第3話
僕には嫌いなものがある。それはまさにここ!嫌だよ。僕が嫌いなのを知っているユウは、僕に美味しいカリカリするやつを見せて、車に乗せるんだ。車に乗るのは好きだ。母さんが僕を乗せて行く時は、ユウのところに行く時なんだ。でもたまに、違うところに行くことがあるんだ。とっても怖いんだ。知らないところで、鼻にツンとくる匂いがして、あんまり好きじゃない匂いなんだ。そしてまた知らない人が出てきて、何やらユウたちと話して、僕はユウに抑えられるんだ。最初は、抱きしめてくれて、ユウの匂いに包まれて心地よかったと思ったんだけど、突然、後ろ足のところを強くつねられるんだ、その知らない人に。痛いって思ったら、今度は、チクってする。とっても怖いんだ。僕はその人は絶対に好きになれないな。でもそれは一瞬の出来事なんだ。だから次にそこに行く時まで僕は忘れてしまっているんだ。でもとってもとっても怖いし、痛いし、嫌なんだ。痛かった後はいつも、ユウが頭に前脚を置いてくれるんだ。だから痛かったのも忘れちゃうんだ。帰る時にはまたユウと遊べるって思って嬉しくなるんだ。車の中は凄く揺れるし、少しまずい匂いがするんだ。車に乗る前にご飯を食べてた時は、すっごくいい気分だったのに、車の中では気持ち悪くなって、何かが口に登ってきたんだ。オェッてなって、ご飯の匂いが少しするドロドロのやつが出てきたんだ。ユウがそれを見てて、僕から引き離そうとするんだけど、僕はご飯の匂いがするから少しでも食べたくなっちゃうんだ。だから、食べちゃったんだ。ユウはすごく怒ってたな。どうしてかな?ご飯だったんだよ!でもユウにはご飯に見えなかったのかな、不思議だな。いろんなものがユウとは違うく見えていることは、いつも面白いなと思うんだ。ユウは僕が色んな匂いを嗅いでいるから、何してるのかっていうふうに見てるんだ。ユウこそ不思議だ。どうしてこんなにいっぱい匂いがあるのに、全く気がついていないみたいだ。やっぱり、僕みたいに前脚が地面についていなくて、鼻が高いところについているから、僕の方が、色んな匂いを嗅げるんだな。ユウはまだ子どもだから、きっと出来ないんだ。僕はすぐ大きくなるけど、ユウは全然変わらないんだ。それもすごく不思議なんだ。ユウは成長が遅いんだ。「母さん」、「父さん」、「姉ちゃん」もみんな、全然大きくならないんだ。僕にみたいに大きくなったら、きっと色んなことが分かるようになるのにな。みんな成長が遅くてびっくりしちゃうよ。僕の好きなご飯の場所や「散歩」の時に付けられる「ロープ」の場所も僕は全部知ってるんだ。なのに、ユウったら、隠しているつもりみたいだ。僕には匂いで、もう分かるってのに。きっと匂いがわからないから、隠していると思い込んでるんだな。ほんとに子どもなんだから、ユウは。でもユウはよく色んなことを覚えてるんだ。そして僕が覚えていないから、怒るんだ。その時のユウはとっても怖いんだ。だから、僕は頑張って覚えていようとするけど、楽しいことがあるとすぐ忘れちゃうんだ。でも怒ったユウは、すぐ僕を抱きしめてくれるから、あったかくて好きなんだ。いい匂いがする。怖かったのも忘れるくらいだよ。僕は最近、「お外」にいるんだ。ユウは「お庭」って言うんだ。「散歩」の時には「お外」って言うのに、僕がいるところは「お庭」らしいんだ。最初は夜が怖かったんだ。ユウがいなくなるから。でも最近はもう慣れたんだ。すごいだろ!僕はユウより大きいからね。「お庭」にいると、とっても楽しいんだ。寒くなったら、「小屋」に入るんだ。ユウが作ってくれたんだ。そこには、フカフカするあったかいのがあって、好きなんだ。ユウと一緒に寝ていた時と似てるんだ。ユウの匂いも少しするから落ち着くんだ。暑くなる時もあるんだ。その時は、穴を掘るんだ。これはよくユウに怒られるんだけど、でも暑くってしょうがないから、いっぱい深く掘るんだ。そして、その中にいたら、冷たくて気持ちよくて、ずっとそうしてる時もある。僕が、いっぱい穴を掘るから、ユウはもう怒らなくなったよ。やっぱりユウは僕のことちゃんと分かってくれてるんだよ。すごいでしょっ!「母さん」がよく僕を撫でてくれるんだ。いっぱい僕の名前を呼んでくれるから、心地いいんだ。でもね、「父さん」はね、撫でてくれないんだ。その代わりに、いっぱいご飯をくれて、後脚を凄く動かして僕と遊んでくれるんだ。たまに転けそうになってて、面白いんだ。僕の頭の上を「父さん」の後脚が行き来するんだ。僕もジャンプしてそれを捕まえようとする。そんな遊び。とっても楽しいんだ。だから、今度兄弟たちに会った時に教えてあげるんだ。「父さん」としてる遊びをみんなしたら、きっと楽しいだろうな!
君の声を聴きたい 白菫 @shirosumire944
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君の声を聴きたいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます