第14話 ビンゴ大会という在庫処分大会
「文化祭大成功を祝って打ち上げだー」
文化祭はとても順調に終わり、利益は約900万ほど出た。想定よりも出ている気がするが、白石の台本を売れば、さらに利益が増える。
「打ち上げってケーキ食べるっけ?」
「・・・知らないな。食べるところもあるんじゃないか」
「気にしても仕方がないか」
そう言って音無はバイキング形式になっている料理を食べに行った。テーブルにはカレー、ケーキ、焼肉、うどん、などなど和洋折衷以上に様々な種類の料理が並んでいる。どうでもいいが、全部僕が作った料理だ。
「みんなー、打ち上げ恒例のビンゴ大会を始めるよー」
この打ち上げはもちろん香川提案で、香川が仕切っている。
「奏花ちゃんは初めてだよね?一応ルール説明しておくね」
5×5のビンゴ用紙が配られるが、真ん中以外は何も書かれていない。そして各自好きな数字を書いてよい。
「みんな書いた?じゃあ、好きな数字を言って!」
各々好きな数字を叫ぶ。
「今回の数字は・・・1516!1516だよ!」
このビンゴ大会では叫ばれた数字を合計して番号が決められる。他にはルールがないため10億などと叫んでもよいが、全員がそうすると一生、誰一人ビンゴしないので暗黙の了解で99以下の自然数を叫ぶようにしている。
「すごく自由度の高いビンゴ大会だね」
もちろん、大会初参加の音無のルール説明を聞いた時の感想である。ところで景品はどんなものがあるかが重要だが、景品を出し惜しみはしないのでとんでもないことになっている。
1等・・・今回の文化祭に出店した機器最大10台。(先着1名)
2等・・・今回の文化祭に出店した機器最大3台。(先着5名)
3等・・・今回の文化祭に出店した機器最大1台。(先着10名)
4等・・・今回の文化祭で余った材料の33%分。(3名)
5等・・・打ち上げの余りの25%(4名)
参加賞・・・余ったデザートのプリン1個
「なあ、蓮。いつも思うんだがこの打ち上げビンゴ大会って在庫処分大会じゃないのか?」
「そうかもしれないが、解体すればよい素材が手に入るし一部の人にとってはうれしいんじゃないのか」
「そんなものか・・・」
「そんなことより、料理を食べなくていいのか?早く食べないとなくなるぞ」
打ち上げではあえて作る量は少なめにしてある。余ったら面倒くさいからな。
「どうせ寮に戻ってから二次会が行われるだろう。今食べすぎたらそっちが大変だ」
そちらもまた香川主催の二次会である。
「別にあれは自由参加だから参加しなければいいんじゃないか?」
「それも出来なくはないが、圧を感じるんだよ。『え?幼馴染で私の彼氏なのに、二次会参加してくれないの?もちろん自由参加だから参加しなくてもいいけど、参加してくれるよね?3、4時まで起きることがよくあるのに、今日は眠いの?・・・以下略』みたいな感じの圧を」
「それは、大変だな」
「おい、適当にあしらうな」
「そういう女性を彼女にした梶井が悪い」
香川の名誉のために補足をしておくと、別に香川はメンヘラでも重くもなんともない。自分の楽しみのために手段を選ばない女なだけで。今回の場合は梶井を参加させる手段として少し重い彼女を演じているだけだ。だから本気で嫌がれば以降同じことはしてこないだろう。
「遠藤君、まだここにいたんだ。色々と移動しているものと思ってた」
音無が帰ってきた。
「ところで、白石さんと赤坂君見てない?」
「白石はたぶん寮だ。こういう雰囲気は好きじゃないみたいだからな」
「わかるかも。赤坂君は?」
「寸なら、香川近くの壁のどちらかの端にいると思うぞ」
「嘘!?・・・ほんとだ。いた」
「寸は食べ物目当てで打ち上げに参加しているからな。美味しそうな物を食べるために誰にも見つからないところにいることが多い」
「確かに目につかないけど・・・赤坂君ってそんなに食べたっけ?」
「寸は好きな食べ物になると急に食べるようになるタイプだから、打ち上げのようにいろいろな料理が並ぶと好きなものだけ取るんだ」
「ところで赤坂君って何が好きなの?」
「ハンバーガーだ」
「めずらし・・・いの?」
音無が判断に困っている。ハンバーガーが好きな人は少ないだろうが、1番好きかどうかを問われると、数は減らすだろう。どれくらい減るかは知らないが。
「ところで、今回の料理にハンバーガーなんてあった?パンとハンバーグはあったけど」
「俺は見てないな。蓮、今回ハンバーガーって作ったか」
「今回もなにも毎回ハンバーガーは作っているぞ。赤坂に依頼されているからな」
「え?」
「どうしたの、梶井君」
「いや、3回に1回くらいしかハンバーガー見てないぞ」
「毎回4、5個しか作らないから、全部梶井がとっていくんだろう」
別に小さいわけではなく、チェーン店のレギュラーサイズくらいの大きさはある。
「確かにすごく食べるようになるんだね」
赤坂を見ると、ハンバーガーを2個手に持ったまま、ハンバーガーを食べている。食べてから取りに行けよ。
打ち上げも終わり、寮に戻ってくると当然のごとく、香川主催の二次会を開くことになった。赤坂はハンバーガーがないなら、と部屋に戻っていった。残ったのは僕、梶井、香川、音無の4人だ。
「じゃあ、かんぱーい」
酒は飲んではいけない年齢なので、水を入れればビールみたいになるジュースで代用している。
「ところで遠藤君、おつまみっぽくするのはいいんだけど、多くない?」
机には焼き鳥、カルビ、枝豆などがそこそこの量置かれている。
「余ったら明日に回せばいいからな。多すぎて困ることはない」
「みんな、ジュースにこれ入れなくていい?」
「なにそれ」
「一定量以上飲むと二日酔いする粉」
「何を思ってそれを作ったの?」
本当に謎なアイテムだ。
「その代わり、血行が良くなって精神的ストレスが解消されるよ」
「それならまぁ・・・」
「さらに人によっては饒舌になって、普段は言えないことが言えるかも!?」
「それはもうアルコールだよね」
「やだなぁ、冗談だよ。代謝がちょっと良くなるくらいだよ」
「一応メリットもあってよかった」
その後、順調に二次会は終わった。途中、音無が疲れか、香川のいたずらかは分からないが寝落ちしたり、ジュースなのに飲みゲーが始まったりしたが、無事に終わった。
「なぁ、朝海を見ていないか?12時になったのに一度も見ないのはおかしい」
「梶井、何も聞いてないのか」
「なんか言っていたのか」
「二日酔いしたらしいぞ。今日は部屋から出たくないらしい」
「そういえば、二日酔いする粉を入れてがぶ飲みしていたな」
「というか、お前音無の彼女だろ。教えてくれなかったのか」
「『今日は部屋に来ないでほしい』とだけメールが来て、そこからは何も来てないな」
「それは何というか・・・すばらしい信頼関係だな」
その翌日、香川の二日酔いは無事治った。しかし、その粉を封印したことを見るに、自分でもゴミアイテムだと実感したのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます