10「桜花」
桜は、早速、今日の学校であった出来事を、春樹と夏也に報告した。
まだ、貢は帰って来ていなくて、三人揃うのも待ちきれなかったから、二人に話した。
すると、春樹と夏也は、男としては見どころがあると思うが、親としては心配していた。
「それはそれは、積極的な子で。」
「で、桜は、挑発に乗ってしまったと。」
「はい。少し冷静になるべきでした。反省しています。」
桜は、今日の態度を反省した。
月曜日から、もっと心のバランスを取らないとと思った。
「で、明日、桜花ちゃんに会いに行くの?」
台所に並べてあるお菓子の数々を見て、推測する。
「うん、その春男君が、本当に生まれ変わりかを聞こうかと思ってね。」
「そうだった場合、俺達は邪魔してはならないから。」
「そう言うモノなの?」
「「そういうモノなのです。」」
話をしていると、貢が帰ってきた。
明日の準備を貢に知らせると、スマートフォンを取り出し、何処かへと連絡している。
桜には、仕事場へ連絡しているのでは?と思っていた。
次の日
桜は、家の前に居た春男に驚いた。
春男は、参二と一緒に来ていた。
「家の息子をよろしくおねがいします。」
「いえ、こちらこそ。お預かりします。」
などと、大人同士の挨拶をしていた。
桜は、貢に説明を訊いた。
「桜花に会いに行くなら、もう、春男君には真実を知って貰うのが良いと思ったんだ。だから、今回、私はいけないけど、春樹君と夏也君と一緒に、春男君に赤野家について教えてあげてね。」
「だとしても、いきなりすぎます。」
「そうだね。報告と連絡と相談が、桜にはしてなかったね。でも、した所で桜は納得したかな?」
「……しなかったです。」
桜は、貢に言われ、行ける準備が整った。
そして、普段貢が使っている車に、春樹が運転席に座り、夏也が助手席に座り、後部座席に桜と春男を乗せた。
シートベルトをして、エンジンを掛けた。
「では、行ってきます。」
春樹は、貢に窓を開けて挨拶をして出かけた。
見送る貢と参二。
「では、梅賀参二さん。我々は、少しお話をしましょう。家の中へどうぞ。」
「何の話があるのですか?」
「赤野家の話です。もしも、二人が結婚をした場合、お互いの家に降りかかっている物を理解しなければなりません。ですので、結婚した後ではなく、前にお話ししたいのです。」
「そうですね。こちらも、事情をお話ししないといけませんね。」
貢と参二は、赤野の家に入って行った。
貢は、参二にお茶と、夏也が作ったお菓子を出した。
その間、参二は、家の中を見回していた。
とても豪華な作りをしている。
「さて、参二さん。まず、梅賀家について、教えてくれますか?」
「は、はい。」
梅賀家は、代々繋いでいるものもなく、極一般的な普通の家庭だ。
住んでいる所も、アパートであり、男二人なら十分な広さだ。
だが、家賃で生活が少しきつかった。
母親は、春男を産んだ後失踪して、亡くなった状態で見つかった。
医者からの結果では、心不全ではないかと言われ、参二は内心、「わからない所で妻に負担をかけていたのでは?」と、後悔した。
息子の春男を、立派に育てあげるのが、償いと思い、今までがんばってきた。
春男の事も話すと、貢は、この家を眺めていた理由が分かった。
「理解しました。では、こちらの事をお話します。多少長くはなりますし、ありえないと思うかもしれませんが、事実ですので、理解して下さるとありがたいです。」
「何を聞かされるのか分からないけど、教えてください。」
貢は、かつて春樹に渡そうとしたファイルと、春樹の母、きつめが残したワードで作成された開けるなファイルに書かれていた書類、それに春樹、夏也、貢に桜の戸籍謄本、ノートパソコンを用意した。
長くなると思い、お茶を淹れ直すと、早速、貢は赤野家の話をした。
話をしていくと、参二の顔は、驚いてばかりだった。
ありえない事実が、参二の頭脳を占めてくる。
「信じられない。」
「はい、信じられなくても、これが事実です。」
「なら、春男が、お嬢さんに魅かれているいるのは、前世が関係していると。」
「それを、確認する為に、今、春男君を連れていってます。」
貢は、資料を片付けると、パソコンのモニターを見せ、書類を一枚、梅賀に渡した。
本来ならしたくない行為だが、目の前には困っている人がいるし、親戚になるであろう。
