第三話 クレブス、秋波に気づかず 

数カ月して、クレブスは姿勢だけはどうにかなった。後は、マナーと教養。

そして大問題の言葉遣いだ。


「あ、クレブス様よ。さすがビュータス様の弟君だわ。遠目で見るのが精いっぱい。きっと近くで見たら、その麗しさで卒倒してしまうわ!」


本日は公爵家でのお茶会。ビュータスと公爵夫人主催のお茶会です。

結構目が肥えた方々がいらしているのですが、クレブスの評判は↑のようなものばかり。


(近くで見たら…別の意味で卒倒するでしょうね。まさかあの容姿からあのような田舎訛りが飛び出すとは思わないでしょうから。現実逃避するかもしれないわね)


「本日は我が家でのガーデンパーティーにいらしてくれてありがとう。楽しんでいらしてね」

(聞いてるの?どの令嬢もクレブスを探してるみたいねぇ)


「クレブスなら今日は剣術の稽古だったかしら?」

(真実は強い訛りを直す授業だけど…)


「まぁ、クレブス様は剣術も嗜んでいるのですね!いずれは近衛騎士でしょうか?」

「特に決めてないけど、本人の希望通りにしたいわねぇ」

(冗談!本人の希望なんて通したら田舎に籠ってしまう!)


「王都に戻って来たばかりですし、きちんとしたマナーを身に着けて社交に出られるようになるのが先決ですわ、オホホ」

(本当に、早くあの訛りをなんとかしてよ!)



と思っている姉上、母上の希望とは裏腹に屋敷の周りには一目でもクレブスを見ようとする令嬢で溢れかえった。


「これでは屋敷の警備にも差し障りが出るな。なんとかならないのか?同年代のビュータス!何かいい案は?」

「私に聞かれましても…。そうだ!クレブスの肖像画を売るとか?それで群がる令嬢は減らないかしら?」

「屋敷で一目だけでも…というのは、言い方次第ですけど、まぁ淑女らしからぬ振舞いではありますからね」

「おら、またなんかわるいことしたのけ?」

クレブスの訛りは少し弱まった。


「クレブスはなんにも悪くないから心配しないでね。強いていうなら、クレブスがかっこよすぎて令嬢が集まってくるってことかしら?」

「おらがかっこよすぎるのけ?はんずかしい~」

と、クレブスは屋敷内をどこかに走っていった。

公爵は直ちにクレブスが外に出ないようにと屋敷内の使用人全員に言い聞かせた。

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