23「番外編1」

桜は、春樹が、本当に強いのかを知りたかった。


警察学校から家に帰ってきた桜は、こっそり春樹の仕事場に入り、仕事をしている春樹の後ろから、本気で攻撃する。

春樹の肩を目掛けて、手を下ろすと、桜の手は宙を切った。


見ると、春樹は、椅子から降りずに、座ったまま、避けていた。


春樹は、今、やっていた仕事を机に一度置くと。


「桜、何をするんだ?」

「別に。」


桜は、また、春樹に攻撃する。

春樹は、桜の攻撃を避ける。


その音に、夏也と貢と春男は気づいて、春樹の仕事部屋に来た。

桜が春樹に攻撃を仕掛けているのを見て、止めようとしたが、止められない。


「お父さん、本気で来て。私は、守られる立場ではない。もう、守る立場の人間よ。」

「でも、娘に、拳は。」

「なら、止めない。」


桜は、春樹に再度攻撃をする。

春樹は、避ける。

攻撃はしなかったが、夏也と貢と春男の顔を見ると、察した。


『なるほど、素の俺を話したのか。』


すると、春樹は、一気に素の自分を解放した。

瞬間、桜は一歩後に下がった。


寒気がした。

骨の中から冷やされ、次第に凍って、砕けるのではないかと思う位の、威圧感。

汗が一気に噴き出した。


それでも、桜は攻撃を止めない。

そう、今、目の前にいるのは犯罪者で、絶対に捕えなければならない。

そんな設定を、心に書いた。


「桜、終わりだ。」


春樹は、桜の後ろを取り、腕を後ろにした。

しかし、桜は、逃れる術を知っていて、そんな体制になっても、解放した。

また、春樹に手を出す。


春樹は、仕方ないと思い、相手が娘、桜と認識しなく、本気で自分を攻撃してくると判断すると、桜の目が負えない位の行動をした。

そして、桜を床へと押し付ける。


「もうそろそろ、終わりにしろ。俺は、今、急ぎの仕事をしているんだ。邪魔するな。これ以上、邪魔するなら、その身体、どうなるか、分かっているんだろうな?」


桜は、後ろにいる春樹の顔を見た。

脳裏に焼き付き、冷たく、光が無く、無表情で、動けば一瞬にして、胸の鼓動を止められる、そんな顔をしていた。


桜は、降参する言葉を発した。

その間に、春樹と桜の間に入った、三人。


引き離すと、春樹はいつもの優しい顔になっていた。

桜はというと、本気の父が見えて嬉しかったのと、命の危険を感じて恐怖が心を支配した。


「さあ、桜、仕事の邪魔をした俺に言う事は?」

「ごめんなさい。」

「よろしい。身体、怪我をしていないか、春男君と夏也に見てもらいなさい。」


桜は、二人に連れられ、居間へと行った。

残された貢は、春樹の額を、指ではじいた。


「やりすぎ。」

「でも、そうでもしないと、納得してくれなかった。」

「だとしてもだ。」


貢に、春樹は叱られていた。



終わり



じゃなく、桜は懲りなかった。

本気になった春樹が、本当に、犯罪者で、確保しなければならない人物だとしたら、任務失敗となる。


時たま、桜は春樹に攻撃を仕掛けては、負け続けた。

だけど、春樹に勝てるまではと、攻撃を仕掛け続けた結果、仕事ではとても良い成績を残せ、結構な地位に上りつめたのは、言うまでもない。


春樹と桜の対戦結果は、春樹の圧勝で、桜は一度も勝てないまま、春樹は旅立ってしまった。

桜は、それが心残りであり、春樹の元へ行ったら、直ぐにでも対戦を申し込む心でいた。


だから、アカシックレコードで春樹を見つけた瞬間、桜は攻撃を仕掛けた。

春樹は久しぶりに感じる危機感に身体が付いて行かず、桜に取り押さえられてしまった。

春樹の降参の一言で、桜は、勝利の証、拳を空へと掲げた。


「強くなったな。桜。」

「ありがとうございます。春樹お父さん。」


その一言から、桜は春樹の元を離れ、二度と春樹の前に現れなかった。

ようやく、親離れが出来た瞬間でもあった。


桜が夏也を探さなかったのは、もう、転生をしているとアカシックレコードの管理者から伝えられていたからである。


ちなみに、一緒にいたアカは、桜の出現で狼狽えていた。



本当に、終わり。

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