第3話 女の子が好き

 夜とは別世界になったかのように静かな街を一人歩いていく。楽しめなかったものの、女の子との行為はなんとかこなし、朝まで過ごし、入り口で分かれた。何かしら感づいている可能性はあるが、一夜の関係だから気にしないでくれるだろう。

 自分に都合のいい想像をしながら、白日の下を歩いていく。暗い景色に慣れた目には、些か光が強すぎる。目を細めると、昨日の女の子に似たかつての恋人が思い出された。

 当時は大学生だった。高校時代の彼女とは大学で遠距離になったら疎遠になり、自然と消滅していた。というより、いつしか声をかけるのを諦めてしまったのだろう。そうすれば傷つかなくて済む、なんて馬鹿げた話だ。

 彼女を引きずっている時に、その恋人とは出会った。恋人は、彼女と雰囲気が似ていた。

 私は女の子だけ好きになる。でも、レズビアンではない。レズビアンとは、女性を好きになる女性。ならば、違うのだ。だって私は女性ではない。けれど男性でもない。ならば女の子だけ好きになるのを、どう表現したらいいのだろう。ずっとわからない。でも、当時はそれでいいと思っていた。


『触らないで! 気持ち悪い!』


 そう言われたときの光景は今でも夢に見る。付き合うようになって、体も重ねて、関係は順調だった。そんなときにふと性別の話になり、私の性を正直に伝えた。恋人は私が女性でなかったことに驚愕し、嫌悪し、それきり。

 相手がたまたまそういう人だったとか、合わなかっただけだとか、いくらでも理由は見つけられる。だけれど、以来、私は誰とも付き合っていない。

 本当の自分でいることが、苦しみを生むと知ってしまった。

 目元を擦り、うつむく。太陽が視界に入らないよう、足早に帰路に就いた。

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