第25話 迷いの森のカレーオタク

「え、えっと……まずは助けてくれて、ありがとう」


ボンジリはペコっと頭を下げてから……

その初心者プレイヤーの頭上を見る。


「カイ君、でええんかな? レベルは16……えぇっ!? 16!?」


「そっすね。最近レベルアップし続けてて」


カイはあまりこちらに興味なさげに……

というよりかは目の前のカレーを食べることだけに興味を持っているようにバクバクモグモグとカレーを頬張り続けていた。

16なら、そろそろマネーも貯まってくる頃合いだろう。

なのに、なぜ装備を新しくしないんだ?

見た目がまるで初心者そのものだ。


>16でフォグドッグ倒せるのはすごい

>しかも3体同時やぞ?

>なぜカレーを喰ってるんだコイツは・・・

>初期装備のままなのは何故?

>美味そうにカレー喰うなぁ・・・


あっ、ヤバい。

配信したままなの忘れとった!


「視聴者のみなさん、スマンけどいったん配信切るわ! なんも撮影の許可取ってないんで、ホンマ申し訳ない! この後すぐに報告するから、待っておいてもらったら嬉しい!」


>おk

>了解

>気になるんでぜひよろしく


ボンジリは慌てて配信を切った。


「カイ君、食事中に申し訳ない。ちょっと謝らなアカンことがあるんやけど、ええかな?」


「謝らなきゃならないこと?」


「うん。ごめんなさい。さっきまで俺、実況配信中やったんよ。だからさっきまでここでの様子が配信されてしまってる。本当に申し訳ない」


「ああ、でも事故とかなら仕方ないし、別に大丈夫」


「ホンマか? もし嫌やったら配信のアーカイブは消すし、視聴者にも変に拡散せんように話しておこうと思ってるんやけど」


「そこまでしてもらわなくていいよ。俺もこうしてモンスター肉ゲットできたのでありがたかったし」


「そっか。ありがとう……って、モンスター肉?」


そういえばこのカイ、さっきも『肉がドロップした!』って喜んでいた気がする。


「そのフォグドッグの肉、どないするん? まさかカレーに入れるなんてことは、」


「入れるけど?」


「入れるんかいっ!」


冗談で言ってみたのに、本当に入れるつもりだったとはっ!


「そっか。このモンスターはフォグドッグって言うのか、どんな味がするんだろ……」


カイは何やら舌なめずりをしている。

え、怖っ!


「な、なあ、モンスターの肉って美味いん?」


「いや、種類によるけど……これを食べるのは初めてだから分からない」


「えっ!? それってつまり、他のモンスターの肉は喰ったことあるってことか……!?」


「え? そりゃあ、うん」


ボンジリの問いに、カイは当然のようにコクリと頷いて、


「俺はこの森で"3日"ずっと迷ってるからさ、ここで狩ったモンスターの肉入りカレーしか食べてないし」


「は、はいぃぃぃっ!?」


3日っ!?

ボンジリから素っ頓狂な声が出る。

迷ってる時間の単位がそもそも違うんですがっ!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る