不妊に悩む友人S氏。検査をしてみたら精子の数が半端なかった話②

大熊猫パンダ、えらい事が判明したわ!」


 Sに相談を受けてから、約二週間後の昼休み。大熊猫パンダは会社の休憩室で突っ伏して寝ていた所を起こされた。


「なんやねん、急に大きな声出して……」


 大熊猫パンダが大きな欠伸をすると、「この前、相談した検査結果が分かったんや!」とSが興奮気味に隣の椅子に座ってきた。


「俺の精子の数がヤバかったてん!」

「あぁ……不妊治療がどうとかって言ってたやつ?」


 ようやく相談の内容を思い出した大熊猫パンダは気怠そうに身体を起こした。寝起きだからか少し口の中が粘ついている気がしたので、机の端に置いていたお茶をゴクゴクと飲む。


「そうや!! 俺の精子な……なんと、世田谷区民と同じ数の精子がおったんや!!」


 それを聞いた瞬間、休憩室にいた社員全員が何かしらのアクションを起こした。一人は驚いて目を丸くさせている人、食べていた唐揚げを弁当に戻してゲホゲホと咽せている人が沢山いた。


 勿論、大熊猫パンダも漏れなく口に含んでいたお茶が気管に入り、顔を真っ赤にしながら盛大に咽せた。


「ゲホゲホッ、おま……お前、休憩室で何言うてんねん!! 今すぐ世田谷区民の皆さんに謝れ!!」


 大熊猫パンダがもっともな事を言うと、「え〜、だって事実やもん」とSは小さい子供が拗ねるように唇を尖らせた。


「話の続きやねんけど、奥さんは何も異常が見られへんかったから、タイミングが合わんかっただけでしょうって言われたわ」

「あぁ……それは良かった(?)やん」

「おう! やから奥さんには気を張らずに、したい時にする事にしよ〜って言うたわ!」


 シーンとした休憩室でスッキリした顔で笑うS。

周りからの冷ややかな目がチクチクと痛かったが、この三ヶ月後、無事に赤ちゃんができたという報告を貰い、約一年後には一児の父親になったとさ。


 めでたし、めでたし。

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