9「冒険」
梅賀春男は、父、参二と二人暮らしだ。
父子家庭となる。
母は、春男が生まれてから、失踪した後、警察から電話があり、駅で亡くなった状態で見つかったと連絡があった。
参二は、悲しんだが、息子の顔を見ると、落ち着きを取り戻した。
それからは、やらないといけない手続きを全て済ませて、二人で暮らしていた。
春男が中学三年生の時、進路相談で担任と話をした。
春男の成績なら、近くの高校への入学は余裕と判断されたが、春男が入学案内の冊子を、パラパラめくっている時だ。
春男は、一ページに目が止まり、自然と「この高校に入りたい」と言っていた。
県立流石高校は、春男の成績では、ほんの少し足りない。
だけど、頑張るといい、その高校を第一希望にし、念の為、滑り止めも受けた。
結果、合格し、入学できた。
その、入学式にやらかした。
学校へ登校する足取りが重たい。
すると、一軒の家を見た。
とても大きくて、お屋敷と思われる建物だ。
春男は、建築関係の仕事に就きたいと思い、数多くの建築雑誌を読んだり、実際に行ってみたりしていた。
その時の写真も、外付けハードディスクにいっぱい入っている。
それも、フォルダ毎に整理されて、誰が見ても分かりやすかった。
また、建築が出来るゲームも、何種類か一通りやっており、実際の建築物も再現していた。
「このお屋敷みたいな家が作れるといいな」と、呟いた時、その家の玄関が開いた。
「行ってきます。お父さん。父さん。」
「行ってきます。春樹君、夏也君。」
言いながら、扉から出てきた。
その時である。
目の前に、昨日の女の子がいた。
名前は、桜だったか。
その桜が、春男に気づいた。
「あっ、春男君。」
「昨日は、どうも。」
春男は、頬を掻きながら、挨拶をした。
貢は、その会話だけで、理解した。
貢は、春男に近づき、挨拶をする。
「はじめまして、おはようございます。赤野桜の祖父、貢です。昨日は桜が、お世話になりました。確か、梅賀春男君でしたか?」
「え、はい、こちらこそ、何か、自然と身体が動いてしまって、ご迷惑を。あっ、おはようございます。」
「いいえ、それより、これから桜と仲良くしてくれると嬉しいよ。」
「はい、それは勿論。」
それから、貢は、車で仕事場に向かった。
見送る桜と春男。
「おまえのじいちゃん、かっこええな。」
「でしょ。……所で、私の家を見て何をしていたの?」
「こちらの家、おまえのか。」
「所有権を聞いているなら、私のじゃないけど、私が暮らしている家だよ。」
「お前、お嬢様ってやつか?メイドとか、執事とかいるのか?」
「質問に答えてあげたいんだけど、私、おまえじゃないよ。桜って名前あるんだから、名前で呼んでくれたら答え「桜」。」
桜は、最後まで言い切る前に、名前を言われた。
「言ったぞ。桜、答えろ。」
桜は、口元を上に反らせた。
「お嬢様ではないわ。ただ、家が大きいだけよ。」
「そうか。……一度、家中見せて貰って良いか?」
「えっ。」
「いいだろ?桜。名前なら、いくらでも呼んでやる。あっ、跪けば良いのか?」
跪こうとしている春男に、桜は困っていた。
「家の中は、見せられるけど、お父さん達に聞いてみないと。」
「そうだよな。」
「まあ、私としては、良いのだけど、私としてはね。」
桜は、春男の後ろを見た。
後ろってより、横だ。
春男が横を見ると、姫がいた。
姫は、直ぐに桜と春男の間に入った。
手と腕を大きく広げている。
「桜に何をしているの?」
「姫。遅かったね。」
「ええ、もし、春樹さmじゃなく、春樹さんにお会いできたらと思ったら、髪気合い入っちゃって、遅れてごめん。こんなふうに、絡まれているなんて、あなた誰?桜に何かあれば、私、国田姫が許さないわよ。」
「姫、違うんだって。話聞いて。」
