第22話 ショタ淫行科の女医エルフ

「ど、ドラゴンというのは、空を飛んだり宝を集めていたりする、あのドラゴン?」


 この世界にもドラゴンという存在は広く知られている。前世と違うのは空想上の生物ではなく実在するらしいという点。恐らく股間の話ではない。


「あはは、ユノはすっごい大きくて強いやつを想像してる?」


 俺のドラゴンがすっごい大きくて強いやつだと想像してるだと?

 ああ、正解だよ。俺の怒裸厳ドラゴンは六歳にしては大きくて強い。百聞は一発に如かず。信じられないなら見てみるといい。今なら触れ合いコーナーも開催しているので頭や顎を撫でて可愛がってあげてほしい。大丈夫、よくしつけられてるから噛んだりはしないよ。父親に似て甘えん坊で臆病だから穴や隙間を見つけると入っていこうとするから気をつけてね。


「それじゃあ相手が竜人族になっちゃうから見つけても手出しはしないよ。昔さ、私に色んなことを教えてくれた女性ひとが、竜人族はとても賢くて優しい種族ひとたちだって言ってたの。怒れば怖いけど、自分から襲ってくるようなことはしないんだって。だからもし出会ったら争いを仕掛けるのではなく友達になった方がいいよって」


 竜人族とやらについては何一つ知らないが、強者と友好的な関係を築けるならばそれにこしたことはないな。俺は長いものには自ら巻きこまれにいく事なかれ主義者だ。誰かの下について働くのが性に合っているので、ぜひ子分にでもしてもらいたい。竜の子分ともなれば箔もそうとなもの。ダンクルオスへ帰る道中に出会うであろう魔族やらなんやらのチンピラどもに絡まれたとしても親分の名を出せば光圀公の印籠がごとき効果を発揮してくれること請け合い。もしも出会えたら靴を舐めてでも庇護下に入れてもらおう。


「竜人族か……是非会って話がしてみたいな」

「やっぱユノも興味あるんだ。新しいことってワクワクするもんね!」


 じゃあお互い初めてのことをしようよ。入れるのと入れられるのを同時にさ。


 ベッドに腰かけて足をパタパタと振るエルナト。


「へぇ、スリッパ履いてるんだ」


 あるんだな。どこから入手したんだろ。


「ああこれ? これは自分で作ったんだよ」


 器用だな。じゃあ服なんかも自分で織ってるのかな。

 将来は君のスリッパになりたいという夢ができたよ。なぜかって? 美人に踏んで履かれて汗を染みこまされる――ちょっと考えれば最高だってわかるよね?


「しかしあれだね、エルナトは足が長いね……僕の倍はあるかな」


 途中まで言って生足を視姦していたことを白状してしまったと気づく。慌てて意味不明な感想を挟むが時すでに遅かった。


「アハ、倍はさすがにないよー」

 

 少し短めの緑色のスカートから生足が交互に上下する。あの太腿で生じている摩擦を愛棒で感じたい。


「あっと」


 スリッパが片方飛んでいった。それいらないなら貰っていいですか?


 それにしてもドラゴンを倒しに行くというのは本気なのだろうか。竜人族さんが云々と申しておりましたが、竜でも竜人でも俺には差がわからないし、無茶ぶりであることに変わりない。

 シコ猿一匹を相手にするにも苦労と心労を重ねて、なんとか制することができたのだ。ドラゴンを倒すなんてとてもじゃないが想像できない。想像できないから俺の愛棒を竜に見立てて討伐の手本を見せてほしい。


「ニヒヒー」


 何がおかしいのだろう。俺の頭か? 顔か?


「ユノって面白い顔するね」


 面白い顔か。つまらないとか不自由とか大雑把とか言われるよりはましな評価だ。ニュアンス的にも褒めてる寄りだろうし、この遺伝子が欲しいって意味でとらえるがよろしいか。


「そ、そういえばエルフは肉を食べないんじゃないの? そんな話を聞いたことがあるよ」

「そうなの? 私の場合は食べないこともないけど、無理して食べるものでもないかなー」


 そういうもんかね。どうせなら俺のミートスティックを無理して頬張る様を見下ろしたい。長年の夢なんだが土下座したらやってくれるだろうか。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とも言うし駄目で元々なのだから一発頼んでみようか。


「ドラゴンか……」

「心配しないでもユノの魔力量ならドラゴンぐらいなら病み上がりでも余裕で倒せるよ。それに私がいるから大丈夫。未来の番に怪我はさせないかんね」


 ぐっと拳を握るエルナト。

 ドラゴン相手にこの自信である。一生ヒモとして養われたいという欲求が噴出してきた。


 ――お帰りエルナト。台所でする? お風呂でする? それともこ・こ・で?


