第27話 身体と書いてセックスと読むような女

 女子から言われて緊張する言葉ベスト3のうちの一つ「責任取って」を言われてしまった。言われてみたかった言葉ベスト3でもあるのだが、言われるに至った経緯に納得がいかない。


 たとえば――――普段はそっけなく仕事一筋と言った様子の処女上司エルナト。部署では陰で行き遅れなどと揶揄されて煙たがられていた。そんなある日、処女上司エルナトに誘われ、残業終わりに居酒屋へ複数人で飲みにいくこととなった。気乗りしなかったが、慰労会でもあるので同僚たちとの付き合いも考えて渋々参加した。

 間接照明だけの薄暗い店内。洒落た座席で処女上司エルナトの横に座らせられる。しばらくは黙って酒を飲んだりつまみを食べたりしていたが居心地の悪さに耐えられず空いたグラスを探して酌をして回るため立ち上がろうとすると処女エルにシャツの裾を掴まれてとめられてしまう。もっていたビール瓶を落としそうになり「ぉう!?」という奇声が漏れる。それがどういうわけか上司ナトのツボに深々と刺さった。静かに抑えるように笑うがこらえようとしている分、揺り返しが大きいのか噴き出してまた笑ってしまっている。そんな様子と笑った顔が意外と可愛くて、酔った勢いもあって「笑うと可愛いんですね」と言葉にしてしまう。すると処女上司エルナトは「お世辞でも嬉しいよ」と平時と変わらぬすました顔をしていた。笑いは止まった。

 あまりの手ごたえのなさに落胆をしていると「でも、ほかの子にはお世辞でも言っちゃだめだよ。今はセクハラとかでそういうの厳しいんだから。私だからいいんだからね?」とこれまたすました顔で注意してくる。適当な返事をして改めて処女上司エルナトをみると、すました顔をしながらも長い耳だけは真っ赤になっていると気づく。

 そのあとは激動の展開である。処女上司エルナトとは趣味があい、話があい、酒が進んで会話が弾む。休みの日は何をしているのかと尋ねれば「インテリアショップ巡りかな。買いもしないソファーの座り心地を確かめたり、買いもしない観葉植物に関心を示したりしてる。店員さんが話しかけてくる前に退散するのがサイドクエストなの」と、わりとしょうもない休日をすごしていて好感を持った。俺も全く同じことをしていると伝えれば驚いた顔をみせ、またかわいらしい笑顔をみせて「じゃあ今度ショップ巡りしようよ」と提案される。そのころになると同僚たちからも「お前は処女上司エルナトの接待担当な」と茶化されるようになり、部署公認の仲――のような空気が形成されていた。

 宴もたけなわといったところで、慰労会は解散の流れに。思いのほか酒の席での相性が良かったためか、「体の相性も良かったりしてね」と冗談まじりに言いだす処女上司エルナト。戯言に付き合い、腕に絡みつく処女上司エルナトを連れて半ばノリと勢いでホテルへと突入した。

 体の相性は良好などという次元ではなかった。うっかり朝まで生本番をしてしまし、三発の無許可種付けをし、五発の無許可暴発をし、十発の同意種付けを敢行。腰がたたなくなってしまった非処女淫乱絶倫上司エルナトは俺の胸に頭をのせ、赤らんだふくっれ面で「もう……こんなに一杯だして……。責任取ってよね?」と言われる――


 と、これが理想の言われ方である。

 見も知らぬ女性に唇をレイプされて上で脅迫じみた言い方をされるのはやはり納得がいかない。納得のいく説明をしてほしいところだ。


「我を虜にするオスがこの世にいようとは……んくぅっ、まだ子袋がしびれている」


 あなたも人の性別をオスメスで判別する畑の子か。

 なんでそう生々しい言い方をするのだろう。如何にも「生殖! 繁殖!」という感じがして好きになれない。性行為ってのはもっとこう静かに秘められたものであるべきで、「……しよ?」みたいな感じの消極的積極性が男心を燃え上がらせるわけよ。

