不妊に悩む友人S氏。検査をしてみたら精子の数が半端なかった話①

「なぁ、大熊猫パンダ。相談があるんやけど……」


 休憩中に相談を持ち掛けてきたのは職場の同期であるSだった。「おぉ、どないしたん?」と大熊猫パンダが聞くと、「実はさ……」とSが深刻そうな表情で向かい側の席に座る。


「嫁が子供欲しい言うてんねんけどな。いつまでたってもできへんから、今度嫁と一緒に検査しに行くねん」


 どんよりとした雰囲気を醸し出すSを見て、大熊猫パンダは目を丸くした。


「検査ぁ? 別に検査せんでもそのうちできるやろ。それにさ、お前みたいな良い身体してるラガーマンが種ないわけないやん」


 大熊猫パンダはケラケラと笑う。Sは大熊猫パンダと同様に身長が180以上あり、身体もがっしりとした体格をしている。Sが性欲旺盛なのも知っているから、種が全くないのは想像できなかった。


「俺もそうやと思うんやけど、嫁が検査キット見る度に落ち込むねん。それ見てるのも辛いから、俺から一緒に病院行ってみよかって言うたんや」


 Sは自分の発言を後悔しているというように両手で顔を覆う。優しいSの事だ。結果が分かれば、何かしらの対処ができると思ったのだろう。


「そっか。早く原因が分かったらええな」


 大熊猫パンダはSにエールを送ることしかできず、残酷な結果にならない事を祈るしかなかった。


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