踏切

小野進

青い人工の光がぼうっと、ただそこに在った

わたし、わたしは、一体何をしているのだろう

その問に意味など無かった

なぜならば、答など無いのだから


既に寝静まった住宅街、その外れ

青い光がそこに在るのと同じように、ただわたしもそこに在った

わたしは無力だった

「死にたい」と「死にたくない」、

「生きたい」と「生きたくない」があたまのなかに渦巻いている

けれど、身体はそれを気怠そうに眺めているだけだった


青以外何も無かった世界に、突如眩しい赤が瞬きはじめた

まるで急かすように、決断を迫るように

一定のリズムで明滅する赤い光

心臓の鼓動が、警報音とリンクする

「一歩踏み出せば楽になれる」という声と

「一歩踏み出せば台無しになる」という声

その両方が心臓の鼓動を何倍にも早めてゆく


轟音と共に、周りの音はすべて消えた

連れ去られるように、掻き消えるように


残された身体は、ただ思った

「何をしているのだろう」と

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踏切 小野進 @susumu-ono

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