第12話 売値17万のしあわせをよぶ壺
香川の提案で下級生の出し物、『射的』をすることになった。
「ところで、なんで目玉商品が『純金のインゴット1kg分』なの?」
「分かりやすく価値が高いからだろ」
「えーっと、金1gは4000円以上だから大体400万円以上?ぶっ壊れレートじゃない?」
ここまで高価な商品を用意しているということはそれなりの難易度があるのだろう。
「じゃあ、私からやるね」
香川が先陣を切って射的を始めた。香川の狙いはもちろん『インゴット』・・・ではなく、クマのぬいぐるみだった。
「香川さんって無謀な挑戦をしないタイプだったんだ」
「朝海はああ見えて堅実なタイプだからな。あいつにつられるとひどい目に合うというのはそういうことだ」
「なるほど、理解した」
射的1回につき弾は6発もらえる。だが、明らかに威力が低く、少し銃身も曲がっている。ぬいぐるみの額近くのほぼ完璧なところにあたっても、少ししか動かない。これは5発くらいは当てる必要がありそうだ。
「香川さん、上手くない?」
「香川は結構器用だからな。こういうのをやらせたら意外に上手くて後の人が困る」
僕の言葉通り、香川はぬいぐるみに5回当ててぬいぐるみをゲットしていた。そしてその後の音無、梶井、赤坂、白石は当たらない、もしくは当たり所が悪くなにも獲得できなかった。
「じゃあ、最後は大本命、蓮だね」
「何を落としてほしい?」
「うーん、インゴットはもらっても大変だから隣の『ゲーム機&ゲームソフト』をお願い」
「さすがに無理でしょ」
音無の言う通り、的は大きいとはいえそこそこの重量がありそうである。まずは1発、軽く当ててみる。しかし、的はピクリとも動かなかった。
「さらっと、1発で当てるのはすごいけどさすがに無理じゃない?」
「そうですよ先輩。当然大物は落ちにくくできていますから、小物を狙った方がいいですよ」
店員役の1年生にも言われてしまった。何かしらの不正はしていると思われる。ならば、こちらも絶対にばれない不正術を見せてやろう。
まず、銃を構える。そして的を撃ちぬくビジョンを頭に思い描く。最後に引き金を引くその瞬間に銃を高速で押し出す。その後で高速で元の位置まで銃を戻す。もちろんのことだが銃が的に当たってはいけない。それは不正ではなく反則だ。
「おー、また当たった・・・落ちた」
「えぇ・・・」
店員役の子も困惑している。それはそうだろう。本来落ちるはずのない商品がいとも簡単に落ちたのだ。
銃を押し出すことで弾の速度が速くなる。これにより足りない威力を補うことができるようになる。
「では商品はもらっていくね。残りの4発は次の人にでもあげといて」
「普通にすごくない?どうやってやったの」
「あまり無闇に使うなよ」
音無に小声でやり方を教えてやる。
「あの・・・一般人にできるわけがないんですけど」
そうか?秒速600m程度で腕を動かせばほとんどの商品を確実に落とせる素晴らしい方法だと思っていたんだけどな。
次に上級生の出し物『パズル』をすることになった。おもしろくなさそうに見えるかもしれないが、パズルを解くと景品がもらえるようだ。
「ねぇ、最高難易度の景品の一つに『売値17万のしあわせをよぶ壺』ってあるけど怪しすぎない?」
「高くても3万、安かったら5000円で買える代物ではあるな」
しかし、きっと嘘はついていないのだろう。たまたま売り手が17万で売ったのだろう。
「・・・私、パズルそんなに得意じゃないんだよね。蓮、解ける?」
「・・・できるぞ」
「じゃあ、これを・・・」
「だが解かないぞ。去年、景品を取りすぎて出禁になりかけたからな」
「そんな過去があったんだ」
「去年は計35個の景品を取って、これ以上は渡せませんと言われたな」
「35はやりすぎでしょ」
「じゃあ、累解ける?こういうの得意でしょ」
「最高難易度以外はな。あれは難しすぎだ」
「高難易度の『威力30倍ロケット花火セット』が欲しいんだけど」
「いいぞ」
累が解いたのは4回転ごとに中心の赤と青と白が、7回転ごとに中心の黄色とオレンジと緑が入れ替わり、279回転ごとに中心のすべての色がランダムでシャッフルされるルービックキューブだ。難しそうに見えるが何回も回転させれば任意の色にできるので実際はそこまで難しくない。
「あれ、無駄に回転させれば簡単そうだけど、制限時間10分だから結構厳しくない?」
「1秒間に3回転できる人でも1800回しか回せないからな」
「そう聞くと余裕かも」
「ありがと、累」
「高難易度くらいなら俺でも解けてよかった」
「というか、遠藤くん最高難易度のクロスワード解けたの?」
6×6の方眼紙みたいなクロスワードでヒントは縦と横のカギ1つずつという鬼畜仕様だ。6文字の言葉を12個以上思いついたうえで文字と文字の組み合わせでそろわなければいけないという景品を渡す気のないクロスワードだ。
「一応解けたぞ」
「すご」
そして、普通科の魅力的に感じられない『ゲームコーナー』や『悪魔は存在するか』についての展示などを見たが、予想通りたいしておもしろくなかった。
「なんか、私たちなら4倍は面白いモノをつくれるって思っちゃうんだよね」
「わかる。ゲームコーナーのピンボールなんて私でも理論値とれたし」
「香川の『私でも』を信用できたことないんだが。蓮にはすこし劣るが香川も十分人外レベルの才能を持っているぞ」
累が呆れたような顔で言った
「でも私を地球外生物としたら、蓮は宇宙外生物だよ」
宇宙外生物とは何だろうか。悪口ではないと信じたい。あと、それを聞いて納得したような顔をしないでほしい。
「ところで、一部のクラスが屋台もやってるみたいだけど行く?」
「・・・食べてないから何とも言えないが蓮が作るカップラーメンの方が美味しいかもしれない」
「いや、カップラーメンは誰が作っても同じ味でしょ。遠藤君がアレンジしているとか?」
「普通にお湯を注いでいるだけだぞ」
「奏花ちゃんは食べたことがないんだっけ?蓮のカップラーメン。味は普通のカップラーメンよりちょい美味しいくらいなんだけど、カップラーメンでしか味わえない食感があるんだよね」
「・・・よく分からないから今度作って」
カップラーメンを要求される日が来るとは思わなかった。
ちなみに3時間くらい適当に遊んで、自分のクラスに戻ると、すべてのゲーム機に並んでいる人がいるくらい大盛況だった。
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