「オス、メス」だったら「男の子、女の子」の方が響きが美しい。「タケノコ」か「キノコ」かと問われれば、俺は里の者だが、たまには山も食べたくなる。同じように「オス、メス」も時と場合によってはありなのかもしれない。考えを改めて価値観をアップデートした方がいい。たとえば俺がオスで、この女がメスだったとしたら……生殖、繁殖って感じでとてもいいじゃないか。


「失礼ですがどなた様でしょうか」


 黄金のドラゴンが消えた現場に突如現れた妙齢の金髪女性――です、か。

 大体の察しはついている。魔術があってドラゴンが存在し、俺が幼馴染に好意を寄せられるような世界なのだから何があっても不思議じゃない。ドラゴンが実は金髪美女でしたと言われても驚くことではないのだ。

 申し訳ないが、ここはすっとぼけて鈍関係主人公を気取らせてもらう。お天道様の下、妙齢の女性を打楽器に見立てて股間をぶん殴りまくってしまいには注水するという、日本の警官でも迷わず銃を抜くようなお縄待ったなしの巨悪性犯罪をしでかしているのだ。前世でも犯罪行為なんて子供の頃の立ちションぐらいしかやってない俺には、自分のしでかした事件の重大さが、罪の重さが受け入れきれそうにないのだ。しばらくはとぼけさせてもらい、知らぬ存ぜぬでしらを切りあわよくば有耶無耶にさせてもらう。


「ふふ、婿殿は人族の子よな? ならば我の在り方は理解を超えるのもやむなしか」

「見ず知らずの相手に出会い頭に口づけをするような方とは会ったことがないですからね。想像もしませんでしたし理解なんてできそうにありません」


 あっ、いたわ。エルナトがそうだった。いきなり口づけしてきたわ。

 目があったらそっぽ向きやがった。向いた方に分身してキスをしてやりたい。

 質量のある残像を生み出す魔術は作れないだろうか。乱れて交わる楽しいパーティーができそう。


「我も初めてだっだぞ」


 お、ファーストキスだったか?


「口を開く間も許さず、問答無用で押し倒して為すすべなく身も心も蹂躙する苛烈なオスに出逢ったのは」


 ファースト前戯レイプだった。本当に申し訳ない。胃がキリキリしてきた。


「我の全ては婿殿に蹂躙され征服されてしまった……。もはやこの身は我一人のものではない。だから、この責任は必ず取ってもらうぞ」


 金色の長い睫毛の美人さんである。透き通るような白い肌を紅潮させているところから察するに、ネガティブな感情を抱いているわけではなさそうだ。責任を取れといって愛棒を切断する――そんな断罪イベントに進む可能性は低いと思っていいかもしれない。


「フゥ……子袋が熱い。メスに孕む準備を整えさせておいて放置するとは、婿殿もいけずよなぁ?」


 漏れ出る吐息が妙に官能的で愛棒がそわそわするがシャイ棒(ボー)イな愛棒はそれほど乗り気ではない。


 いつまでも抱いている訳にもいかないのだが、金睫毛の女性は体に全くといっていいほど力を入れていない。完全に俺を信頼して身をゆだねている。だが俺の体は六歳児のもの。腕の筋肉が限界を迎えつつある。しかし手を離せば彼女は頭を地面にぶつけてしまうだろう。死にはしないだろうが女性に恥をかかせるのは忍びない。


「申し訳ないのですが、どなたかと勘違いされておりませんか? 或いは記憶が混濁していらっしゃるか」

「心配はいらぬ。意識ははっきりしている。この胸の高鳴りが夢幻の類ならば、我は死ぬまでこの夢幻にとらわれていたいぞ」


 ロマンチックだね。しっかし胸でかいな。ロマンが詰まってるのかな。

 さっきから胸と目が合って離れないから困る。視線を切ろうとしても磁力の様に引き寄せられてしまう。まさかスタンド使いか。

 なんだ、これは……胸と目を合わせていたら愛棒が石の様に硬くなってきてしまったぞ。まさかこの胸の正体はスタンドなどではなくメデューサだったのか。鏡だ、鏡の盾を用意するんだ。鏡の前で開脚オナニーをさせて、指が何本入っているか答えさせて倒さなきゃ。


