第4話 午後に行われる終業式

「おっはよー」


香川専用、直下型エスカレーターから香川が落ちてきた。朝から元気な奴だな。


「おはよう、音無は・・・寝てるのか?」


「ううん、階段で降りてくるって。ほら、噂をしてたら来た」


「おはよう、遠藤君」


「おはよう。で、寝れたか?」


「寝れてない。なんていうか、いろいろ、すごかった」


「言い方が悪いぞ。確かに、香川のこういう時は凄いけどな」


「いやー昨日は盛り上がったね。奏花ちゃんがあんなにゲーム上手かったなんて」


「皆あまりゲームとかしないの?」


「できないわけではないが、そんなに上手くはないな。赤坂が作ったNPCの方が強い程度には」


「あーあれ強かった」


「ちなみに蓮はチートを疑うくらい強いよ。一緒にすると嫌われるタイプだね」


余計な一言すぎるだろ。しかも的を得ているから言い返しにくい。


「音無、荷物届いているぞ。全部部屋に入れておいたが何かあったら言ってくれ」


「ありがとう・・・結構あったと思うんだけど、一人でやってくれたの?」


「いや、赤坂のロボたちがほとんどやった。僕はほとんど何もやっていない」


「そうなんだ・・・そういえば今日終業式じゃなかった?」


「9時から終業式だな。それがどうかしたのか」


「もう8時だよ。早く準備しないと」


「音無、9時って午前じゃないぞ」


「え?」


「普通科の終業式が午前9時からで、僕たちのクラスは午後9時からだぞ」


「夜に終業式するの?」


「普通科の邪魔になるからな」


「頭おかしいでしょ、この学校」



午後・・・深夜12時。終業式は無事終わった。無事に終わった・・・無事に・・・いや、無事じゃなかったかもしれないがとにかく終わったのだ。


「終業焼肉式楽しかったねー。ってことは明日からしばらく休みでしょ。蓮、どっか旅行しよう」


「なぜ僕に聞く?」


「だって蓮が認めてくれないと行かせてくれないじゃん」


確かにそうかもしれない。


「私も旅行したい」


「奏花ちゃんもこう言っているんだから、蓮いいでしょ」


「別に構わないが、どこに行くんだ?」


「今から考える。どこかいいところある?」


ノープランかよ。


「俺の別荘とかどうだ。少し遠いが静かだぞ」


「寸、いいの?というか別荘持っていたんだ。」


「しばらく使っていなかったが、問題はないと思うぞ」


「どれくらいのところにあるの?」


「ここから車で3時間だな。電車なら4時間はかかる」


「3、4時間程度ならいいと思うぞ」


「そこにしよう。皆大丈夫だよね?早速明日には出発しよう」


「え、明日?急すぎない?」


「香川と付き合っていたらよくあることだ。車と運転手は準備しておくが、酔い止めを準備しておいた方がいいぞ」


「蓮、車運転できるの?」


「いや、運転するのは僕じゃない。少し頼めば運んでくれる人がいるだけだ。酔い止めは必須だがな」


「アッシーくんってやつだね」


いつの時代だよ。今時使っている奴は・・・いるか。


「音無、準備は今日のうちにしておけよ。おやすみ」


「おやすみー。私も今日は早く寝よ」


「私、荷物届いたばかりなんだけど」



翌日、昼頃。アッシーくんになってくれた車がやってきた。


「アッシーくんにされた葦田だ。よろしく。じゃあ、出発するぞ」


車が動き出した。


「酔い止めは飲んだか?もう、遅い気もするが」


音無は疑問を言葉にする前に理由が分かった。速いのだ。動き出してまもなく、時速50キロは出ている。しかも無駄のない動きで曲がるため怖い、その上酔う。


「まだ、ゴールド免許を維持しているのか?」


「ああ、一度も違反を取られたことはない」


さらに信号停止の時も急ブレーキにギリギリならない程度のブレーキを踏む。いつか事故を起こしそうなものだが免許を取ってから今まで一度も違反すら取っていないのだ。不思議で仕方ない。



しばらくして目的地の赤坂の別荘に着いた。山の奥地で不便極まりなさそうだが、別荘としてはいいのかもしれない。同乗者たちは全員グロッキー状態になっている。香川だけはついた瞬間元気になったが。


「別荘だー。すごく大きいねー。寸、早く開けて」


赤坂はヘロヘロだったが鍵を取り出して香川に何とか渡した。よく頑張った。


「広ーい。すごい、プールまであるよ」


「確かに広いな。別荘で豪邸とか金持ちかよ・・・金持ちだったな」


「なんで、そんな、元気、なの」


「慣れだな。3回乗れば慣れる。香川は知らない」


「遊びたいけど、今日は遅いしご飯食べてからにしよう。ということで蓮、よろしく」


結局遊ぶのか。あと丸投げをするな。


「食材あるの?」


「持ってきてない。赤坂、この別荘に」


「数年は使ってない別荘だ。あったとしても腐ってる」


「じゃあ、どうするの」


「仕方がない。買ってくるよ。何か食べたいものとかあるか」


「屋外で食べれるものがいい!」


「バーベキューセットはあるのか」


「確かあったはずだ。・・・あった。まだ全然使えそうだ」


「じゃ、僕は少し行ってくる」


「今から行くの?山を往復するだけでも1時間はかかると思うけど。ってもう行ったの!?」


「じゃあ、その間何する?ゲームとかある?」


「昔、といっても10年くらい前のゲームだがあるぞ。パーティゲームだが。」


「別にいいよ。皆もいいでしょ」


「俺も混ざっていいか?あ、帰りも任されたらしばらく一緒にいさせてもらうと思う。よろしく」


「私はいいけど・・・あれ?葦田さん?なぜここに?」


「ひどいな。一応運転手だぞ。あと、呼び捨てでいいぞ」


「言い方が悪かった。遠藤君をふもとまで連れて行ったんじゃなかったの?」


「いや、一切頼まれていないが」


「そうなんだ」


「蓮なら大丈夫だよ。早く遊ぼー」


「大丈夫ならいいか」



数十分後、僕が帰ってくるとすごく楽しそうにみんなでゲームしていた。


「人に買い出しを任せておいて、楽しそうにゲームをするなよ」


「ごめん、思いのほか楽しくて。というか早かったね。数時間はかかると思っていたけど」


「?それよりもカレーでいいな」


「全然いいよー」


特に意味もないが屋上で食べた。景色はきれいだった。本当に何で屋上で食べたんだろう?

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