第6話 カレーの称号1

3連休の中日、日曜日。

俺は今日も今日とてLEFにログインしている。


「モグモグ……ふぅ、今日もカレーが美味かったぁ」


<【カレー初級者】の称号を獲得しました>

<【カレー好き】の称号を獲得しました>


「ん?」


キャシー婦人のお宅でカレーを食べ終えると、唐突にシステム音声と赤文字が俺の前に躍り出てくる。

なになに?

カレー初級者?

カレー好き?

ステータスボードから確認してみるか。


「ええと?」


宙へ手をかざすと半透明のステータスボードが現れる。

称号一覧からそれぞれの詳細を開いた。


カレー初級者

└20種類のカレーを手動生産した証

└今後カレーを手動生産するごとに

└僅かに経験値を獲得できる


カレー好き

└20種類のカレーを食べた証

└今後カレーを食べたときの

└付属効果が1.1倍になる


「ほう?」


称号というものはゲームプレイを進めるにあたって他にもいくつか入手していたので知っていた。

生産10回した称号とか、クエストを10回受けた称号とかね。

だけど、こんなマニアックな、しかも効果付きの称号もあるのか……


「【カレー初級者】……経験値が入るのは嬉しいな」


LEFを始めて3日経つが、俺は未だに王都から一歩も出てないしメインストーリーも進めていなかった。

モンスターと戦ってすらいない。

相変わらずレベルは1のままだ。


「カレー作って食うだけでレベルが上がるってことだろ? 最高だね」


あとはもう1つの称号【カレー好き】について。

カレーを食べたときの付属効果……ってなんだ?


「検証してみるか」


試しにまたカレーを作ろう。

本日6食目だけど、"空腹のリング"のおかげで満腹度ゲージはMAXにならないし、VRだから実際にお腹が膨れることもないのが最高だよね!


「って……あ!」


しまったな。

(キャシー家の)魔力式冷蔵庫に食材がもう無い。

サブクエ周回で手に入れた肉・野菜をパンパンに詰め込んでおいたのに……


「しゃーない。先にまたサブクエ周回するか」


王都市場は広く、結構な数の"おつかいクエスト"が用意されている。

その内容の多くは

・市場の誰ソレに何かを届けてくれ

・店の手伝いをしてくれ

・○○をやるから代わりに××をくれ

といった感じ。

手に入る報酬はほとんどがアイテムや素材などで、それほどの稼ぎにはならない。

せいぜいが宿代+αくらいのものだ。

そしてその+αはもちろんクエスト報酬で手に入れられる以外のカレー具材の購入に充てられている。


「だから一向に金が貯まらないんだよなぁ……」


そろそろ倹約してマネーを貯めるべきだろうか?

それか報酬がマネーの"討伐クエスト"に手を出す?

あるいは課金?

いつまでもキャシー婦人宅のキッチンにお世話になるわけにもいかない。

調理器具やスパイスを自前で用意する必要がある。


「……ん?」


歩いていると、市場のその手前に新しい立て看板がある。

ゲーム内で新規イベントや新規クエストなんかが発生したりすると掲示されるものだ。


晩餐ばんさん会の調理スタッフ募集】

【報酬:マネー、アイテムなど】


「ほう?」


生産クラフト系イベントのお知らせだ。

しかもこれ……渡りに船ってヤツじゃないか?

カレーを作りながら(そして味見をしながら)金を稼げる舞台が用意されているということだ。


「よし、応募するか」


晩餐会イベントへの申し込みを行うことにする。

立て看板のコードを読み取ると、勝手に晩餐会専用チャット画面が目の前に表示される。

え~っと?

ん?

晩餐会への参加条件は……【料理人職レベル5以上】?


「料理人職って……なんだ?」


俺はまだこのゲーム内での職についてほとんど知らんのだが。

何やら足切りの条件みたいだったけど、でも俺でも応募はできるようだ。

じゃあいっか。

たぶん条件未満であっても何かしらの形でイベント自体には参加できるようになっているのだろう。

応募すると、応募完了の連絡がゲームチャットで届く。


「さっそく今夜、か」


このイベントは今日明日の2日で行われるらしく参加者もその間のどこか1日に振り分けられるようだったが、俺は運良く今夜すぐに参加できることになった。




=========

次は12時に更新します!

よろしくお願いいたします。

フォロー・☆評価いただけると励みになります!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る