第二話 クレブス折れかかる

その頃のクレブスは姿勢の矯正していた。


猫背の矯正に背中に板を入れて、胸を張るようにと肩甲骨の矯正まで施していた。

やはり、矯正後のクレブスは容姿端麗という感じだ。


「とっちゃ。ごれぎゅうくつだべ。どうにがなんねぇのけ?」

やはり、口を開くと台無しである。姿勢矯正の時には公爵が付き添う。


「とっちゃ。ではなく、父上と呼べ。母さんの事は母上と呼ぶんだ」

「ぎぞくってめんどうなんだなぁ。おら、きぞくやめていいが?ぎゅうぐつだべ」


「そこまでか?やめてどうするんだ?」


「じっちゃとばっちゃとぐらずだ」

クレブスは笑っている。


「どこに出しても恥ずかしくない男になるって言ったのに、もう根を上げるのか。早いな。さて、ここに管理人夫婦からの手紙がある」


「じっちゃ、ばっちゃ!」


「手紙によると、管理人夫婦はもう年だからクレブスも立派な貴族になってほしい。とある」


怪訝な顔でクレブスは公爵を見る。公爵はクレブスに手紙を見せた。

「じっちゃ、ばっちゃ…」


――クレブスへ

 お前は見た目よりもずっと根を上げるのが早そうだな…。はぁ。きちんと立派な貴族になるように!それでないと、私達夫婦が死んだ後に浮かばれませんよ?

 きっと、言葉遣いと姿勢について公爵閣下に矯正指導を受けている事と思います。それについては大変申し訳なく思いますが、この田舎にクレブスを馴染ませるためでもあったのです。田舎において、仲間外れを作るのは簡単です。ですが、クレブスを仲間外れにさせないように。また貴族だからと我儘にならないようにという手段でもあったのです。お怒りを少しは静めていただきたく思います。

 クレブス、王都に戻ったからには、そちらのやり方がある。王都に馴染まなければならない。ましてお前は公爵家の長男、公爵家を継ぐものだ。そのことをしっかり頭にいれて考えるように!

                                        管理人夫婦より



「じっちゃ、ばっちゃ、言葉遣い…」

「王都用と別荘用と使い分けてたみたいだな」


「おらは、どごにだじてもはんずがじくないようなおどこさなる!」

とクレブスの折れた心が元に戻った。

「ん?追伸?」

公爵閣下が発見した。


 追伸

 クレブスが熱を上げていたあの娘は、クレブスが王都に行くと他の男ととっとと結婚しましたよ。彼女の幸せを願ってくださいね。


「じっちゃ、ばっちゃはんずかしいべぇ、でんもあのごが…ぞっかぁ。じかだないよなぁ」

と、クレブスが男泣きを始める。この時ばかりは容認した。

しかしだ。管理人夫婦よ、次期公爵である息子が熱を上げているのを放っておいたのか?そこらの平民の娘と次期公爵では身分が釣り合わなすぎるぞ。警告!

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