第23話 エルナト先生は話したい。教えたい。キスしたい。

「ドラゴンが根城にしてるところまではしばらく歩くから、魔力の調整の仕方を説明しながらいこうか」

「覚悟は決まったから泣き言は言わないよ」


 嘘だ。心中は嵐が吹き荒れていて足取りも重い。

 駄々をこねて地団駄踏んで転げまわってでもいきたくない。だが城ケ突きであるならば譲歩はしよう。たちえば、どうしても連れて行きたければ愛棒に首輪をつけて「愛玩棒ペット」とでも書くんだ。そして縄で引っ張り無理やり引きずっていけばいい。無論抵抗はする。柴犬がお散歩中に帰宅を拒否するように全身をつかって抵抗はするが、愛棒の頭を撫でたり抱っこしてくれたら従ってやらんでもない。エルフ穴を愛棒の犬小屋にしてくれるというなら喜んで従おう。


「うんうん、私の番になるならそうでなくっちゃねー」


 エルナトの中で俺が番になるのは確定事項らしい。

 俺が大人になるまでに心変わりもするだろう。成長すれば容姿も変わりエルナトのタイプから外れるかもしれない。魔力の香りとかいう俺には感知できないものも体臭のように変化する可能性もある。


 彼女の好意は素直に嬉しいし素股で行為におよびたいが、どこまで本気にしてよいかがわからないので距離感を掴みかねる。最終的に傷つくのは俺なのだ。慎重にもなるさ。


 童貞歴が長いからか女性との関係には何重も予防線を張ってしまう。フラれることを恐れず心を裸にしてノーガードでぶつかる方がモテそうなものだが、それができるなら苦労はない。

 記憶を引き継いでしまった弊害か、積み重ねた実績が悪い方向へ作用している。なにせ俺は何度も人生を繰り返して毎回童貞で終わらせるような男だ。男としての自信など芽生えるはずもなく、陰と淫のオーラが魂にまで刻みこまれているような錯覚すら覚える。


「よくわからないけど、男の子って勇敢で前向きな方がいいんでしょ? 本を読む限りではそう書いてあるし」


 俺の前向きな部位なんて愛棒ぐらいなものだ。こいつはいつも上を目指して前を向いている。


「ひとによるんじゃないかな。少なくとも僕は勇敢ではないと思うし、どちらかと言われたら臆病者だよ」

「そうなの? うーん、じゃあ勇敢じゃなくてもいいか。子供を作る上で必要性を感じないしね」


 そう言って何が目的なのか両方の耳たぶを揉んでくるエルナト。存外に気持ちよくて腰が抜けそうだ。エルナトに触れられるとへんな気分になる。おかえしに乳首でも揉んでやろうか。


 子供をつかまえて子供を作る気なのが最高にシコったらしいエルフだ。どうにかして今すぐ孕ませることはできないか。愛棒を巨大化させたり体を大人にさせる魔法とかはないのか。体を大きくする魔法があるならば逆にエルナトをロリ化させる魔法もあるはず。合法ロリババアと脱法ショタおじによる森林浴ファック……背徳的で最高にLOだがロリは気後れする。一度線引きを曖昧にしてしまうと非合法ロリであるアリーシャにまで手を出しかねないからだ。仮に子供に手を出してもいい法律があっても、俺の中の侍魂どうていはアリーシャに手をだすことだけは断じてゆるさないだろう。


 イエスロリータ、ノーファック。

 イエスゴジータ、ゴーファック。

 ロリ業界とBL業界の偉大な標語である。前者には従おう。後者は知らん。


「一応念押ししておくけど、僕は子供だからそういうのはできないからね」


 性行為とかセックスとか女の子を前にすると口に出して言えなくなるのが如何にも童貞である。


「人族っていつまで子供なの?」

「時代や国によって違うけど、早ければ十歳から十二歳。遅いと二十歳ぐらいかな」

「そうなんだ。じゃああと四年だね」


 十歳を食う気なのか、この痴女エルフ

 倫理観が違いすぎて理解が追い付かない。

 エルフとは麗しく美しく文化的で、性に対する関心が薄くたまにしか性行為をしない。ときおり集落をオークに占領されて子作り牧場と化したり、諸事情があって娼館勤務になり凄腕のおっさんに抱かれるうち淫乱になる――前世ではそんな受け身な印象だった。だが現実ではその真逆。生殖可能なら年齢の下限はないという性欲に忠実な繁殖マシーン。野性的で本能のままに生き、妊娠ゴールに対する凄まじい嗅覚を持ち、得点圏に転がる童貞ボールはけっして逃がさないストライカータイプだ。


