第26話 チュートリアルを導入しよう

「新人冒険者への迷宮導入施策チュートリアル?」

「はい、アーガイン王城から提案された要望です」


『魔王ダーナ・ウェル 営業時間AM9:00~PM5:00 営業中』

ダーナ・ウェルの迷宮最深部の玄室の一つ、迷宮運営管理部。

ロベルタ狂王女殿下との会談から数日後、王城側から通達があり新たに新人冒険者導入施策チュートリアルを導入するよう、要望が来ていた。


「それで迷宮導入施策チュートリアルって、何するの?」

相変わらず、ピンと来てなくて、キョトンとした顔の魔王様。

「迷宮内での心構えや定石セオリーを教練する行為です」

「くんれんじょ~で、ケイティちゃんがやってるのと違うの?」

あれは、色々な意味で特殊すぎる訓練だと思う。


「実地で行うことに意味があります。より正確に迷宮での生き残り方を学んでもらうのが主目的です」

「う~ん。でも~冒険者のみんなに、アレやって~とかコレやって~とか言うの……なんか違うな~」

珍しく頭を悩ませる魔王様。

「確かにその通りです。わざとらしくなく冒険者を誘導する術を考えなければなりませんね」

流石は、数多の冒険者たちを自らの手で葬ってきた魔王ダーナ・ウェルだ。

冒険者への理解度が違う。

「あ~、なんか失礼なこと考えてる~」

「とんでもない、珍しく魔王様のことを見直しているところです」


「他の迷宮ところは、どんなことしてるの、迷宮導入施策チュートリアル?」

「そうですね。新人冒険者でも対応できる程度の各種トラップの先に、模範戦闘チュートリアル・バトルの相手となるモンスターを用意して、倒せば割りの良い報酬が得られる感じですかね」

「おお! 模範戦闘チュートリアル・バトル!!」

こちらには食いつく魔王様、つくづく戦闘狂である。

「ね! ね! どんなモンスター!?」

「基本的に耐久力ヒットポイントが適度に高く、攻撃力が低い……そうですね、特殊攻撃を持たない幽霊ゴースト系が理想ですね」

「はいは~い! あたし!! 模範戦闘チュートリアル・バトルのモンスターやりたい!!!」

「魔王様が模範戦闘チュートリアル・バトルのモンスターやってどうするんですか!? 話聞いてましたか?」

魔王様の耐久力ヒットポイントは絶望的に高く、攻撃力は山をも砕くでしょうに。


「とにかく迷宮導入施策チュートリアルの導入は、王城側の肝いりです。失敗は許されません」

「そうなの?」

そうなのだ。

本施策の実施に関しては、毎日の進捗報告のため、王城への出仕が命じられている。

毎回、魔王様が行くわけにはいかないので、私が代理で出ることになるだろう。

王城側も迷宮運営に関して、本腰になってくれたようだ。


『新人冒険者たちを決して逃さぬ』という並々ならぬ熱意を感じる。

狂王女殿下、そしてクヴィラ侍女長が立ちはだかる強敵として待ち構えている。

そんな気がする。

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