「ふふ、婿殿も我を好いてくれている様だな? この体に向けられる好色な視線がこうも心地よく感じ、体を熱くさせようとは思いもよらなんだ」


 胸を見てるのがばれたのは分かった。バレてるなら隠す必要もないので胸と話そう。どうせ視線もきれないし。


「最初は驚いたものだ。女神などと称しておいて乱暴をするのだからな……」


 幸運の女神が云々とは言っていた気がするが、あなたの事ではないですとは言い難い雰囲気だ。


「婿殿よ、我がわからぬのか?」

「はい見当もつきませんね」

「ふふ、愛しいにも程があるぞ。本当に気付かぬか?」


 気付いてます。俺を見た目の通りの子供と侮らないでいただきたい。体は子供、心のちんちんは立派な大人。ピッタリな穴を探す名器探偵コマンとは俺のことよ。


「先ほど婿殿が無理やりに押し倒し、滅茶苦茶に犯した竜ぞ。あれほどの情熱をこの身に受けたのは千年生きて初めての事。今もなお子袋の熱と疼きが消えずにとどまっている」


 六百歳年上だ。樹齢以外でこんなに差のある歳上にあうの初めてだわ。

 子供のしたイタズラということにして許してもらえないだろうか。


「……左様でしたか」

「そう固くなるな婿殿。硬いのは……ここだけにしてくれ?」

「あっ」

「あっ……」


 あっ……――じゃない。なんで触ったお前が一番照れてるんだよ。急に目も合わせられなくなるほど挙動不審になるな。


「ちょっとちょっとダメだってば。ユノは私の番になるんだよ? 仮契約もしてるんだから。ちゃんと順番は守ってよー」


 エルナトが頬を膨らませている。その意思表示のしかたは大好きだからアップで写真を撮りたい。寝室に飾って毎晩お休みのチューをしたい。でも一週間もすれば俺の唾液で写真が臭くなるだろうエルナトの姿が臭くなるのは写真であっても耐えられない。代わりと言ってはなんだが、頬を膨らませるために溜めたその空気を直接口移しで頂戴できないだろうか。くれないなら息を止めて死ぬ振りをしてやる。早くしろ、窒息するまえにくれないと膣即してわからせるぞ。


「ほほう、貴様エルフか? 珍しい組み合わせ……というよりも人前に姿を現すとは、婿殿の魔力にあてられて懸想でもしたか」


 俺以外の相手にはあたりが強いのか。


「懸想ってなに?」

「え? まあなんだ、す、好きって言葉をちょっと難しく言い換えた言葉だな。言い換えることで言いやすくなるのだ。好きだと直接過ぎて言いづらかろう?」

「そうなんだ? へぇー君は物知りなんだねー」

「よ、よせよせぇ。たまたま書物で学んだだけだ。物知りだなんて……そんな」


 いや、意外とちょろいのかもしれない。エルナトに褒められてとても嬉しそうに胸が揺れている。小人になってこの胸にしがみついてロデオ体験したい。どんなにイヤなことがあっても一発で笑顔になれると思う。


「彼の魔力の香りには抗えない魅力があるというか、心が惹きつけられるんだ。理屈はわかっているつもりなんだけど、それだけじゃない気がして。君はこの現象に心当たりとか知っていることはある?」

「うむ。それは種として、メスとして当然の反応だろうな。エルフ種ともなれば婿殿ほどの相手でもなければ繁殖はできまい。千年に一度の好機を体が逃すまいとして過剰に反応しているのだろうさ。我も切っ掛けを除けば同じよう理由だろうし、な」