「楽しみだねー」

「あっ……あっ……」


 一心不乱に耳たぶを揉むその手技の上手さから察するに床上手であるのはある程度想定できる。

 最初から登場するラスボスみたいなものだな。一週目は無理だけど強くてニューゲームなら倒せます的なラスボスだ。俺は何週もしているのに弱くてニューゲームだからこのままでは勝ちの目は薄い。四年以内にどうにかして勝つための手段を講じなければ。アリーシャに捧げるはずの童貞が永遠に失われてしまう前に、愛棒以外でも満足させられる何かを体得するのだ。


「あぁそうそう、行く前に調べておかないといけないね」

「イク前!? ま、まって、さすがにまだ早いよ」


 童貞は奪わないまでも口淫や手淫はできるってことか。いや、アナルなら童貞を奪ったことにはならないという詭弁かもしれない。


「やっぱりまだ怖いんだ? 可愛いねーユノは」


 怖くはない。アリーシャを裏切ってしまうのがイヤなだけだ。

 勝手に童貞を捧げる神殿扱いされていると知ったアリーシャの心中は察するに余りあるな。正直気持ち悪いという自覚はあるので、この想いは心の中から出すつもりはない。あの天真爛漫なお漏らしっこが嫌悪を滲ませた表情で俺を見てきたら一生立ち直れる気がしない。想像しただけでも……あれ、興奮できるぞ?


「ドラゴンや魔物を退治するにしても、まずは魔力をどれぐらい操作できるのか確認しなきゃだからね。怖くてもやってもらわなきゃ、あとでもっと怖い思いをしちゃうよ」


 んだよ、そっちかよ。思わせぶりな言い方しやがって。

 悲劇のヒロインを気取って樹に背中を預けて滅茶苦茶に搾精されようと思っていたのに。もちろん、襲われている側なのにがっつりエルナトの長耳を掴んでアヘらせながら腰を振る――みたいなことはしない。性交はTPO への配慮が大事なのだ。今の俺に世界から求められているプレイは、いたいけな少年が襲われるオネショタムーブ。立場逆転ものも好物だが、個人の趣味嗜好で世界の秩序と厳正なる性なる法を犯してはならない。


「うん、そうだよね。わかった、やってみるよ。じゃあまずは何をしたらいいかな、エルナト先生」

「先生……!」


 耳をピコピコと動かすエルナト。嬉しい時の動きなのだろうか。表情はとてもうれしそうなので多分あっている。


「よぉし、魔力の調整の仕方は人それぞれだと思うんだけど、一番簡単で基本的なやつをが教えてあげるかんね。魔術は魔力調整の応用みたいなものだから、基本さえ掴めば自分にあった魔術を自在に使えるようになるはずだよ」


 相当に先生という言葉が気に入ったらしい。可愛いな。


「難しそうですね。でも頑張って覚えますのでよろしくお願いします」

「もっと口調を砕いて」

「頼りにしてるねエルナト先生」

「ふふん、よろしい。すっごく頼りにされてあげましょう」


 とても満足気に胸を張っている。 美人なのにちょろいとか最高かよ。

 エルナトは一瞬だが目を瞑ってくれたので目線を胸に固定できて助かった。下着を装着していないようなので胸の動きが実に自由だ。おっぱいも放し飼いにするとは長閑な土地である。つかまえて俺のペットにしてやろうかな。


「それじゃあまずは一本指。どの指でもいいから、自分の使いやすい指をえらんで。それを魔術を放ちたい方向に向けます」


 人差し指と中指の間に親指を差し込んでエルナトの子宮に向けたい。


「じゃあ無難に人差し指で」


 中指でもいいけど気分的にモザイクかかりそうなのでやめた。


「次に魔力を集めるよ。集めるのはどこでもいいんだけど、今はまず指先に集めてみようか」

「下腹部じゃないんだね」

「自分が集めやすい部位だからねー。下腹部が集めやすいなら肉体の中でも下腹部の扱いが上手いってことかもね」


 アリーシャは下腹部の扱いが上手いと……。ふーん……。お漏らししてるのに上手なんだ。将来が楽しみすぎて股間が熱くなるな。


「うわっ、すごい熱量! 一気に膨れ上がってきたね! やっぱユノの魔力量は並みじゃないや」

「自分じゃあまり実感がわかないけど、褒められてイヤな気はしないね」


 大げさに褒めて乗せられるのも困る。調子に乗らず話半分に聞いておこう。魔力の量は多いのかもしれないが俺がそこまで特別な存在だとも考え難い。実際、アリーシャが治癒をしてくれたお陰で魔力回路が焼き切れることもなく今も生きていられるのだ。すごいのは俺ではなくアリーシャだというのを忘れてはいけない。俺が特別なのは童貞の年数だけで十分さ。


