24「番外編2」

緑沢太陽と光は、赤野の家を訪れていた。

赤野の家には、きつめが一人でいる。


春樹と夏也は、小学校へ行っていた。

今年は、小学二年生である。

今回、緑沢夫妻が話があり、きていた。


きつめは、玄関から近い部屋に案内した。

そしてお茶とお菓子を用意する。


「それで、お話とは?」


きつめの前に、一つのファイルを置いた。

ファイルを手に取り、きつめは見ると。


「これは、すごい計画ですね。でも、結果的には成功はしないと思います。」

「そうでしょうね。でも、私達は、この薬を完成させないといけないのです。」

「そう、その為に、夏也に迷惑を掛けてしまう。」


きつめは、計画と二人の言葉で、何を頼みに来たのか分かった。


「幸い、夏也君は家の春樹と仲いいみたいですし、小学生っていっても何も出来ないわけではないです。教えれば、一人で生きていく力も身に着けられると思います。」

「では。」

「でも、小学校に通っている間は、なるべく、気にしてあげてください。基本は、親の愛情だと思います。」

「きつめさんから言われると、言いませんね。」

「あら、私に夏也君をのではなくて?」


きつめの言葉遊びに、めったに笑わない太陽が笑った。

光も太陽につられて笑う。


「夏也の事、よろしくお願いします。」

「自然に赤野家の息子だと、周りには思わせます。」

「そうしてください。」


きつめは、緑沢夫妻に微笑むと。


「それと、これは、必要ないかもしれませんが……。」


一言発した後、もしも、研究所の意思に反したい場合の対策案を助言したのである。

今からでも出来る事から、最後はどのようにしたらいいのか、などを言葉で伝えた。

これが、後に、実行される、研究所を壊滅させる方法である。


しかし、この方法には、実験体や緑沢夫妻の命を断つ物ではなかったが、何か理由があり緑沢夫妻は実験体と共にした。

そこには、想像しかないが、愛情が関わっていると思われる。


緑沢夫妻は、玄関で靴を履いていると。


「では、今日から、夏也君、家に来る様に言って貰えます?」

「はい、帰って来たら直ぐにでも。」





「ただいま。って、なんでいるの?母さん、今日、仕事は?」


春樹が帰ってきた。

いつも帰ってくると一人なのだが、それでも「ただいま」という辺り、春樹はとてもきちんとした子である。


早速ランドセルを、ちゃぶ台に置いて、中身を出している。

宿題とプリント、給食袋を分けていた。


「仕事休みだよ。それよりも、春樹。」

「なんだよ。」

「お母さんの料理、美味しい?」


いつもの母とは違った感じがして、春樹は、素直に答える。


「は?美味しいよ。」

「何が好き?」

「えー、マカロニたっぷりのグラタン……かな?」


いきなりの質問に戸惑いながらも、プリントをきつめに渡しながら、春樹は答えた。

きつめは、プリントを受け取りながら、何かを考えている。


「何の質問だよ。それよりも、今日、夏也君と一緒に宿題する約束なんだ。邪魔するなよ。」

「邪魔しないよ。でも、お茶とお菓子は用意するわ。」

「なら、お茶は紅茶にして、お菓子はクッキーがいい。夏也君、家ではおやつ、そうなんだって。家は、緑茶やお饅頭だけど、そういう組み合わせもあるんだって思って、体験したいな。」

「わかったわ。それとね、今日、夏也君も夕ご飯一緒したいと思うの、春樹の好きなのでいいかな?夏也君、アレルギーとかない?」

「給食では一緒の食べているから、無いと思うよ。それより、今日はどうしたんだよ?いつもの母さんじゃないよ。息子に遠慮はするな。」


きつめは、春樹を見ると、とても愛おしくなる。

気が楽になっていく。


すると、玄関のチャイムが聞こえた。


「きっと、夏也君だ。母さん、邪魔すんじゃねーぞ。」

「はいはい。」


夏也は、料理の道へと進むきっかけの日となった。

そして、赤野家の住人になっていく。


きつめは、この時から、何故か、ヒシヒシと感じるものがある。

アラームがセットされている感覚。

その時間になるのを、今か、今かと、迫られている。


命のアラームだと確信したのは、この日から四年経ち、春樹と夏也が小学校を卒業して、中学生になる間の春休みだった。


終わり

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うちのとうさんは 森林木 桜樹 @skrnmk12

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