18「子供」
食事会になった。
台所のスペースでは、いくら広い家とはいえ、この人数は狭かった。
だから、居間に移動した。
居間は、台所よりも二倍広い。
居間に置いてある机に、夏也と桜が協力して作った料理が並ぶ。
台所に運んだ植物も、居間に移動させた。
夏也は、植物用のお菓子も用意した。
植物は、夏也のまわりに浄化する空気の層を作った。
その中にいれば、夏也は、春樹の血は浄化されて、一緒にいられるのである。
ただ、春樹の流れている血の量と、植物が浄化できる力の量次第である。
夏也が平気でいられるのは、植物の浄化できる力が上回っていないと出来ない。
「苦労かけたな。夏也。」
「婚約者同士なら、当たり前だろ?」
「なら、ありがとう。」
「どういたしまして。」
元気のないと言われた春男は、春樹と目があった瞬間、顔を引きつらせていた。
春樹は、もう少し加減すれば良かったと反省した。
「まさか、春樹。素を見せたのか?」
「うん。失敗したな。」
夏也は、頭に手を覆った。
「桜には見せるなよ。」
「約束は出来ない。桜が危険に晒されていれば、解除するよ。」
「約束しろ。」
見た目、優しそうな雰囲気だが、本来は口調は雑で、喧嘩早いのが、春樹だ。
夏也は、見た目、乱暴な雰囲気だが、人?を殴ったのは、たった一回である。
その一回で、もう、殴りたくないと思った。
夏也の手は、料理をする手だ。
これからも、より多くの料理を作り、人を笑顔にさせる。
春樹は参二に近づくと、参二も話があり、春樹に近づいた。
二人で外へ出る。
話は、お互いに、子供達には聞かせたくなかったからだ。
「この度、春男君を危険な地帯に赴かせてしまいました。申し訳ありませんでした。」
春樹が春男を危険に晒した謝罪をすると、参二も。
「家内の犯した事が迷惑をかけ、怪我をさせてしまった。こちらこそ、申し訳ありません。」
お互いに一礼をする。
参二は、春樹の怪我を訊いた。
「傷は、まだ塞がっていないけど、動けます。あの時、春男君がいてくれなかったら、自分は倒れたままだったかもしれません。」
「春男が役に立てて良かったです。」
「血の能力で、夏也がそちらにお邪魔しないといけなくて、ご迷惑おかけします。」
「いいえ、とんでもない。料理、一緒に作っています。とても勉強になります。私の料理は、食べられる程度であり、美味しいとは思わなくて、春男には申し訳ないなって思っていて。」
「それでも、春男君がここまで成長出来たのは、参二さんが愛情を込めたからだと思いますよ。」
父親としての会話を続けた。
「参二さん。桜の事、よろしくお願いしますね。」
「え?」
「思えば、桜は梅賀家に行くのが、運命だったのかと思います。もし、秋美さんが、桜を連れて帰って居ましたら、梅賀家に住むはずでした。それを、警察や山の管理者が来て、連れていけなかったのは、きっと、不法投棄グループを壊滅させて欲しいと意思が働いたのでしょう。そして、今回、最後の一つも、浄化をさせる準備が整いました。桜と春男君が、結婚できる年齢になりましたら、どうか、梅賀家に桜を迎えてやってください。」
「そうなると、後継ぎは?」
「財産は、桜に引き継がせます。赤野の姓のうちに済ませようと思います。」
すると、参二は春樹を何故か、抱きしめたくなった。
「参二さん?」
「春樹さんは、何故か、見てないと何をしでかすか分からない。だから、梅賀家も春樹さんを監視しますよ。この抱擁は、その証です。」
参二の温もりを感じると、何故か、黒水秋寺、自分の実の父親に抱きしめられている感覚になった。
春樹は大人でも、年上の男性から見ると、まだ子供である。
参二は、貢と同じ年齢で只今、五十歳。
春樹は、三十三歳だ。
丁度、今の春樹位の時に、参二は秋美と結婚したのである。
春樹は、一滴涙を流した。
それを参二が受け止め。
「もしも、私で出来ることがありましたら、連絡ください。貴方の砦だろうが、武器だろうが、何にだってなりますよ。」
「それは言い過ぎです。さ、子供達の所へ行きましょう。」
「そうですね。」
参二は、結果的に妻の秋美が残した思いを救ってくれた春樹を守ろうと、子供達の所へ行く春樹の後ろ姿を見て、誓った。
そんな風に話をしている時、桜と春男は話をしていた。
春男は、桜に訊いた。
「お前の父さん、春樹さんな。怖いな。」
「え?確かに怒ると怖いけど、でも、父さん…夏也父さんよりは、優しいよ。」
「そ…そうか?」
「そうよ。」
春男は、桜には本性を見せてないんだなって思った。
赤野桜の備考。
桜の木の前に、梅賀秋美によって置き去りにされたが、直ぐに発見され、病院へと入院。
その時に、春樹と夏也が来て、無意識に指を握って離さなかった為、二人が桜の親となった。
その後、秋美の息子、春男に惹かれ、結婚を前提としたお付き合いを始めている。
と変わった。
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