「この家は?」
パソコンに写っている写真を、参二は見た。
「この家は、先日まで私達が住んでいた家です。今居るこの家は、夏也君のご両親が管理されている家で、引っ越したばかりです。それで提案ですが、この私達が住んでいた家に引っ越しては来ませんか?」
「は?」
「家賃は、家を維持管理してくれる約束をしてくれるなら、取りません。」
「なんと。では、月々払っている家賃九万円が。」
「はい、支払わなくてよいです。」
「維持管理するだけ。」
「はい。それに、この家、オール電化で、屋上には太陽光が設置してあります。電気代も少なく抑えられるはずです。」
参二は、こんないい話はないと思った。
しかし、上手い話には裏がある。
だが、これまでの貢との会話で、とてもいい人だと認識をしていた。
本当に、こんな嬉しい話はない。
「この話に甘えてもいいのですか?」
「甘えてください。将来的に家族になるのですから。」
「春男も、お嬢さんと結婚するかもしれないと言っていたが、それも含めてお世話になってもよろしいのですか?」
「はい。どうぞ。それと、春樹君が怪我をすると、夏也君が暫くお邪魔するかもしれません。」
「それはかまいません。」
参二は涙を流して、貢に感謝をし、頭を下げた。
そして、家の維持管理をする資料を貢は用意していて、梅賀は了承するサインを書いた。
引越しは、今日からでもして良いと、貢はいい、鍵を渡した。
「後は、春男君次第ですね。」
「赤野家の話を聞いた春男が、どんな反応をするか。親の私ですら、まだ、納得出来ない状態です。」
「いずれ、春樹君と夏也君を紹介します。」
「はい。楽しみにしています。」
少し話をして、貢は「もし、引っ越しでトラックが必要な時は、用意出来ますので連絡ください。」と話し、参二を見送った。
参二は、丁寧にお礼をいい、早速、引っ越しの準備をする手続きの用意をしに、市役所へ出向いていった。
赤野の家に一人になった貢は、自分の部屋に行くと、壁を背にして右手をグーの形にし、左手を顔に持ってきた。
そして、右手を振り上げ壁を殴った。
「これでは、かつての赤野が黒水にした行為と同じではないか。」
貢は、やむを得ない選択とはいえ、その選択に甘えた自分に怒っていた。
その時である。
もしかしたら、きつめの両親もこんな気持ちだったのではないだろうかと思った。
同じ体験をしないと、わからない。
貢は、グーにした手を緩めた。
一方、車の中では、桜は春男と距離を取っている。
春男と話をしているのは、夏也だ。
夏也は、色々と話を振るが、春男は、それに真っ直ぐ偽りなく答える。
素直な性格をしている春男は、答えにくい質問も軽々と答えていく。
羞恥心はないのかと思う位だ。
一度、道の駅で休憩して、再び桜花の元へと行く。
今度は、運転し、春樹が春男に質問していた。
それにも、素直に答える。
春男は、景色を眺めているが、山奥に入ってくから、心配ではあった。
しかし、今までの会話で春樹と夏也は、信用をしていいと思っていた。
春男は思ったから、桜に訊いた。
「桜、お前の父親ってどっちなんだ?」
「どっちとも父親だよ。」
「は?母親は?」
「いないよ。」
「生物科学上、ありえないんだけど。」
「そう、ありえないんだよ。」
春男は、さらに悩んだ。
その時、車が止まった。
下りると、目の前に見事に咲いている桜の木が一本、健康的に植わっていた。
「きれいだな。」
春男は感想をいうと「ありがとう」と、どこからか声が聞こえて来た。
周りを見ても、誰も居ないが、春樹が夏也が作ったお菓子を桜の木の根っこに、弁当箱毎置いた。
すると、桜の木から、一人の女性が姿を現した。
その現象に、春男は驚いていている。
「桜、あの女性、今。」
「ええ、桜の木から出てきましたね。」
「どういう事?」
春男は、混乱していると、桜花が春男の前に来た。
すると、首や袖、裾にピンクのフリルを付けた白いワンピースのスカート部分ををつまみ。
「はじめまして、私、赤野桜花です。この桜の木の妖精と思っていただければいいです。梅賀春男君。」
そう、これからが春樹と夏也が課した、試練の始まりであった。
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