その会話を聞いていた春男は、少し面白くなかった。
「へー、姫って名前なのに、勇者見てぇだな。」
「今の姫は、闘えないといけないのよ。それに私にとっての姫は、桜なの。姫ってより女神様だわ。」
「女神だぁ………そうだよ。女神だよ。」
「ですよね。桜は女神だよ。」
何故か、息が合っていた。
二人から、女神扱いされた桜は、顔を赤く染めて、学校へと歩き初めた。
その後ろを追いかける姫と春男。
そんな三人を、貢の部屋にある防犯カメラで、見ていた春樹と夏也がいた。
「どうなるかと思ったけど、大丈夫そうだね。」
「そうだな。さて、どう料理してやろうかな?」
「夏也、お手柔らかにね。」
「春樹こそ、手加減してやれよ。きっと、春男君、桜の婚約者になるから。」
「明日、土曜日だよな。桜花も所に行ってこようか?」
「春樹、仕事は?」
春樹は、アラームを出した。
「今日一日、アラームなしなら、完璧に仕上がるよ。」
夏也は、アラームを手に取って。
「分かった。なら、午前中に仕上げろ。午後から、桜花の所へ行く準備をしたいからな。」
「了解。」
春樹は、早速、洗面所に行って、手を洗い、仕事場に入った。
夏也は、早速、桜花へのお菓子を用意し始めた。
一方、県立流石高校。
昨日の事で、少しだけざわついていたが、別に支障はなかった。
それには、周りが中学持ち上がりで、姫と桜のごっこ遊びは慣れていた。
それに付き合った男がいた情報だけ、ざわついていただけだった。
だから、春男が注目されていた。
「おまえ、外部生なんだよな。赤野とどんな関係なんだよ。」
からかわれていた。
だけど、春男は軽く受け流していた。
「前世からの恋人だよ。」
すると、からかっていたクラスメイトは、吹き出して笑った。
「なんだよ。それ。」
「本当だよ。今度、桜の家に行くんだからな。」
その言葉を聞いた桜は、席を立ち。
「それは、家のお父さん達に聞いてからっていったでしょ!」
すると。
「マジで、お前ら、そんな関係なの?からかい負けた。敗北者からの助言。勇者じゃないと、赤野の家族には勝てないよ。頑張りな。」
からかいを受け入れた春男は、素直に桜を見た。
見られた桜は、頬を赤らめる。
「俺は本気だから、覚悟しろよ。勇者になってやるからな。魔王だろうが、姫だろうが、騎士だろうが、俺は負けない。」
桜を落とす宣言をした春男は、拳をグーにしていた。
もはや、クラスに溶け込んだ。
当の桜は、顔を真っ赤にして。
「なら、せいぜい頑張って、攻略してみなさいよ。言っとくけど、手強いから。」
「知ってるか?そのセリフを言ったってことは、俺を応援している証なんだよ。待ってろよ。女神様。必ず全て倒して、俺のにして見せる。」
「なっ、春男が私のになるんでしょ。」
「赤野春男。良いね、梅賀桜だと、梅なのか、桜なのかわからないが、赤野だと、完璧に桜のになるんだろ?良いぜ。俺は、攻められるのも好きだ。」
春男は、制服のネクタイを緩めた。
桜は、露わになった春男首を片手で軽く覆った。
そして、耳元に口を持っていき。
「期待してる。」
周りにわからない程度の声量で答えた。
首から手を離し、そのまま席に座った。
すると、春男は、桜の一言でヒットポイントがゼロに近かったが、マジックポイントで、何とか気力を持ち直した。
姫は、席に戻った桜に、ウェットティッシュを差し出す。
素直に受け取り、一枚手に取った。
そして、頬を拭くと、赤みが少し引いてきた。
「ありがとう、姫。」
「良いわよ。それよりも、どう立ち塞がってやろうかしら?姫を倒せるなら、倒してみなさいっての。」
「姫、お手柔らかに。」
そして、担任の先生、
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