 な――と言われて目が合うと慌てた様子で目をそらされた。口ではグイグイ来るのに態度はうぶだ。


「そうなんだ? じゃああとで詳しい話をきくとして、一旦その話はお預けにしよう。次は順番の話をしたいんだけどいかな」


 順番に拘るタイプなのか。

 エルナトは律儀というか、几帳面というか、神経質というか。一日三回はセックスをすると約束したら一回でも少ないと不満を表明してきそうだな。逆に多い時は悦んでくれそうなのがシコぴょい。


「エルフが先に見つけたのならば、そなたが第一夫人でかまわぬよ。我はそんな些細な問題には興味がない。この強者オスの子を孕めるのなら百番目でも構わぬし、千回でも孕まされたい。だが、子を生す順は出会った順ではないぞ。我が贔屓されて特別寵愛を受けて第一子を授かったとしても恨まぬでくれ?」

「嫉妬はしちゃうと思うけど恨みはしないよ。でもそれも経験しないとわからないことだよね。子供かー……うん、お互い頑張ろー!」


 俺との子作り計画が着々と進んでいる。子種供給班の意見など一切聞かずにだ。

 このままでは外堀も内堀も知らず知らずのうちに埋められて、俺が自分の意思でセックスをする日などなくなってしまうかもしれない。セックスしている姿を人に見せたいから動画配信しようとか、俺の意思など関係なく勝手に決められて世界中に愛棒が曝されてしまうのだ。そして行為動画を偶然見たアリーシャは、どこかでみたおぼえのある愛棒に懐かしさと愛しさを感じる。だがそのころには成長した悪魔ルイスが傍にいる。勘のいい悪魔ルイスはアリーシャが兄を思い出そうとしていることに目敏く気づき、そうなる前に美棒で貫いて強制的に忘れさせようと画策しはじめるのだ。俺は動画という檻に、アリーシャは狭い小屋に鎖でつながれ、それぞれ苦痛と快楽の日々をおくることとなる――いやこの妄想、アリーシャは確かに苦痛だろうが俺には快楽しかないな。アリーシャの苦痛だって、そうあってほしいという小人らしい矮小な思惑あっての想像であり、実際にルイスのような美少女フェイスが美棒でよがらせにきたらいくら一途なアリーシャとはいえ満更でもないはず。それに恋愛は結婚のような契約とは違って自由だ。アリーシャがルイスを好いてもそれを責めるのはお門違いの勘違い。キメラ顔の俺などルイスの美貌の前では路傍の石に生したコケも同然。アイドルグループのなかに顔がトラフグの半魚人がまざるようなもの。本来なら恋愛争奪戦に参戦する資格すらないのだ。


 そう思うと大きめの焦りが強めに生じてきた。

 早くダンクルオスはショミへ帰らなければ。一緒に暮らしていても寝取られる可能性が大なのだ。のんびりしていては帰ったころにアリーシャの胎がルイスにより膨らまされて俺が叔父になってしまう。生まれてくる子供の名前を決めてくれなんて二人に言われたら発狂するぞ。


「でも僕は子供だから子供はつくれませんけどね」

「ん? 我はできるぞ?」

「え? 私はできるよ?」


 二人して「なにいってんだこいつ?」みたいな顔をしている。お姉さんは絶対にショタと子作りをする――そういう強い意志を感じた。人妻が配達員や旦那の上司に弱いように、ショタも大抵の場合近所のお姉さんに弱い。これも一つの避けられ運命さだめなのかもしれない。


 このままではセックスしないと出られない部屋か、セックスすれば出られる部屋のどちらかに入れられてしまいそうだ。エルナトの強さは未知数だが、アロワナが本気を出せば俺など一瞬で殺せるだろう。生殺与奪の権利だけでは飽き足らず愛棒まで握ろうというのか。


 そもそもエルフは精霊の一種だと言っていた気がするし、もう一方は30メートル越えの竜になれて1000年生きている規格外の人外だ。果たして人族である俺の子など二人は産めるのだろうか。人間が宇宙人とセックスするようなものじゃないのか。人型になれるメフィラス星人ならワンチャンスありそうなものだが、バルタン星人だったら無理だろう。ダンに憧れを抱くアンヌ隊員よろしく、異星人同士わかりあうことはできても結ばれぬ結末を迎えそうだ。

