第6話
話はとんでもない速度で王へと渡った。魔暴走事件の翌日、男は早速王宮に呼び出され、世渡り人としての丁重な扱いではなくほぼ罪人というのが正しい扱いを受け服装も普通の平民の服よりも粗末な服を着せられていた。
男は手を後ろで縛られ、王宮第二騎士団の者たちによって包囲されていた。そして王の許可が下りないと喋ることができない術式をかけられており声を発することもできなかった。
「レオンよ。我が国最高の王宮導士団の団員を激昂させただけではなく、副団長ロウディ・レウィンに暴行したというのは誠か?口を開くことを許す。真実を告げよ。」
「……団員の方は俺がこの国のことをよく理解してなくて神経を逆撫でしてしまったことが原因です。その点に関しては謝罪します。」
「では、ロウディ・レウィンの件に関しては謝罪しないと?」
「先に殴ってきたのは奴の方です!俺はただ正当防衛をしただけで」
そこまで言うと静かに黙って聞いていた王妃がそっと手を上げ、王に発言の許可を求めた。
「……王妃、発言を許す。」
「ありがとうございます。」
その時、王妃から発せられた声を聴いて男は勢いよく顔を上げた。この声を男は知っている。なぜならば昨日ずっと聞いていた声を忘れるわけがなかったからだ。
顔を見てしまえば男は頭を鈍器で殴られたような衝撃に襲われた。
王妃と呼ばれてそこにいたのは王宮魔法士団団長、リティス・アルティその人が自分の目の前に立っていたのだ。
「な……なんでリティさんがそこに……!」
「レオンの発言を禁止する。王妃、遮ってしまったが発言を。」
「はい。その者が私の部下であるロウディ・レウィンを暴行した件につきまして、男の話は虚偽であることをご報告いたします。」
リティスは淡々とあの時の現場の状況を語り始めた。ロウディは男に対し危険性を伝えたリティスの言葉を無視するな、という意を込めて暴力をふるってしまったこと。ロウディは魔族であるため魔暴走の恐ろしさは身に染みてわかっているため、男に聞く耳はないと判断し物理攻撃を行ってしまったこと、そして男はその真意に気づかずに魔力を込めてまでロウディを殴ったことを伝えた。
それを聞くと王は盛大な溜息をつき、男に厳しい目を向けた。そこには男が初めて王に謁見したときの穏やかな感じはどこにもなく、ただ大罪人を見つめる目だった。
「我が国に世渡り人が現れたと思ったらこんなにも愚かなものだったとはな……王宮第二騎士団よ、この者を捕えよ!城の地下牢にて拘束し仔細は追って報告しよう」
騎士団が男を捕えようとした瞬間、男は魔力を体外に排出し騎士団の兵士たちが壁に吹き飛ばされた。その場にいる者全員が何が起こっているのか分からない中、男は手の拘束を外し、声を封じる魔術も跳ねのけた。
「ふざけるんじゃねえ……俺は神から力を与えられたんだ。最強なんだよ俺は……なのに、なんでこんな扱いをされないといけない。」
男は怒りを滲ませながら周囲に聞こえるようにハッキリと言った。しかし、王は至って冷静に男に問いかけた。
「レオンよ。お主に数日間この王国について勉強させる数日間を設けただろう。その間お主は何をしておったのだ?」
「あ?普通に一日中王宮内を散歩してたが?」
そう、男はこの国のことを知るために数日城に滞在していたのだが、前世からもっぱら勉強の出来ない男は城内を歩くことを誰にも知らせずに我が物顔で闊歩していたのだった。
ちなみにだが時々、クラレスとネイトが国のことを教える講義のような時間もあったのだが、その時も男は魔力で自分そっくりな魔力人形を造り出して上手いこと逃げ出していたのだ。
「……道理でこの国について無知なはずだ。お主に力を与えた神というのはどんな姿をしていた。」
「どんな姿って、ただの爺さんだったぜ?願いを二つまで叶えてやるっていうから一つだけ頼んであとはまた死んで転生するときにとってあるんだ」
それを聞くと王はまた溜息をこぼした。男が理解できずにその場で呆気に取られているその間にリティスが男を拘束した。そして、そのまま地下牢に転移し男を牢屋の中に閉じ込めた。
リティスは牢屋の鍵を閉めると男に対し冷たい視線を送った。
しかし、男はそんな視線にも屈しずにリティスに対して気になっていたことを問いかけた。
「……なあ、教えてくれよ。なんであんたが王妃なんだ?苗字が違うだろ。」
「この国では夫婦別姓が認められていますので。」
「昨日、あのあとすぐに王に報告したみたいだけど服はどうしたんだ?あのときの服大分汚れてて、とてもじゃないけど王に会える格好じゃなかっただろ。」
「忘れたんですか?この城にいるメイドや執事はとてつもない速さで服を仕立て上げます。それが既存の物であるのであればそれよりも時間がかからないのは明白でしょう。」
そこまで言うとリティスは
「今度はこちらが質問させていただく番です。」
と、男に問いかけた。
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