第7話 料理人職

晩餐会の場所は王城。

王家と地方貴族の家の親睦を深めることを目的としたもののようで、格式高いものらしい。

となると当然、


「プレイヤー名、カイ。お前に参加資格は無い。応募しておいて料理人職ですらないとは、いったい何を考えているんだ?」


俺は普通に晩餐会会場まで来て参加資格なしと判断されてしまった。

応募はできたんだけどなぁ……?

俺が首を傾げていると、晩餐会を取り仕切っているらしい執事服のNPCがため息を吐いた。


「あのなぁ……料理人職レベル2とか3で応募してきたヤツはいたが、そもそも料理人職ですらないヤツが応募してきたのは初めてのことだぞ?」


「ところで料理人職って何なんでしょう?」


「それすら分からずに応募してきたのか、豪胆なヤツめ……」


執事服NPCは呆れ顔で、


「料理人職といったら生産系職種のひとつで料理に特化したスキルを持つ職業に決まっているだろう。剣士職や魔術士職など戦闘系職種とは種類の異なる職業だ」


「なるほど……でも俺、お金は稼ぎたいんですよね。料理もしたいし、なんとかなりませんか?」


「なんとかなるわけないだろう。例えば、だ。お前が接待で高級寿司に行ったとする。そこで出てきた職人が『今日初めて寿司握りに来たっス、頑張るっス』って言ってきたら、お前ならどう思う?」


「帰ってくれって思いますね」


「俺も今のお前に対して同じ気持ちなんだ。帰ってくれ」


大変に辛辣だな。

現実なら当然のことだろうが、これはゲームなのに。

でも、応募できたからには何かしら俺にもできる要素はあると思うんだけど。

相手はAIだし、俺の料理人レベルが低ければ低いほど仕事を出し渋る仕様なのかもしれない。

もうちょっと粘ってみるか。


「あのっ、料理には自信があります!」


「いや、無理だって」


「そこをなんとかっ!」


「料理人でもないヤツが食い下がるなっ!」


「まかない作りでもいいんですっ! とにかく料理を作ってお金も貰える仕事がしたいんですっ!」


「そんな突然用意できる仕事があるわけ……いや?」


執事服NPCは少し考えるようにすると、


「晩餐会会場ではないが、調理の仕事ならひとつあるな……」


「おっ!?」


これは、イベント参加のフラグ立ったな?


「ちなみにどんなお仕事でしょう?」


「今回王都へと訪れた貴族家の御方々に同行した一般兵は、ここの王城衛兵たちが普段使っている食堂でもてなすことになっていてな」


「ほほう」


「兵士の数は多いから人手がどれだけあっても足りないだろう。話は通しておくから、この王城から少し北に行った先にある衛兵宿舎に併設されている食堂へと向かうがいい」


「了解です。ありがとうございます!」


晩餐会への参加は無理だったが結局仕事はもらうことができた。

まあ正直晩餐会というキッチリとした場でカレーを出せるのかは不安だったし……

むしろ食堂の方が俺にはマッチしているだろう。

善は急げとばかりに俺はダッシュで北へと向かった。




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次は19時に更新します。

よろしくお願いいたします。

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