 そういえば契約がどうのと言っていた気がするが、契約をすれば子供も作れるようになるのか。イヤイヤなポーズはとっているが、するならするで腹をくくるのでその辺はしっかり明文かしてほしい。あとになって中出し不妊罪で殺されたらたまったものじゃない。


「私はエルナト。彼はユノ。素敵で賢くて物知りなアナタの名前はなんていうの?」


 最初は気絶して、次は拒絶して、今はフレンドリー。感情の変化が忙しすぎるうえにとにかく前向きな方向に帰着する。エルナトは物事を節目節目で切り分けて考えられるのか、過ぎたことには拘らないし前向きな判断を下してくれる。


 そうだ!! パンツ交換を提案してみるのはどうだろう。

 断られなければラッキー。断られても過ぎればいつかは許される。一時の恥を忍べば一生の喜びが得られる大チャンスだ。それだけじゃない。履いているか履いていないかも確認できてしまうのだ。


 よし、聞くしかない。聞くなら今だ。聞いてみよう。


「パ――」

「エルナトにユノ……。その名は永遠に心へ刻もう」


 巨乳金睫毛が体を離して立ち上がる。

 場面を動かすな。パンツ交換のタイミング逃しちゃったじゃないか。

 いや、冷静に考えると言わないでよかったのか。どんなに好きな相手でも下着をくれと頼まれて好印象を抱くのは難しい。つまり俺はこの人に助けられた形となるわけだ。そういうことならばお礼に俺のパンツをくれてやる。だからお前のパンツを寄越せ。大丈夫、履いたりはしない。それでは女装になってしまうから。俺は被る派なのだ。ドリルを装備するエドガーのように俺はパンツを頭装備にできるんだよ。


「我はバラムンディが子、アロワナ。世に長く伝わる黄金の祖竜とは我の事ぞ」


 祖竜なのにバラムンディさんの子なんだね。全然祖ってないじゃん。下の毛剃ってやりたいじゃん。


「むふー」


 胸を持ち上げるようにして腕を組み「どうだ驚いたか」と言わんばかりの表情で見下ろしている。薄目のドヤ顔が最高に可愛シコい。わざと驚いたふりをしてあげたいが、可愛エロすぎてそれどころじゃない。


 それにしても黄金の竜か。母さんの膝の上でそんな竜が出てくる話を読んだ覚えがあるな。


「本で読んだことがありますよ。とても強い方だと記されていました」

「ふふんっ、やはり知られていたか」

 

 ご満悦を絵で描いたよう表情のアロワナ。熟成した大人の色香を纏いつつ子供のように真っすぐな笑顔を浮かべる。これが愛棒に実によく刺さり、軽くときめいてしまった。


「でも、ものによってはとても悪い竜だとも書かれていました。たくさんの人を殺したって」

「ふむぅ……」

 

 眉を下げ悲しい顔をする。感情の変化がわかりやすい。どうも嗜虐心をそそる。


「だけど僕は好きでしたよ。だって侵攻しているのはいつも人族で、黄金竜からこちらの領土に攻めてくる話は一つもありませんでしたから。きっと迷惑してたんだろうなぁーって思いました」

「ふむっ!」


 パァーッ――という音が聞こえてくるような満開の笑顔を見せるアロワナ。瞬時に頬が朱に染まっていくのがこれまたキュートである。


 感情表現が大袈裟で素直すぎる。この女性が本当にさっきの竜なのかが疑わしくなってきた。しかし、この肉感たっぷりで妖艶な美女の股間で俺は音楽を奏でていたのか……そう考えると辛抱たまらんな。