「魔力が分散しちゃってるね。体の中に流れる魔力を水だと思ってごらん。それを指に流すイメージで上手くいくはずだから。魔力自体がわからないなら、適当に流れを意識するだけでも魔力の感覚が掴めてくると思うよ」

「うーん……あぁ、これかな? あっ、あっ、こういうこと?」

「そうそう! ちゃんと循環し始めたよ。偉い偉い、あとでキスしてあげるね」


 もっと偉いことしたら何してくれるんですか先生。性に浅学なエルフでは想像もつかないド偉いプレイをしてやろうか。


「なんだか下腹部に魔力が集まりやすいみたいだねー」


 あなたがキスをするとか言うからだ。股間に魔力が集中しちゃうから余計な口を挿まないでくれ。挟むなら胸にしてくれ。意外と大きくて挟めるのはバレているんだからな。


「ほらほらぁ魔力が乱れてるよ? ちゃんと集中して」

「はい」


 乱れた切っ掛けを作ったのは性教師エルナトだが脱線したまま突っ走ったのは俺である。反省反省。自制自制。


「うん、出来てきたね。そうしたら次はもう少し魔力を削ってみよう」

「削るというのは?」

「あれ? 水を抜くみたいに体から出すんだけど、できないんだ?」


 体から水を抜く? まさか愛棒をこの場でしごけと?


「抜くって感覚がわからなくて、むしろどんどん貯まっていく気がします」

「溜まったら抜くだけなんだけど……それがわからないんだよね。感覚的なことを言語化するのってこんなに難しいんだ」


 たまったら抜けばいいってあんた。美人エルフが万年思春期の男に面と向かって言っていいセリフじゃない。その言葉だけで百は妄想出来て千回は抜ける。あーもうよくわからないから一回抜いてくれないか。パンパンに膨れてきて怖くなってきた。口でも手でも股でも腋でも髪でも膝裏でも頬と肩でもいいから抜いてくれ。魔力を。


「ユノは放出が苦手な魔術回路なのかなー……。ためるのはすごく早くて撃ちだすための形にするのも迅速なのに、どうして出すのができないんだろ」


 前世では毎日小出しにするタイプでした。むしろ溜めるのは苦手で放出に特化していると自負しています。


「ではどうしたらいい?」

「この子に魔力を食べて削ってもらうのはどうかな」

「にゅう」


 嬉しそうに性教師の方から俺の肩へ飛び移る精霊おっぱい

 口に出して呼びにくいから、そろそろ本格的に名前決めてやりたいところだ。


「にゅうううううう!!」

「あ、魔力が減っていく……気がする。こいつが吸ってくれてるの? 吸われているというよりも、なんだろう、運ばれているというか、おすそ分けをしているような感覚だ」


 血を抜かれるような感覚を想像していたがまったく違った。痛みも不快感もなく、膨満感が減少していくので心地よくすらある。


「焼けちゃうなー。私もユノと仲良くして魔力が欲しいなぁー」


 出たな、妖怪孕ませ待ち中出し懇願エルフめ。

 美しい見た目に惑わされる事なかれ。こいつは夜の音楽室にいたいけな少年を連れ込んで、ショタの体を使って演奏し楽器の様に喘がせる恐ろしい妖怪なのだ。鬼の手を持った地獄先生だって誌上の年齢制限と言う縛りもあって苦戦必至の大物妖怪である。

 白く艶のあるブラウスに黒色のタイトスカート。黒いタイツで脚線美を際立たせつつ胸元を大胆に開け、伝線してしまったストッキングを気にしながら前かがみで眼鏡越しに薄目で襲ってくる……。そのシチュエーションでやってくれ。百億までは出そう。金じゃない、精子払いだ。


「また魔力が乱れてるよー」

「ふ、不甲斐ないです」


 それにしても精霊おっぱいは本当に便利かもしれないな。これなら火柱を起こしたりする心配も多少は減るかもしれない。あれこれ悩まずに魔術が放てるならこれ以上相性のいい相手はいない。


「よしよし、上手く整ってきてるね。次の段階にいくけどいい?」


 イクの? いいよ?


