして、彼にとって別系統のもう 一人はあまりいい思い入れのある人物ではない。彼のことをセリフの中で思い出してし まったからこその表情だろう。舌打ちを一つすると、踵を返して――。
「 じゃぁな。またどこかで会えるのを楽しみにしてるぜ? 」
そんな風に告げる。ゆっくりと廊下の奥に歩いていく彼の背中は、悪く言えば無防備 で、良く言えば余裕だった。少女……
――また、会えた時には必ず。そう燈弥は前を向きながらニヒルに微笑んだ。
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