第13話 MPK討伐隊

王城正門前にて。


「3人……これで掲示板で返事をくれた者は全員集まったようだな」


白のフルプレートアーマーを装備した女性プレイヤーが口を開く。


「まずは集まってくれたことに感謝する。改めて、私の名はエリフェス。宵の明星クランに所属する者だ」


エリフェスが開いたステータスボード、その所属クラン名には確かに【宵の明星】と記載がされている。


「おお……マジで宵の明星だ……!」


「俺、実際に所属してるプレイヤーに会うのは初めてだ……!」


集まった者の内、2人の男性プレイヤーは驚きに息を飲んでいるようだった……

が、しかし。


「あの、宵の明星って……?」


もう1人、今回の一連の騒動の原因……

カイの名前を不用意に掲示板へと書き込んでしまったその女性初心者プレイヤー、"カルイザワ"は首を傾げた。


「宵の明星は、ゲーム内の治安維持を目的に設立されたクランだ」


エリフェスが答える。


「我々はこのLEFレフを多くのプレイヤーたちが純粋に楽しめるよう、PKKを軸に主な活動を行っている」


「PKK?」


「プレイヤー・キラー・キリングだ。要は、プレイヤーを不当な理由で殺害キルするプレイヤー……そんな悪党共を滅することを目的としている」


「そ、そんな役割の方々もいるんですね、LEFには……!」


「役割、というよりかは私たちが好きでやっているだけだがな。宵の明星はLEFリリース直後から活動を始め、今では大手クランのひとつ。治安維持を目的としたクランの中では最大手となってる。これもひとえに、我々のクランリーダーの崇高な理念による賜物……いや、今はそれはいいか」


エリフェスはコホンと咳ばらいをひとつ、


「さあ、さっそく掲示板に出没した輩がMPK犯かどうかを確認しに行こう」


「あっ、はいっ! 前に私が"カイ"という名前のプレイヤーさんを目にした市場へご案内すればいいでしょうか?」


「いや、そちらではない。MPK常習犯がよく受注しているらしい討伐クエストについての情報が入ってきている。まずはそちらを当たろうと考えている」


そうしてエリフェス、カルイザワたちがやってきたのは王都の中では誰もがよく使う店……モンスター素材屋だ。

そこでは常に店頭に並べるためのモンスター素材を入手の討伐クエストが受注できるのだが……


「なにっ!? "カイ"が討伐クエストを受注して行っただとっ!?」


店の主人のNPCへと聞き込みをしたところ、どうやらすでにカイはここに訪れていたらしい。

しかも、


「ああ。2人組でね。もう1人はここ最近毎日ウチで討伐クエストを受注していく"ハル"ってヤツだ」


「ハル……!」


エリフェスが軽く舌打ちする。


「宵の明星へと入ってきたMPKプレイヤー情報の中にも、そのプレイヤーの名があったな。これはMPK犯確定だ……!」


「それじゃあ、そのハルって人は本当にMPKをしているプレイヤーってことですかっ!? なら、カイさんは……!」


不安げなカルイザワの言葉に、エリフェスは店の主人へと向き直って、


「そのカイとハルが依頼を受注していったのはいつ頃だ?」


「確か……30分くらい前でしたかねぇ」


「くっ……、さすがにもう間に合わないかもしれないな……」


悔しそうにしつつ、エリフェスは踵を返す。

店から出ると、


「依頼の内容は北の森へのゴブリン討伐……もうすでに戦闘は始まっている頃合いだ」


「MPKだから……ゴブリンを使って、でしょうか?」


「いや、MPKに使うのだとしたらオークだ。北の森は少し奥へと行けば中級モンスター、オークの生息地になる。MPK常習犯ハルの狙いは、カイにゴブリンを狩らせている間にオークを引き連れてくることだろう」


「オークって……」


「まず初心者では勝てまい。まともに戦えるようになるのは最低でもレベル10から。それも一対一で相手にする、という前提でな」


エリフェスは舌打ちをしつつ、


「だがMPKをするようなヤツだ。当然、獲物には不利な状況を用意するハズ。カイを救うのは絶望的だろうな……」


「そんな……!」


「だが、しかしまだハルを捕捉し滅することはできるかもしれない。これ以上の犠牲を出さないためにも、足を止めるわけにはいかん」


エリフェスは北へと歩き出しながら、


「私とカルイザワの2人で北の森へと向かう。あとの2人にはリスキル準備をお願いしたい。タレコミを元に予想したハルの復活リスボーン地点情報をチャットで送るから見張りを頼む」


「「了解!」」


「では行くぞ、カルイザワ」


「はっ、はいっ!」


エリフェスとカルイザワは駆け足で、北の森への道を急いだ。




=====

次は19時に更新いたします。

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