 一回やったら二回も三回も変わらんだろう。今度はその姿で楽器になってくれないか。俺の愛棒(ドラムスティック)でドラムを叩かせろ。そうでなくとも体がうるさいのだ。一度意識し始めるとムチムチとかプリプリとかそういう卑猥な音が聞こえてくるいやらしい体をしている。エルナトのような美のお手本であり美しすぎるスタイルとは系統が違う。エルナトは崇めて奉り平伏したくなり触れるのも恐れ多い信仰性の強い肉体をしているがアロワナはその真逆。いい意味での真逆。見た目で本能を刺激して、音で男を誘惑し、気を強く持たなければ思わず触れてしまいそうになる。現に竜の姿のときも魔術越しとは言え触ってしまったし倒れているときも抱き起す必要などないのに無意識に触れていた。いるだけで音を鳴らして男を誘引する媚肉楽器がアロワナの正体なのだ。鍵盤楽器のように指先で押してよし。弦楽器よろしく弾いてよし。弦楽器がごとく吸って吹いてよし。打楽器にみたてて子宮口を叩けばさぞ淫靡な音を奏でるだろう。大人のオモチャで電子楽器にしてやるのも一興だ。


 妄想がいくらでも思いつく。いくらでも楽しめる。エルナトが聖なる美の化身ならば、アロワナは性なるセックスの権化なのだ。色とりどりで多種多彩なセックスが所狭しと陳列してあるセックスの百貨店。生きるSOD。触れるFANZA。セックスを詰め込んだ幕の内弁当。次から次へと新鮮なセックスが運ばれてくる懐石料理である。

 性の総合娯楽施設。有休をすべて消化しても遊びきれない、体をつかったアトラクションが楽しめる性の遊園地アロワナ。胸のビッグマウンテンに愛棒で高速発射せよ、ジェット・イコースター。ゆったりと進む狭い個室で楽しみたいなら、姦覧車。前だけじゃない後ろだってイケる、ラーハウス。園内の散策ならこいつは外せない、マジックミラーハウス号。世界でも珍しい乗るのではなく乗られる側になれる、騎乗位メリーゴーランド。ああ素敵だ。アロワナの体は夢で溢れている。俺のチュロスを食べてくれ。喫煙所では膣enjoyして一服したい。


「好きだったか! ふふぅん、そうか、それは喜ばしいことだな。どのへんが一番よかったのだ?」


 この素直過ぎる性格だから果物あげるからこっちにおいでなんて言葉にまんまと引っかかってしまったのだろう。本人の見た目と中身の落差が凄まじいエロを生み出している。今の気持ちを一言で表すならば「愛しい」、この一言に尽きる。千年生きているのに性格は幼くて素直とか最高かよ。


「まあその話は姦覧車ゆっくりできるところでしませんか。アロワナさんは、何故こんなところにいらしたんでしょう。まさかここが家だった――なんてことはないですよね」


 竜がどこに住んでいるかなど知るはずもない。このあたりに木々がないのもこの人のねぐらであるからという可能性だって否定できない。


「ああそうだった。我はあの雑魚の折檻にきたのだった。やるべき用事を完全に見失っていた。感謝するぞ婿殿。さあ、孕ませてくれ」

「まだ見失ってますね」


 美女は両手を広げるだけでエロい。勉強になった。


「雑魚というのは、あちらで眠っていらっしゃる黒いドラゴンさんでしょうか」

「あの程度の力と知能で竜を名乗ってほしくはない。やつは精々トカゲがいいところだ」


 吐き捨てるように言い放つアロワナ。よほどご立腹なご様子。怒りをしずめるために胸のマッサージをして差し上げたい。前世ではオイルマッサージの教本を買って習熟し、筋肉と腱と内臓と骨の位置関係からツボマッサージについての勉強も数年かけてした記憶があるので一角のものがあると自負しております。


 さあ、そこへ寝転がってください。前世の世界で培った知識により、この世界では味わえないであろう最高のリラクゼーション妊娠たいけんをあなたへ――


 ――……ハッ、また催淫されて妄想してしまっていた。





 この人、竜じゃなくて淫魔だろ。



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