第15話
俺はボコボコにしたスイレンを部屋の中に運ぶと椅子に縛り付けた。
「さて、とりあえず話は聞いてやろう」
「人間のくせにどこにこんな力が」
「俺は普通の人間では無い。さぁ、話せ」
俺はとりあえずさっきの食事について聞いた。
「誰が話すもんですかっ。むっふー」
スイレンの顔を掴んで笑顔を浮かべる。
「話す気がないと言うのなら殺して脳みそから直接聞くことになる。俺の【鑑定】スキルならその程度朝飯前だ」
顔を青ざめさせてた。
「混ぜたのは毒薬よ。レイナとその結婚相手を殺すため。人間と友好関係?そんなの真っ平御免だもの」
「なるほど。現魔王ちゃんの指示には従えない、と」
「そうよ」
「ふむ。なら殴って言うことを聞かせるしかないな」
一発殴ってやった。
グリ子が止めて来る。
「そ、それ以上殴ればたいへんな事になりますですよ。死んでしまいますです」
「大丈夫だ。こいつら魔族の生命力はゴキブリ並だ。1日放置しておけば回復するはずだ」
俺は基本的に魔族というのは嫌いだが、唯一尊敬している部分はある。
それは……。
いくら殴っていてもその辺で放置しておけば回復している事だ。
だから躊躇なく殴ることができる。
「あ、あの〜?」
顔から汗をダラダラ垂れ流しながら上目遣いしてくるスイレン。
「いくら傷が治ると言っても女の顔を殴って心は痛くなったりしないのですか?」
「痛くなるわけないよな。クソ魔族」
いつものようにニコッと笑いながらぶん殴ってやった。
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数時間ぶん殴ってやるとスイレンの様子が変わってきた。
「もっと!もっと殴ってくらしゃい♡」
「はぁ?」
こんな反応をするやつは初めてだな。
「他人の顔を殴るなんてきっと心が痛むよね?しかも殴っているのがこんなに美少女なんだし」
(まったく痛まないが)
「でも、あなたは心を鬼にして私を殴ってくれてる……それだけ私と真剣に向き合ってくれてるってことだよね?こんなに私のことを見てくれる人、初めて……♡」
(真剣に向き合っていないから殴ってるんだよ……?)
「私、やっと出会えた、」
「なにに出会えたんだ?」
「運命の人」
目をハートにしてそう言ってきたのでもう1発ぶん殴っておくことにした。
白目になってピクピク痙攣していたがこうやって呟いた。
「えへ、えへへへへ。今の感動的なシーンでも殴ってくれるなんて、私幸せぇ……」
ガクリ。
意識を失ったらしい。
「し、死んでないですよね?」
レイナが苦笑いしながら聞いてきた。
「明日になったらピンピンしてるよ。魔族ってそんなもんだし」
その後俺はレイナたちを連れて別の店に飯を食いに行くことにした。
ついでに、スイレンのために持ち帰りで飯を買って食わせてやると、あっさりと全部話した。
簡単に人間側の王様の近くに潜り込めた理由だけど……。
どうやら人間側に協力者がいて、それが例の騎士団長らしい。
ちなみにこいつはスイレンとは完全な協力関係にあるそうだ。
敵の敵は味方ってやつらしく一時的に手を組んでいるらしい。
で、裏路地で俺を襲わせたように指示を出したのはあの騎士団長グラディスという人間だそうだ。
明日さっそく詰めようと思う。
すべての問題は解決してから結婚だ。
そして、何が起きてもいいように俺の方も準備を整えておこう。
◇
翌朝。
ついに結婚式が始まることになった。
俺たちは指示されたホールまでやってきた。
既に結婚式の準備はできており関係者が集まっていた。
例の騎士団長に目を向けてみたが少し顔が歪んでいるようだった。
恐らくだが、やつの頭の中では俺は昨日の時点で死んでいるはずだったのだろう。
予想が狂ったのだからそんな反応をするのも無理は無い。
式場を見渡すといろんな人間がいた。
一番目を見張るのがやはり王族ってやつだろう。
一番綺麗な服を着て一番安全な場所にいる。
俺はとりあえず彼らに挨拶に行くことにした。
王族に近付くと例の騎士団長。
「止まれ。魔族。ここより先は聖域だ」
グラディスを注意したのは王女様っぽい人だった。
「やめなさいグラディス。人間の品位を下げるような行為は」
「で、ですが王女様。人間軍の決まり【無闇に王族に近付いてはならない】ということは魔族にも教え込むべきです」
グラディスは俺を見てこう言った。
「王族に触ったら即死刑という決まりがここにはある。注意しろ」
「言われなくても触る気は無い」
俺たちは無言で見合っていた。
そのとき、王女様が王様に聞いた。
「私が結婚しましょうか?友好の証というのであればここは人間の王族である私が結婚すべきだと思うのですが」
俺が考えてもいなかったことを口にしていた。
そのときレイナが言った。
「王女様。政略結婚というやつですよ。あなたは愛するお方と結婚してください」
「あら。レイナさん。私はこのお方がいいと思ったので切り出したのですよ」
「なっ……」
レイナが口をポカーンと開いた。
「王女様?ここは私にお任せを」
「素直に結婚したいと言えばいいのですよ?」
そう言われてレイナは顔を真っ赤にしていた。
シャーディと呼ばれた王女は王様に話をしていた。
「王様ー。ここでダブル結婚式にしましょうよ。友好の証というのであれば、私以上の適任はいないでしょう?」
その時だった。
ググググググ。
グラディスが槍を握る手に力がこもっていく。
そして、目を見開いた。
「クソ魔族が……気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い」
俺を見る目にも力がこもっていく。
「なぜ、誇り高き人間である我々がこんな気持ち悪い種族と仲良くせねばならんのだ」
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