第7話 


 そうして姪っ子の危機を間一髪救うことに成功した俺は、魔王討伐の激戦以上の疲れにドッと脱力すると、安堵の息を吐きだしていた。


『ふぅ、ほんっと危ないところだった』


 あと一歩間に合わなかったら、取り返しのつかないことにことになっていたに違いない。

 最初から最後までドキドキしたが、ひよりに大した怪我がなくて本当に良かった。

 だけど、それは俺自身の感想というだけで、


「え、なんで今、メガネからビームが。あのオークジェネラルはどうなったの」


 朦朧とした意識が回復したのか。

 突然の出来事にわかりやすく狼狽えだすひよりが見えた。


 まぁ、いきなりメガネが光り出したら誰だって驚くよな普通。

 しかもダンジョンは俺のフォトンブラスターのおかげでめちゃくちゃだし。


『さぁてこの状況をどう説明したもんかな』


 状況が状況だし、地面に文字でも書いて、正直に辰見幸太郎だって告白しようかな?


 だけど俺、もう死んでるんだよなぁ。

 いまさら『異世界から転生しましたイエーイ(笑)』とか言っても気味悪がられるだけだろうし、これ最悪、ダンジョンに置き去りにされるパターンじゃねぇ?


『かといって初めましてボクわるい眼鏡じゃないよ、つっても信じてもらえないだろうし』


 ダメだ。どの道、気味悪がられて捨てられる未来しかない。

 そうしてどうしたもんかとぶつぶつつぶやいていると、突然驚いたように大きく目を見張るひよりが、マジマジと俺をのぞき込んだ。


「いまこのメガネから叔父さんの声が聞こえたような」


 なん、だと⁉

 幽霊でも探しているのか。きょろきょろと不思議そうに首を傾げあたりを見渡すひより。


『ひより! 俺だ! 辰見幸太郎だ!』

「きゃ――⁉」


 まさか返事が返ってくるとは思わなかったのか。

 驚いて俺を取り落とす。

 そして意を決したようにもう一度、俺に話しかければ、


「えっと、こんなこと聞くのはおかしいかもしれないけど、もしかして、叔父さんが助けてくれたの?」

『――ひより! やっぱり俺の声が聞こえているだな⁉』

「やっぱり叔父さんだ! 叔父さんなんだよね⁉」


 声高に返事を返せば、興奮気味な声が返ってきた。


 よかったー。俺の声が聞こえるようになったらしい。

 まるで電話の向こう側に話しかけるように顔を近づけてくるひより。

 いろいろ言いたいことはあるけど、とりあえず――


『5年ぶりだなひより。メガネの似合いそうな子に育って嬉しいよ』

「その冗談、やっぱり幸太郎叔父さんだ」


 そういってすすり泣くように目尻に涙を浮かべる姪っ子を、俺はあらん限りの魔法の粋を惜しみなく使って『風の身体』を作り出すと、姪っ子の5年分の成長を確かめるように優しく抱きしめるのだった。

 

――――

 ようやくヒロインと合流できた 

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


 今回は短めですがここまで。


 次回、メガネ視点で事の顛末を送りします!

 最高に熱い展開にするつもりなので、楽しんでいただけたら幸いです!


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