第27話 モンスターカレーの実食

カイが快く配信の提案を受け入れてくれたので、ボンジリはさっそく先ほど切った配信を再開する。

しばらく経つと、


>おっ

>配信再開してるっ?

>待ってたー


ポツポツとボンジリの元にコメントが寄せられた。

よしよし、100人くらいはすぐに集まったな。

それだけ先ほどのフォグドッグ瞬殺は衝撃的だった、ってことだ。


「視聴者のみんな、お待たせ。さっきは配信ブチ切りしてしまってスマンかったわ」


>あれ?さっきの人いるじゃん

>フォグドッグ瞬殺した人だ

>配信の許可もらったん?


「そうそう。こちらさっき俺のこと助けてくれたカイ君や。この迷いの森を抜けるまでの間いっしょに配信してもらえることになったので、みんなよろしく!」


「カイです。よろしく……あの、カメラってどこ?」モグモグ


「あ、たぶん俺の背中側に追従する感じで、三人称視点で周囲が見渡せる画角になっとるハズや」


「そうなんだ。よろしくお願いします!」モグモグ


カイはボンジリの背面へ向けてペコリと頭を下げた。

熱々カレーを頬張りながら。


>よろしく

>不出来なボンジリを救ってくれて感謝

>てか、まだカレー喰ってるの?w

>食べるの遅くね?


「いやいやみんな、ちゃうねん。これ二食目のカレーやねん」


>ん?

>は?

>二食目・・・?


ボンジリは寄せられたコメントに「まあそうなるわな」苦笑いで応じる。


「このカレー、カイ君がさっき倒してくれたフォグドッグの肉を使って作ってくれたやつやねんで」


「クセが無くて美味いよ」モグモグ


料理は完成した時点でアイテム化されるので、ボンジリは手に持つ器に盛られたカレーのアイテム詳細を開いて見せた。


フォグドッグのホロホロカレー

└フォグドッグの肉をホロホロに煮込み

└ふんだんにスパイスを使って

└味付けしたカレー

└速さパラメータが上昇・大する


>はぁっ!?

>モンスター入りカレーってコトっ!?

>ゲェェェェェ!!!


ゲテモノを見たようなコメントが大量に流れてくる。

まあそうなるよな。

でも、


「みんないったいどんな味なのか、気になるよな……?」


>まあ気にはなる

>ボンジリも喰うのっ?

>体に悪そう

>そうか?肉は肉だろ?

>感想プリーズ!


「もちろん俺もいただくで。ほんならさっそく……」


内心ドキドキしながら、ボンジリはスプーンでカレー……

とりわけ大きな肉の塊を掬った。


>うげぇぇぇぇ!

>肉って感じの肉www

>それあのグロモンスターっすよね・・・?

>ムリムリムリwww

>俺なら絶対オエッてなって喰えんw


視聴者よ、俺だってホンマはそうなんやで。

ボンジリは内心でそう呟きつつ、

しかし顔には出さず、


「いただきますっ!」


意を決してその肉を頬張った。

ホロリ。

口の中で肉が解けていく。


「うっっっまっ! てか柔らか! 高級ビーフカレーのビーフみたいや!」


>ウソだろwww

>美味いとか嘘

>マジで言ってる?


「ホンマホンマ。肉の味はほとんどせえへん。良い意味でクセがない、個性が無いとも言えるけど……肉の味に特徴が無い代わりに食感がすごくええで!」


>そうなんだ・・・

>グロモンスターのくせに味に個性ゼロは草

>フォグドッグを味で評価してるヤツwww

>他にいねぇぞwww

>ちょっと美味そうに見えてきた


「いやぁ、モンスターって見た目じゃ分からんもんやな……! なんか新しい発見やったわ。なあ、カイ君」


「えっ? ああ、そうだなぁ」


カイはヒョイヒョイと、配信なんてそっちのけで鍋からカレーを掬っていた。

二杯目である。


>いつの間におかわりしてて草

>食いしん坊かよwww

>視聴者そっちのけで食べ続けるスタイル

>無言で食べ続けてるの草

>くそ、そんなに美味そうに喰われると無性にカレー喰いたくなってくるな・・・


続々と寄せられるそんなコメントを見つつ、

ボンジリは結局カレーをペロっと食べ切ってしまっていた。

配信上だからとかそんな理由もなく、純粋にカレーが美味しかった。

カイ、全行程を淀みなく手動マニュアルで調理していたし、相当な料理上手なのかもしれない。


「さて、ごちそうさま。これからどないしようか」


鍋と食器類の片づけを終え、ボンジリたちは立ち上がる。


「迷いの森の脱出を目指したいところやけど……実はカイ君も迷ってんねん」


「3日迷ってます」


>はぁ?www

>迷ってたのっ!?

>それでカレー喰ってたの?

>3日迷子は草

>何で悠長にカレー喰ってたんだw


「まあホンマそれで、もう俺もそうツッコんでんけど、カイ君には迷おうがどうしようがとにかく"カレーを食べたい"という重大なミッションがあるらしい。おもろい人やで」


「カレー食べるためにLEFに来てるからね」


「いや、インド観光とちゃうねんで? とまあそんなツッコミは置いておきや、でも俺もカイ君のそのスタンスおもろいと思ったんや」


ボンジリはひと呼吸を溜め、そして、


「というわけで、今からは迷いの森の脱出を目指しつつ、迷いの森のモンスター食グルメ配信の始まりや! みんなが喰ったことの無いモンスターをカイ君にカレーにしてもらって、どんどん食べていくで!」


>マジで?

>グルメ配信かよwww

>まあ迷ってるだけよりかはマシ・・・か?

>いや俺はけっこうモンスター食が気になるよ

>さっきの料理の効果もさりげに強かったしな

>これは新しい発見あるかも


「良い意味にしろ悪い意味にしろ、これまでに無い情報の詰まったユニークな配信になるはずや。ぜひ興味を持ってくれた視聴者さんらは見てってほしい!」


>おk

>OK。がんば

>期待

>期待!

>見ます!


ボンジリはカイと共に、とりあえず来た道とは逆へと歩き出すのだった。

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