第9話 カプチーノ

イケメンたちの中でも、一際色黒。

彫りの深い目鼻立ち、大きな瞳から放たれる人懐こい笑顔のカプチーノ。


泡立つミルクに魔法をかけるように優しく操り、目の前で描いた幾何学模様を一瞬で花へと変えてしまうテクニックには、誰もが惹かれてしまう。

甘いドルチェにも一滴の媚薬となり、甘党ティラミスは忽ち大人の味になる。

石畳の街の片隅のバールには、落ち着いたグリーンのテーブルクロスがよく似合う。

真紅の薔薇を飾ったら、アモーレは至福の微笑みを返してくれるだろうか。

ベンヴェヌータ、ようこそ。


と、どこからか声が。

マンマミーア、また模様がわからなくなってしまったさぁ。


カプチーノは一夜にしてならず、

っていうか、アンタ不器用であるね。

何度やっても花というより、カップの上にマカロンが乗ってるみたいであるさ。

え、味。味は美味しいけど、なんで笑うわけ?

鏡を見ろって。

あげっ、口の周りが泡だらけになってしまったさあ。

もう一度言うけど、普通のブレンドでいいと思うよ。


いやいやいや、

アモーレのために、オレはちばるよお。


あ、ほら、泡だてすぎ。

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