第2話

「いや~お二人さん、朝からい~い雰囲気ですねぇ~♪」


ニヤニヤ顔で俺達の会話に割って入ってくる男。


「ひゃっ!? よ、吉安君!?」


鞘さんが驚きの声を上げる。


「吉安、お前いつからそこに……」


「結構前から居たんだけど、どうせだから琉人と鞘さんのラブラブシーンを青春の1ページに記憶しておこうかと思って♪」


茶髪のツンツン髪で俺より背丈の高い、こいつの名前は石井吉安。


一応は俺の友人だ。


「ち、違うからね! 全然そんなんじゃないのよ、吉安君」


(鞘さん。何もそこまで力一杯否定しなくても……)


「しっかしお前も隅に置けないねぇ♪」


吉安が茶化しながら肩を組んでくる。


「……何がだよ」


「何がって分かってる癖に。山内鞘さんと言えば、我が『桜華学園』のマドンナ的存在!そしてそれと同時に俺達が暮らす学園寮『紫陽花』のお母さん的存在でもある人なんだぞ!噂では彼女を聖母と呼び、崇めている人達だって居るとか」


「聖母って、また随分と壮大だな」


「うー、恥ずかしいな……」


鞘さんがどう反応して良いか困ったような表情を見せている。


「あんまし鞘さんを困らせるんじゃない。お前もさっさと朝の当番終わらせて来いよ」


それに気付いた俺は吉安をこの場から追っ払う事にした。


「え~、これからが面白いのに」


吉安は不満を漏らしながらも


「ったく、琉人はすぅぐ女の子の味方するんだから」


懲りずにまた俺をイジってきた。


「……朝の当番終わらせないと飯は出さんぞ」


「すぐに行って参ります! サー、イエッサー!」


形勢不利と察したのか、吉安は慌ててその場から退散していった。


「まったく、朝から鬱陶しい奴だ」


「でも琉人君と吉安君は仲良いね」


「まぁ、あれでも小学校からの腐れ縁ですからね」


「吉安君はいつも琉人君とは心の友だって話してるわよ」


「あいつのは『自称』ですよ」


「ふふ、素直じゃないんだから」


「……どこをどう捉えたら、そうなるんですか」

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