21「浮沈」
桜が、警察学校から数々の事を学び、正式に警察官になった。
名前は梅賀桜。
春男は、桜の生活を支えつつ、自分の仕事をし、暮らしている。
ただ、一つだけ変化があったのは、夏也のお菓子よりも春男のお菓子が好みな植物が現れ、時々、人間に化けた植物が来る。
最初は、驚いたが、夏也の作る料理に近づけていると思うと、嬉しかった。
一方、赤野家も生活が安定していた。
夏也のお菓子を求めて来る植物がいて、春樹の血を求める植物がいて、その度に、春男と一緒に現場へ赴いている。
そして、春男が不法投棄の現場の写真を撮り、桜に話をして、警察も動いてくれて、連携が出来ていた。
そんな日々が、三年続いた日。
梅賀家と赤野家に、一本の電話が入る。
梅賀家が出たのは、春男。
赤野家が出たのは、姫である。
その内容は、お互いに。
「梅賀参二さんのご家族ですか?参二さんが、仕事中に事故に合い、救急車で運ばれました。」
「赤野貢さんのご家族ですか?貢さんが、仕事のテストをしている時に感電して、救急車で運ばれました。」
本当に、同時に、電話を受けて、梅賀家と赤野家は、運ばれた病院に来ていた。
この地域にある大きな病院は、一つだけだったから、同じ病院である。
駆けつけた時には、遅く、もう、亡くなっていた。
参二も貢も六十歳で、まだ、これからって時。
悲しくて、今度は、きつめの時とは違って、春樹はその場で泣けた。
春樹だけではなく、夏也も隠さずに泣いて、桜も春男も悲しみに暮れた。
葬儀の準備とか、色々とやる為に、一度、赤野家に帰った。
その時、待っていた姫がいた。
姫は、春樹を見ると、駆け寄り。
「二人、お客様がいらっしゃっています。」
居間に通したというから、全員で行くと、そこには、参二の仕事場の上司と、貢の仕事場の上司がいた。
説明をする為である。
桜は、警察学校で培った事情聴取する設定になり、納得できる内容かを訊く立場になって、黙っている。
その威圧感に、上司達は覚悟して、それぞれ説明をする。
参二は、リサイクル品を車に積もうとした時に、突然来た車にはねられた。
突然来た車は、スマートフォンで道を確認している時に、路肩に停めていたリサイクル品を積む車に気づかずに、突っ込んでしまった。
スマートフォンを確認していた人は、免許取ってから一年の初心者マークが取れたばかりだった。
自分の運転に自信を持っていたのだろう。
ほんの少しの油断が、事故へと繋がった。
路肩に停めていた時の状況は、車の周りにカラーコーンとコーンバーを設置していて、停めた車の手前には、三角で出来た後方からの追突を防ぐために設置する表示板、三角表示板も置いていた。
考えると、リサイクル会社には非はないが、それは調べて見ないと分からない。
だが、説明はそれだけ、いや、これ以上の説明は無かった。
貢は、プロジェクトで試作が出来上がり、それのテストプレイヤーとしたが、金属で出来ていた輪っかを手首にはめた瞬間に、中の回路が接触不良で電気が流れて感電をした。
試作品は、手に腕時計みたいに巻いて、皮膚から金属を通じて脈拍を感知して、個人だと認識をさせる機械だった。
しかし、感電するとは思わず、手首に着けた時、火花が発したと思った時には、遅く、貢が倒れていた。
AEDを、救急車が到着するまでの間に駆使したが、一向に目を覚まさなかった。
社員一同、諦められずに、AEDではなく、心臓マッサージを人の手でやっていた。
声を掛け続けもした。
しかし、貢は戻ってこなかった。
説明は、おかしな所は見つからなかった。
だが、これからは警察や専門家が立ち会っての調べで、分かってくる。
お互いに仕事場では、とても重要な立ち位置であり、数多くの功績を残していた。
それに、同じ職場の人からは、好印象であった。
そういう事も話しをして、全て話し終わり、質問事にも答え、済み、上司達は帰って行った。
暫くは、悲しみが襲っていたが、葬式を家族葬でやり、ある程度の手続きが終わると、きつめの時と同じく、前を向いた。
それから、一年後。
桜のお腹には、一つの魂が宿っていた。
桜は赤野の家に来ていた。
部屋は、開いている客間に入った。
春男は、自分の家と赤野の家を行ったり来たりしていた。
そして、産まれた赤ちゃんは、「春香」と名付けられた。
春は、春男の春からで、香は桜の香りからである。
そして「はるか」は、未来に繋げて欲しいとの願いもあった。
産まれてくると、桜は暫く育児をしたが、警察官の仕事が来ると復帰し、春男に春香を任せた。
春男は、育休を限度いっぱいまで取っていたから、それ以降は、春樹も夏也も姫も、春香の育児を手伝っている。
そんな家に住んでいる春香だから、小学生の間には、家事は人並み以上に出来ていた。
全て、春樹、夏也、春男の男三人が教えたからである。
そんな時、夏也の両親が、亡くなった知らせを聞いた。
夏也と春樹は、警察の捜査結果を訊かされた。
春樹は、夏也に胸を貸した。
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