第1話
「よし、朝の玄関掃き当番終了」
暖かな日差し、爽やかに吹く風。
ちょっと前まではまだ寒さが残っていたが、季節の移り変わりとは早いものだ。
春が終われば梅雨が来て、すぐに夏が来る。
「あと2年、か……」
雲一つ無い青空をぼんやりと見上げながら、深いため息を吐く。
「鞘さん、玄関前の掃除終わりましたよ」
リビングに戻った俺はキッチンで朝ごはんの支度をしている女性に声を掛ける。
「ごくろうさま、琉人君。朝ごはんもうすぐ出来るからね」
淡い栗色のふわふわロングヘヤーが魅力の物腰柔らか素敵お姉さんの名前は山内鞘。
俺より1つ上の先輩だ。
「何か手伝いましょうか?」
「じゃあこのお皿をテーブルに運んでおいてくれる?」
「分かりました」
鞘さんに頼まれた仕事を、ものの数秒でこなす。
「いつもありがとね」
「なにか他に手伝える事はありますか?」
「あ、そうだ。このお味噌汁、いつもと違うお味噌で作ってみたんだけど……味、どうかな?」
鞘さんが少量の味噌汁をおたまですくい、小皿によそう。
「ふー、ふー。はい、琉人君」
鞘さんは優しい笑顔を浮かべながら俺に小皿を手渡してきた。
「え、あ、いや……」
美人な鞘さんがふぅふぅしてくれたというだけで、何かとてつもない気恥ずかしさを感じる。
(いいのかな……俺がこれ飲んで……)
普段物静かで大人びている鞘さんが時折見せる、こういった可愛い仕草は反則だと思う。
「大丈夫、熱くないよ」
鞘さんに特に深い意図は無いのだろう。
となれば俺だけが変に意識しててもおかしいよな。
「じゃ、じゃあ……」
俺は内心ドキドキしながらも小皿を口元に運び、こくりと味噌汁を飲み干す。
「どう、かな?」
「……すごく、ドキドキしました」
「え……!?」
鞘さんが驚きの声を上げ、俺はそれで自分が変なことを言っていると気付き、慌てて訂正する。
「あ、いや、その……味、味ですよね!」
「う、うん、そう。味、ね」
鞘さんも何故か顔を赤らめながら慌てていた。
なんでだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます