第3話 再会。

『坂城桂さま

先日は驚かしてごめんなさい。最近高校のインターンで職業体験があるのですが、それをあの図書館でさせていただいていたのです。もしかしたら桂さんに会えるかなと思っていたのですが、本当に会えてとても嬉しく思いました。…』





 何度目の手紙を出した頃だっただろうか。

 坂城が図書館に行った時、カウンターの内側に小夜がいて、坂城はひどく驚いた。

 研修中のようなエプロンをつけ、明るい笑顔でぎこちない仕草で貸出手続きをしてくれた。

 本を手渡す時に目があって、何か照れ臭くてはにかんでしまって、それから微笑みあった。

 ああ、この子はこんな声をしていたんだっけ。

 手紙ではよくやりとりしていたけれど、久しぶりに聞く声に、そう思いながら本を借りて返った。


『…友達は、高校の近くのお店とかでインターンしていたのですが、私はどうしてもあの図書館で働いてみたくてお願いしてみたのでした。

 図書館員の仕事は思った以上に重労働でしたがたくさんの本を貸し出し返却するのはとても楽しく、やりがいのある仕事でした。


 そういえば先日、おすすめいただいた本、探したのですが近隣の図書館には蔵書がなく、絶版とのことで取り寄せも無理としょんぼりしています。とても面白そうだったのに。

本との出会いは本当に一期一会ですね。出会えた本を大切に読んでいきたいと思います。小夜』





 手紙を、その部分まで読んで、坂城は自室の書棚を眺めた。ここに、その本はある。状態も悪くない。

 じっと、見つめて考えた。


 手紙に、書いてみようか。

 抽斗からレターセットを取り出して、またしばし逡巡した。


『佐々木小夜さま

こんにちは。季節の変わり目になりましたがお元気にお過ごしでしょうか。

先日おすすめした本ですが、入手困難とのこと、がっかりさせてすいません。

もし、よろしければ、私の手元にある本をお貸ししましょうか。

図書館の近くの喫茶店などででも、お渡しできれば幸いと存じます。ご検討、よろしくお願いいたします。坂城』



『坂城桂さま

ありがとうございます!

ぜひ、お借りしたいです!!!

喫茶黒猫ですね、承知しました。

いつがよろしいですか。私は火曜か木曜の夕方か、日曜の午後でしたらいつでも大丈夫です。小夜』


『佐々木さま

では、今月末の火曜の午後はいかがでしょうか。学校が終わられてからかと思いますので、夕方4時くらいがよろしいですか。私は喫茶店で仕事をしておりますのでいつでも大丈夫です。坂城』


『坂城さま

はい! それでは28日火曜日の午後四時で、よろしくお願いします。』


約束の日が決定した。

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