第3話 爆発と修理を繰り返された家

「まさか、2時間で6時間分の授業が終わるとは…」


本日、行う予定だった授業は午後の2時間で終わった。


「そういや、遠藤のとこの寮まだ空いてたよな」


「空いてますけど…」


「じゃあ、そこに音無を入れてくれ」


まだ決まってなかったのか。


「問題はないですけど…」


「勝手に増築したことは不問にしてやるからさ」


脅しをかけてくるとか、こいつ本当に教師か?


「そこまで言うなら別にいいですけど…。本当に僕たちの寮でいいんですね」


「どこの寮も似たり寄ったりだからな。お前たちの寮が一番マシだ」


「分かりました」


音無はまだ教室に残っていた。


「音無の寮は僕たちと同じ寮になったぞ。案内するから帰る時教えてくれ」


「分かった・・・もう帰る」



数十分後、寮に着いた。


「という感じだ。覚えられたか?」


「ううん・・・っていうか1回で覚えられるわけないよね!?」


「そうか?結構覚えられる奴はいるぞ」


「・・・でこの奇妙な形の家は何?」


目の前には改修と増築を繰り返した不格好な寮が広がっている。


「爆発と修理を繰り返した結果だな」


「日常的に爆発が起きるの…?」


「そんな不思議なことでもないだろう」


「普通は爆発することなんてないから」


そう言われればそうかもしれない。音無にカードキーを渡す。


「このカードキーを穴に差し込んで回せば開くぞ」


「カードである必要ある?」


「ないな」


「・・・普通の寮っぽくて安心した」


「寮自体は一般的な寮だからな」


寮自体は。その時上の方から爆発音が響いた。


「また香川が何かしたな。音無、気にする必要はないぞ」


「すごく気になるんだけど」


リビングの方からロボットが近づいてくる。


「お帰りなさいませ、遠藤様、音無様」


「ああ、ただいま」


「お邪魔します・・・ロボット!?」


「音無、ここはお前の寮でもあるんだからただいまでいいぞ」


「それじゃ・・・ただいま」


「遠藤様、赤坂様から庭には出るなとのことです」


「ありがとう・・・音無、部屋は自由にしてくれ。おすすめは204か205だ」


「分かった。ここがリビング?思ったより広い・・・あれは何?」


リビングの天井に大きな穴が開いていてそこからロープが垂れている。


「香川曰く、直通エスカレーターらしい。どちらかというとエレベーターだけどな」


「・・・実用性あるの?」


「なんでも階段より80%も早く移動できるらしいぞ。僕は階段使うけど」


「それって何か問題あるってことだよね!?」


「問題も何も、着地を失敗したら死ぬし、2階から飛び降りているのとそんなに大差がないだけだ」


「実用性ないじゃん」


「おっかえりー」


香川が穴から落ちてくる。


「・・・実用性あった」


「蓮、火薬少なくなってきたから足しといてくれる?」


「この前補充した気がするが、もうなくなったのか?」


「いやー、できるだけ節約していたんだけどねー。いつの間にかなくなってたんだよね」


「まぁ、分かった。3、4日かかるからそのつもりでいてくれ」


「ありがとう。で音無ちゃんが来たから今日は歓迎パでもする?」


学校でもして寮でもするのか。こいつは一日何回歓迎すれば気が済むんだ?


「パーティはしなくていいだろう。晩御飯を音無の要望に沿えるくらいでいいだろ。初めのころはそうしていたからな」


「懐かしいね。ところで、音無ちゃん、何か食べたいものある?蓮はなーんでも作れるから、なんでも頼んでいいんだよ」


全部僕任せじゃないか。


「じゃがいも料理をたくさん、お願い」


「そんなのでいいのか。僕としては大歓迎だけど」


「うん。色々なものを作ってくれたらうれしい」


「わかった」


「ところで、庭の銀色に光って見える線は何?」


「赤坂が作った有線トラップ型ごみ箱だ。しばらくベランダを見てたらどういう用途で使われているかわかるぞ」


「ダイヤモンドでも豆腐のように切断するから触らないほうがいいと思うよ」


「なにそれ怖い」


そんな話をしているとちょうど結構大きい金属片が落ちてきた。有線トラップによってバラバラにされ、トラップの下が開きバラバラになった金属片がさらにどこかに消えていった。


「いつ見ても壮大な光景だよねー」


「少し私の生きている世界と違いすぎて理解が追い付かないんだけど」


「壮大なゴミ箱だと思ったらいいと思うぞ」


「壮大すぎるよね」


「まぁ、これが普通だからねー。しばらくしたらなれると思うよ。じゃあ、蓮出来たら教えてね」


そういって香川は階段で昇って行った。一方通行という意味ではエスカレーターの方が正しいのかもしれない。というか、作った意味は本当にあるのか?


「私、部屋を見てくる」


「そういえば荷物は大丈夫なのか?どこにも見えないが」


「明日の朝に着くらしい」


「寝床はどうするんだ?」


「・・・考えてなかった。どうしよう」


「予備の布団ならあるが」


「本当?なら、それを貸してもらおうかな」


「あとで出しておくから部屋を決めたら教えてくれ」


「分かった」


そういって音無も上の階に行ってしまった。早速、準備していくか。



「音無ちゃん、寮へようこそー」


「ありがとう」


「蓮。なぜ今日はジャガイモ使った料理しかないんだ?」


「音無の要望だ」


「なるほど」


「えーと、ごめん。誰?」


「自己紹介がまだだったな。俺は赤坂寸」


「あー、有線トラップ型ごみ箱の人か」


ひどいな。間違ってはいないけど。そして、音無の目線がもう一人の女の子に向く。


「・・・・・・・・・」


おい、なんか喋れよ。


「えっと、白石百合、です。小説、かいてます。えっと、他には、えっと」


「しばらくしたら普通程度には話してくれる、はずだ」


「私も自己紹介したほうがいい?」


「一応したほうがいいんじゃないか」


「音無奏花です。作曲とジャガイモが好きです。よろしくお願いします」


「奏花ちゃんって呼んでいい?私も好きな風に呼んでくれていいから」


「もちろん」


さすがは香川だ。コミュニケーション能力が段違いだ。


「そういえば、音無はどの部屋にしたんだ?」


「204にした。まだ何もないけど」


「私の近くだねー。布団もないなら一緒に寝る?」


「寝たい、と言いたいところだけど、遠藤君に布団を用意してもらっているから」


「まだ出していないから、間に合うぞ」


「なら、香川さんと寝る」


「今夜はパジャマパーティだー」


こういう時の香川は凄く元気だからな。今日、静かになるのは何時ごろになるのだろうか。

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