第3話

「ふぁぁ、おはよう。お兄ちゃん」


次にリビングに入って来たのは、俺と同じ紫色の髪をした女の子。


「琉花か」


「おはよう、琉花ちゃん」


この子の名前は与那嶺琉花。


俺より1つ年下の従妹だ。


「琉花、もうここの生活は慣れたか?」


「うん。あたしだってもう大人の女性なんだからね」


琉花はえっへんと誇らしげにしてみせたのだが。


「そうか。大人の女性はパジャマの恰好で人前に出て来るもんなのか?」


「うっ……!?」


ここで琉花は、ようやく自分がパジャマ姿のままリビングに来ていた事に気付いた。


「こ、これはあたしのセクシーなパジャマでお兄ちゃんを悩殺しようと……!」


「ウサちゃんパジャマがセクシーねぇ」


琉花が来ているのはウサギの着ぐるみパジャマ。


なんとも子供じみたチョイスだ。


「うぅ~。こういった愛らしいパジャマから見える乙女の柔肌が――」


「はいはい、セクシーだから早く着替えてこい」


「むぅ~お兄ちゃんのばか~!」


「ちゃんと歯磨いて顔も洗って来るんだぞ」


「わかってるもん!」


すっかり拗ねてしまった琉花。


バタン!と勢い良く扉を閉めてリビングを出て行ってしまう。


「お兄ちゃんも大変ね」


「それはあいつが勝手に呼んでるだけですよ。それに、あいつと俺は従妹ですから」


「あら、それでも血が繋がってるんだからいいんじゃない?」


「そりゃあまぁ、そうですが」


「琉花ちゃんだって4月から慣れない寮生活が始まった訳だし。お兄ちゃんがしっかり支えてあげなきゃね」


「そうですね。あいつ、妙な所で寂しがりな所がありますから」


「ふふ、まだお兄ちゃんに甘えたい年頃なのよ。ね、お兄ちゃん♪」


「っ、鞘さん……面白がってますね」


鞘さんのお兄ちゃん呼びには琉花とは違った、こう、グッと来るものがある……。


「だって琉人君がかわいいからつい、ね♪」


まったく、そんな風に可愛く言われたら怒るものも怒れない。


この人のこういう所、本当に反則だと思う。


「っと、ちょっと今日はゆっくりし過ぎたかしら。朝ごはんの支度、急がなくっちゃ」


「じゃあ俺は、まだ起きて来ないアレを起こして来ますよ」


「ふふ、お願いね」


放っておけばいつまでも寝てる、だらしないあいつを起こさない事には俺の朝の仕事は完遂しない。


毎度毎度の事で面倒だと思いながらも、俺はリビングを後にするのだった。

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