 みたいなことを言って仕事帰りのエルナトに裸エプロンで迫って遠慮なく滅茶苦茶にされたい。結局は三カ所順繰りめぐって種が尽きるほど犯されたい。


「じゃあ早速向かおうか。最近この辺に現れた荒くれ者を退治しに。君はお留守番よろしくね」

「にゅう……」


 エルナトはすたこら別の部屋に行ってしまった。

 どうやら彼女は本気らしい。目覚めて間もない、家から遠く離れた場所に飛ばされたらしく状況も確認できていない混乱する病み上がりの少年をつかまえてドラゴン狩りにいくらしい。


 正気か? 規格外の美人だから思考回路も行動理念も俺の常識でははかれないのか。

 そうだ、おっぱいお前も来てくれ。いざとなったら秘められし謎の力なりなんなりを開放して俺を守ってくれ、頼む。正直気が進まないなんてもんじゃないんだ。ドラゴンなんて前世には存在しなかったから比較対象がないけれど、少なくとも狼やゴリラよりは強いはず。いくら俺に魔力があると煽てられても植え付けられた魔物への恐怖心はそう簡単には拭えやしない。なんと言われようとも怖いものは怖い。


「念のためポーションを飲んでからいこう」


 戻ってきたエルナトに流れるように唇を奪われる。

 この唇泥棒は前科二犯だ。しかも奴はとんでもないものも盗んでいきました。私の心です。


「ありがとう」


 自分でも驚くほど素直に感謝の言葉が出てしまった。

 童貞はいつだって真っ直ぐだ。心は卒業に向けて真っ直ぐのびている。


「どういたしまして。にひひ」


 何がおかしいのだ。何か勘違いしている様子だからしっかりと訂正しておきたい。俺はポーションではなく、キスの方に感謝したのだからな。そこんところを勘違いしないでいただきたい。


「もう体も動くし次からは自分で飲めるよ」


 まさか魔力が無いだけで体まで動かなくなるとは思わなかった。教育機関も前世に比べたらろくにないようなこの世界で、魔力がどれだけ大事なものなのかは身をもって学んだ。魔術も使い方には気を付けよう。使えることで少し浮かれる気持ちもあるが、前世と比べれば不便なことも多い。


「そうなんだ? 残念だなー。ユノと唇合わせるの好きだったのになー」


 とんだショタ好き色魔エルフさんもいたもんだ。それならばどんどんやってくれたまえ。俺の唇は二十四時間営業だ。起きてる時でも寝ている時でも、好きな時に唇をくっつけていてくれ。

 そうだ、唇よりももっと良いところがあるんだけど……ほら愛棒、恥ずかしがってないで出ておいでったら。これからお世話になるんだからちゃんと挨拶をするんだ。


「そ、それは光栄の極み。そういわれて嫌な気はしませんね」

「もっと口調を砕いてー」

「僕も嬉しいよエルナトお姉ちゃん」

「んー……よろしい」


 冗談めかして言うと満面の笑みを向けたあと抱きしめられる。

 お姉ちゃん呼びが存外刺さったのだろうか。今のが求めていた答えだったかはわからないが外れてもいないように思う。

 色魔エルナトが根っからのショタ好きな線もある。ゴードンさんみたいなゴリゴリの筋肉猿に成長したら捨てられる可能性もあるので体は鍛えすぎないように気を付けよう。


「ではさっそくいこうか。悪しきドラゴン退治にー。おー」


 一人で楽しそうだな。


「うん、お手柔らかに……」


 ほら、おっぱいもおいでったら。お前もお手に柔らかいだろ。


「にゅううう」

「あれ、あなたもついてきたいの? まあ盗られて困るものはないか。そうだね一緒に行こう」

「にゅうう」

「え? なんでユノが返事したの?」


 何となくです。

 そうか、おっぱいも来てくれるか。よかった、本当によかった。立派に身代わ……役割を果たすんだぞ。


「その前にこれを着てね。そのままじゃさすがにまずいでしょ」


 何で俺の服を色魔エルナトが?

