第7話 冒険者の宿の管理人さん、ミナフィ
「景気ですか? ダメダメですね」
冒険者の宿の軒先を掃除していた
「
宿の管理人ミナフィがほうきを動かす手を止めずに続ける。
「
LEVEL更新の宝珠は、冒険者の宿に備え付けらえれているアイテムで、
「お、お~! LEVEL更新の宝珠!」
魔王様がLEVEL更新の宝珠をぺしぺしと叩いている。
やめなさい。
冒険者自身の
LEVEL更新の宝珠によって、現在の身体能力、魔力量を数値化し、
常にリソースの管理と、進むか戻るかの判断を迫られる迷宮探索にとって、「自分の力量はどれくらいか」「呪文が何回使えるか」という情報は生命線である。
これを怠る冒険者は迷宮で生き延びることはできない。
「スペクトくん、見て見て~」
魔王様がさっそく更新した自分のステータスを見せようとする。
「はいはい」
両手の指で四角いフレームを作って、中央に魔王様を収める。
魔王様がポーズを決める。
だからって、
魔王様のLEVELは計測不能。
表示は2767となっているが、おそらくはそれ以上だろう。
呪文の行使回数は
ああ見えて、私を1日100回以上殺せる存在なのだ。
(私の
「
馬小屋といっても、本当に馬と一緒に宿泊するわけではない。
偉大なる最初の迷宮都市の宿屋の呼称に則り、馬小屋と名乗っているのだ。
とはいえ、設備はほぼ馬小屋同然、馬房と藁の寝台なのだが……。
「馬小屋に泊って、
コカトリスの幼体のアップリケがついたエプロン姿のミナフィが、ため息をつく。
街中での呪文の行使はご法度なので、わざわざ迷宮内の入り口まで行って、治癒呪文を使って昨日の傷を癒すのだ。
当然、治癒呪文を使うまでは、応急処置だけして負傷したまま我慢となる。
「でも、本当は
実際、ミナフィが管理している冒険者の宿の評判はすこぶる良い。
『あまりにも居心地が良すぎて、気が付けば1年の月日が流れていた』などという与太話さえあるほどだ。
(本当に与太話だろうか?)
「最初は馬小屋、LEVELアップと共に手取りも増えて、簡易寝台、
「今の冒険者さんたちのお財布事情だと厳しそうですね……」
私とミナフィのため息がシンクロする。
「お、お~! すごいお部屋!! こんなお部屋がこんなに安く買えるの!?」
「い、いえ違うんですよ、魔王様。うちは賃貸なんです。購入されるのではないんですよ」
「なるほど~……ちんたいって、なあに?」
嗚呼……私とミナフィが天を仰いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます