8「入学」

入学式を終えて、高校の説明会になった。

入学式は、夏也が出ていた。


春樹は、急いでやらなければならない仕事があった。

入学式に持っていく物の依頼が、積み重なっていた。

計画通りには行っているが、後、一つの依頼が間に合わない状態だ。

姫を召喚しようと思ったが、そこまででもない。


それを見越したのか、夏也には三週間の休暇がホテル側から出された。

夏也には、四月の終わりからと五月のゴールデンウイークに、全部出てもらう為である。

ガラス張りのパフォーマンスが、子供に受けていたから、子供の日が含まれるゴールデンウイークは、必要になっていた。


急に決まった日程で、夏也はこの際に家の事をしようと決めた。

元、自分の家とはいえ、引っ越したばかりだから、色々と買い揃える物もある。

それに春樹との時間も必要だ。


「入学式終わった後は、どうする?桜。」

「姫は、お母さんと一緒に校舎を回るって言ってたし、帰ろうか。」

「いいの?」

「いいの、いいの、学校なんて通ってから、知って行けばいいから。それに、姫とは写真撮ったし、クラスも同じだし、それに早く帰らないと、お父さんが心配よ。」


桜は、夏也の手を引っ張って、帰ろうとしている。


「確かに、春樹が心配だな。忙しいとはいえ、アラーム通りに休んでいるだろうか?」

「そうでしょ、さ、父さん行き…ま……。」


その時、目の前に指紋データーを取る日に見た人がいた。

その人も桜に気づき、顔を向ける。


桜とその人は、お互いの姿を瞳に移した。


「桜?」


夏也が桜の様子が違うと思い、桜の肩に手を乗せて、名前を言う。

すると、その人は、桜に近づいて来た。

桜もその人が来たのを、微動だにせずに待っている。


その人は、片足を前に、もう一つの足を後ろに曲げて、桜の前に膝まづいた。

桜も片手を前に出し、その人が手を取りやすいようにした。


「やっとお会い出来ました。桜。」

「私も、待っていました。春男。」


その姿は、周りの生徒だけではなく、保護者も見惚れた。


「桜。どうしたんだ?」

「春男。どうした?」


二人の親が声を掛けると、桜と春男は我に返った。


「あれ?何をしていたの?」


桜は、混乱していた。

春男も、どうして膝まづいているのか、わからなかった。


夏也は、その時に春男の父と話をした。

春男の父、梅賀参二うめがさんじも、息子に何が起きたのか、分からなかった。

お互いに連絡先を交換し、今日の所は帰った。


「桜、身体なんともないか?」


夏也は、桜の体調を気にした。


「別に何もない。ただ、やっと会えた気持ちが、胸に溜まっていったの。私、もしかして、ひいお祖母ちゃんの生まれ変わり?」

「そんな非科学的………あり得るかもしれない。」


夏也は、この休みに桜花に桜を連れて、会っておこうと思った。

この事は、春樹も貢も情報を共有した。


「もしも可能なら、その梅賀さんも連れて行ったらどう?」


春樹が提案した。

二人がいれば、桜花も認識しやすいだろうと思った。


「ただ、それだと、こちらの血の情報も話さなくてはいけなくなる。信用してくれるかどうか。」


貢は、心配をしていた。

すると、桜が、困らせていると思った。


「ごめんなさい。私が、余計な行動を取ったから。」

「気にするな。もし、生まれ変わりなら、惹かれるのも自然だ。」


夏也は、桜を慰める。


「桜は、普段通りにしていて大丈夫だよ。」

「でも。」

「気になるなら、梅賀君と話をする所から始めてみてはどうだ?」


貢は、どうすればいいかを提案してくれた。


明日から、授業が始まる。

それに春男とは同じクラスだ。

貢の言う通りにしようと思った。




「って、事があって。」


桜は、姫とスマートフォンで話をしていた。

この度、入学祝いでスマートフォンを買って貰えていた。

今までは、キッズ携帯で親にしか、連絡ができなかった。

とても、嬉しく、耳から姫の声が聴こきて、何だかくすぐったかった。


「そんな事があったの?校内を探検している場合じゃなかったわ。で、お祖父様の言う通り、話をして見るのね。見守るけど、助け必要なら言ってよ。」

「ありがとう。姫。」

「いいえ、あと、引っ越したのよね。」

「うん。これでようやく姫呼べるよ。まだ、家具が揃ってないけど、見に来て。あっ、早速、明日、場所確認で私の家前で待ち合わせでどう?」

「ええ、いいわ。位置情報、送ってください。桜、スマートフォンの練習にもなるでしょ?」

「そうします。では、明日、午前七時半に。」


打ち合わせをして、桜と姫はスマートフォンの通電を切断した。

桜は、早速、貢に位置情報の連絡方法を聞いて、姫に無事伝えれた。

その後、眠りについた。





一方、梅賀の家では、参二が春男と話をしていた。


「どうしてかしらないけど、俺は、桜と結婚するかもしれない。」

「そうか。なら、仲良くなる為に、話をしないとな。見た感じ、とてもいい雰囲気のお嬢様だ。がんばれよ。」

「でも、それには、何度か闘わなければならない気がする。」


と、話し合っていた。


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