 あれ? 何で俺は全裸なの?

 もしかして気を失っている間に童貞も失ったりしてる?

 だったら喜ぶに喜べないが喜ばざるを得ないな。


「寝てる間に体を拭いてあげてたんだよ。他にも色々ね? 私はもっと感謝されてもいいんじゃない?」


 何故意識がある時にやってくれないんだ!

 ワンモア! ワンモアチャンス!

 くそっ、時を駆ける魔法はないのか!? 意識だけでもいいから過去に戻してくれ!!


「そ、それはありがとう。色々って……いろいろだよね。なんか悪いことをさせちゃったね」

「顔が赤いね。照れてるの? それとも怒ってる?」


 薄目でまた顔を寄せてくる色魔エルナトは、俺が怒っていないとわかると薄い唇を上げてにんまり笑う。

 童貞の心を守るDTフィールドは破られ返答に窮する。淫乱エルフの処女膜フィールドも侵食して破り返してやろうか。


「そりゃあ照れるよ」

「子供にしては立派なモノをお持ちだったね」


 なんてエッチな事を言うんだ。ありがとうという感謝の言葉しか浮かばない。

 しかし比べるということは観測者時代に誰かのを見たのだろうか。はたまたリップサービスか。それとも処女じゃないのか。処女かどうかに拘りはないけれど、膜はあるにこしたことはない。膜あり知れば、百戦危うからずだ。

 エルナトはどっちだ。経験豊富なエロフなのか、耳年魔エロフなのか。はっきりしてくれ。


「そりゃどうも。父さんに似たのかもね」


 なんて会話をエルフとしているんだ。出来る事ならば録音しておきたかった。


「にゅううううううううううううううう」


 うお、びっくりしたぁ。


「ごめんごめん、そうだね、行かなきゃだね。この子は魔力を栄養にしてるから、元気になったユノから魔力が貰いたいんだよ。魔術を使ったときのおこぼれが欲しいんだね」

「あげれるものならいくらでもあげるけど……女性みたいにパイプだっけか、パスだっけか、そういうのは作られないの?」

「契約すればパイプは通るよ。でも契約しなきゃ大丈夫。したとしても死ぬまで吸われる訳じゃないからね」


 へーきへーき、とエルナトは軽いノリだ。

 まだ魔力について詳しく知らないのでこちらは色々不安なんだよ。

 習うより慣れろの精神で、エルナトとのパイプをつなげる実技研修としゃれこんでもいいんだぜ。何? 処女だからやり方がわからない? 仕方ないな、習うより舐めろだ。しゃぶって覚えろ。


「それじゃあ先に外で待ってるから早く着替えてきてね」

「はい、通常の三倍の早さで着替えます」

「なにそれ、おかしーの」


 さて、エルフも靴に履きかえて出て行ったしスリッパでも嗅ぐか――ではなく、待たせるのも悪いのでさっさと着替えよう。


 シャツと下着とズボンで終わりっと。

 母さん、ユノは一人で着替えられましたよ。もう手伝ってもらわなくても一人で出来るんだと証明しました。次は脱がし方を習いたいです。


 さくっと着替えて外へ出る。

 木目調だらけな家具と部屋だったので、まるで樹の中みたいだとは思っていたが、本当に樹の中だった。背の高い樹の中ほどにくり抜かれた小部屋がエルナトのおうちである。


「よく枯れないな、この樹」


 螺旋状に樹の周りに設置された階段。樹に体を押し付けるようにして恐る恐る降りる。

 一歩踏み外せば落ちて死ねる高さだ。

 落ちたら死ぬ。落ちたら死ぬ。落ちて死ぬなら恋がいい。


「ふぅ……おっかなかった。お待たせしました。さてと、ドラゴン退治なんてまったく乗り気じゃなくて行きたくないけど行こうか」

「臆病だねぇ。私よりも魔力多いのにー」


 そうなの?


「エルナトは人族なんて超越した、遥か高みの存在だと思っていたけど」

「そんなことないよー。どこにでもいる普通の女の子だよー」


 こんな美女がどこにでもいたら出生率が100%超えるわ。


「そういわれると親近感が湧いてくるかも」

「そう? じゃあもっと湧かせて、もっと身近になってね」




 高嶺の花には変わりないけどな。

 どれ、高嶺の花の蜜はどんな味なのか味見させてもらおうか。


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