「良からぬことを考えてるね? このままじゃあキスしてあげられないよ」


 それは困る。死活問題だ。冗談でも言っていい事と悪いことがあるし、それでもこの淫乱ショタ好きエルフなら理由をつけてキスをしてくれると信じている。


 ――信じると言えば前世で仲の良かった加藤君だ。


 加藤君と一緒にドラッグストアで買い物をしていた時の事だ。彼は大人用のオムツをいつもそこで買っているのだと、嬉しそうに語りだした。人に迷惑をかけた前科があり、あわや小便もかけるところだったというのに未だにその趣味は継続しているのかと不快になった。


 こちらは店内で警察を呼んでしまいたくなっている自分を抑えるのに必死だというのに、ウキウキとした足取りで迷わずオムツコーナーへ突入し物色をはじめる加藤君。そんな加藤君を睨む幾つもの目、目、目。毎度オムツしか買わない上に来店の頻度が異様に高い加藤君を店員さんたちが不審がりチェックしているようだった。


「新作のオムツがあったから試したいんだけど試着室はないのかな?」


 通ぶった口調と冗談とは思えぬ凄味に気圧される。底知れぬ邪悪がそこにはいた。

 新作のオムツと言う、どこの界隈の人がチェックしているかわからないホットなオムツを抱えレジへと向かう加藤君。しかし、そこで店員さんは独断のファインプレーで販売拒否をする。


 言い合いをしてもめる加藤君と店員さん。話を聞いていると、「オムツを利用して街中で放尿する若い変質者がこの店でオムツを買っている」という匿名での通報があったそうだ。


 この世の終わりのような顔をして店員さんへと食って掛かる加藤君。介護が必要な親がいるとかいう尤もらしい言い訳はあっさりと嘘だと見破られ、しまいにはあまりにも騒ぐものだから警察へ通報されてしまい事情聴取を受けることに。


「違うんだ、やましいことなど何もやっていない!」


 などと最後まで抵抗していたが、何も違う事はないし、やましい事しかやっていない。

 信じていた者に裏切られる苦しみ、今ならわかるよ加藤君。前もって情報をドラッグストアに垂れ込んでいたのが俺だと知ったときの加藤君の表情が今も忘れられない。だけどあれは加藤君を間違った方向へ進ませないための苦渋の決断、苦肉の策。だからどうか許してくれ加藤君――



 キス一つで加藤君を思い出すほど錯乱してしまうとは、すっかりエルナトに手なずけられてしまった感がある。もうエルナトの唇無しではいきていけないかもしれない。呼吸をするように君にキスをされて生きていきたい。呼吸もいらない。エルナトの人工呼吸だけで生きていくんだ。水分もエルナト産のお水だけを摂取する。お礼と言ってはなんだがユノ産の弱アルカリ性な白いお水を提供しよう。


「ほらー集中してるー? 次は狙った場所に指をさしてみようね」


 してます。君の唇に。

 その唇から目が離せない。だけど狙う指先は君の子宮をさしてしまう。


「もう、あぶないから人に向けちゃ駄目だよー」

「ごめんなさい」

「魔術は詠唱すると具体的な魔術が完成しやすくなるんだけど、しなくても出来ることは出来るんけど、慣れていないうちは大雑把な結果になっちゃうかもね。特に炎なんかは詠唱で範囲や火力を調整しないと危ないよ」


 なるほど、母さんが詠唱しているのはそういう訳があったのか。


「詠唱はあったほうがいいけど、なくてもできると」

「そそ。まあ詠唱なしじゃできないって人も世の中にはいるのかもしれないけど、私は知り合い自体がいないからよくわかんないんだよね」

「詠唱って一口に言うけど難しい呪文なんかだったりを覚えないといけないんだよね?」

「難しい話じゃないよ。たとえばお風呂の水を沸かすときなんかは具体的な温度の指定を念じながら口にするとか、その程度のものだね。詠唱は癖にした方がいいよ。慣れればいらなくなるんだけど、うっかりの事故は減らせるからね」


 詠唱しないと使えない人もいるか。

 俺は詠唱しなくても出来る畑の人間かもしれないな。何度か詠唱無しでやっている実績もある。むしろ詠唱で魔術を使ったことがない。

 これも常日頃から具体的リアルな妄想を日課としてきた賜物だ。まさかこんな所で努力が実のり、花ひらくとは。

 次はエルナトの花びらを開く妄想でもするとしようか。




 念じていればいつか股開ける日がくるかもしれない。



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