七菜
その少女は8歳のとき、この吉原につれてこられた。そして禿として、雑用をさせられた。
「なに、ボーっとしてるんだい。手を動かすんだよ、手を。」
その少女はいつもボーっとしていて、いつも花車に怒られていた
ある日、一人の姉遊女がその少女が毎日同じ歌を歌っていることに気づいた。その歌は歌のうまい姉遊女が客のために作った歌だ。その歌を歌ったのは一回きりだったため、姉遊女はとても不思議に思った、そのようなことは一度きりではなかった。その少女は実に様々な歌を日々歌っていた。
少女は段々とこの場所の仕事を目撃することになり、自分は売られたのだと分かってきた。将来、自分も男に買われるのだ。いやで何度も脱走を試みるが、いつも、
「逃げられやしないよ。あんたにはたんと稼いでもらわなきゃ行けないんだからね。」
と花車に見つかってしまった。
月日が経ち、その少女も15歳になった。少女は禿を卒業し、新造となった。そして箏のレッスンを受け始めた。その才覚はすぐに出始めた。箏のレッスンというものは盲目の師がやるもので毎回曲を弾きそれを繰り返すことで曲を覚えていく。しかし、その少女は一度で師の曲を覚えてしまうのだった。
その日、花車はその少女に優しく話しかけた。いつも怒られてばかりなので、驚いていると、
「いい人が見つかったんだ。あんたの水揚げを引き受けてくれる人が。」
少女は覚悟はできていた。幼い頃からずっと自分もいずれそうなることは日々見聞きすることでわかっていた。
部屋へ入ると50代くらいの男性が待っていた。そして少女の初めてはその男に奪われた。少女は痛さに苦しんだ。それ以外は何も感じなかった。なされるがままだった。涙が頬を伝っていった。
水揚げを終え、遊女となり、その少女には七菜という源氏名がつけられた。
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