第24話 幼馴染のロベルタ

スペクト(と魔王ダーナ・ウェル)との会談を終えたロベルタ・リル・ナイム・アーガイン狂王女殿下は、自らの部屋に戻り……。

「失敗した失敗した失敗した失敗しましたわ~」

拗ねていた。


ドレスのままベッドに飛び込み、ジタバタジタバタする。

狂王陛下おとうさまに無理を言ってお仕事を代わってもらったのに! せっかくの幼馴染との再会の場面だったのに! おしゃれもシチュエーションもバッチリ決めてきたのにぃ!!」

脳天締めアイアンクロウはバッチリ極まっておりましたよ」

傍らに立つ侍女長のクヴィラが冷たく言い放つ。


ロベルタとスペクトは、幼馴染だった。

魔人族デモニックの宮廷魔術師エレクトラを母に、今は亡き人間族ヒューマンの宰相スペンセル・プラウスを父に持つ彼、スペクトは年齢も近いということもあって、幼少のみぎりの遊び相手を務めていた。


「ドレスが皺になりますので脱いでください。あと対外的ヨソイキの仮面はあまり脱がないでください」

「そんなことより今はスペクトのことですわ!」

ドレスは脱がず、対外的ヨソイキの仮面は脱いだまま応える。


「そもそも、あちらも狂女王陛下が来るとは想定していなかったでしょう」

「クヴィラ、わざと言ってますわね!?」

「失礼しました、狂王女殿下」

「む~、クヴィラは意地悪ですわ!」

ロベルタは『狂女王』という敬称が嫌いだった。

なにせ『狂女』の『王』である、可愛くない。

『狂王女』も好きではないが、『狂女王』よりはマシだった。


「事前通達なしで会談相手の変更は悪手でしたね」

「だってだって、『幼馴染と突然再会したら、きれいになっていて胸が苦しくなる』って場面シーンをやって、ドキドキドキドキさせたかったんだもん」

「ドキドキはしていたと思いますよ。『旧敵と突然遭遇したら、殺されそうになっていて息が苦しくなる』という意味で」

はしたなくベッドの上で足をドッタンバッタンさせるロベルタ王女を、クヴィラはたしなめる。


「でも! でも! スペクトだって悪いのですわ!! せっかくまた会えたのに知らん顔するんですもの!!」

お気に入りの抱き枕『まい・すうぃ~と・すぺくと君』を抱きかかえ、ゴロゴロゴロゴロする。

「それはまあ確かに、スペクト君のあの態度はいただけませんでしたね」

「でしょう!!」

今度は助け舟を出す。

ロベルタ王女の失態だけを責めるの忍びないと感じたのだ。


ロベルタとスペクト、ふたりの幼馴染クヴィラとしては。



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