第14話

王城の中に入ると俺は王の間と呼ばれる場所まで通された。


赤いカーペットが敷かれていてその先には玉座があって、そこに白い老人が座っている。


(あれが王様か)


王様が口を開いた。


「よくぞ来てくれましたね、タクトさん。結婚式は明日を予定しております。本日はよく休んでください」

「はい」


俺は次の言葉を待っていたのだが……


「今日のところはもういいですよ」


(もっと長々と話を聞かされると思っていたのだが)


あっさりと話が終わった。


俺はレイナと一緒に王の間を出ることになったのだがその時だった。


スンスン。


グリ子が鼻をひくひくさせてた。


「どうかしたのか?」


「魔王軍の者の匂いがしますです」


俺は王様に目をやった。


「まさかとは思いますが、王城の中にいたりしませんよね?」


「いないはずですが」


「それらしい奴を見かけたら教えて欲しい。こちらで捕獲しよう」


俺がそう言った瞬間だった。


「はっ」


鼻で笑うような声が王様の近くから聞こえた。


王様の横に立っていた人物が口を開いたようだった。


「お前らのにおいではないのか?魔王軍の者たちよ」


「そんなことはないです。仲間の匂いとそれ以外の匂いの違いくらいは分かりますですよ」


「どうだかなぁ」


嫌味ったらしく口にしている男。


王様は言った。


「やめんか、グラディス騎士団長よ」


「王様。こんなやつら本当に信用できるんですか?」


「できると思ったから招いた」


そう言われると騎士団長は黙った。


(ま、疑われるのも仕方ないよな)


だが、伝えるべきことは伝えておくことにしよう。


「王様。実はここまでに1度襲われているんだ。人間に」


「それは、本当ですか?」


「どうやら俺たちの結婚に反対している勢力がいるのは確認できたが、そちらについて心当たりは?」


グラディスが口を開いた。


「とうぜんだろう。貴様ら魔族と我々人間の結婚なんて望ましいものは無いのだからな」


はははって、笑っていた。


多少引っかかるような人間だったが。


「行こう。ふたりとも」


俺はレイナとグリ子を連れてとりあえずこの場を後にすることにした。



俺は客室へと案内された。


王様から明日に向けて療養せよ、とのお達しがあったからだ。


ちなみに、レイナからの要望で今は執事の姿をしている。


人間軍と魔王軍の執事では服装が少し違うらしくて、人間軍のものを使用しているのだが……。


しかし、気になることがある。


(そういえば、夜はどうすればいいんだろうな)


夕食のことは聞いていない。


後で招待されたりするんだろうか?


そう思い始めた時だった。


コンコン。


部屋の扉がノックされた。


「お客様、お食事をお持ちしました」


との声。


女の声だった。


俺が扉を開けるとそこにはメイド服の女。


茶色くて長い髪で大人っぽい雰囲気のメイドだった。


(なんだ、これ香水か?)


かすかに変な匂いがした。


メイドがこんなもの使うだろうか?


と、疑問に思ったのだが、向こうも首を傾げていた。


「おや、レイナ様の執事の方、ですか?まぁいいや。ではお食事の方預けますので渡しておいてくださいね」


俺は食事を受け取った。


「それでは、さよ〜なら」


俺の前から立ち去ろうとするメイド。


その姿は俺の視界から早く消えたがっているようにも見えた。


俺は怪訝に思いながら【鑑定】スキルを出された料理に使う。


もちろん、魔王ちゃんのために使えるように天界で習得したスキルだ。


その結果……


俺の覚えた違和感は確信に変わることになった。


「おい」


俺は手刀をメイドに向かって振り下ろした。


「?!」


ドーーーーーーーン!!!


俺の手刀を自分の腕で受けたメイド。


普通は鳴らない音が鳴ったが、今のでこのメイドがただものでは無いことが分かった。


「どうしましたか?!」


「なになに?!なんの音?!」


中からレイナたちの声が聞こえた。


俺はメイドに聞くことにした。


「なにを混ぜた?」


そう聞くとメイドが本性を表した。


「や〜ね〜。怖いか・お♡」


「今の一撃を受け止められるとは、一般人ではないようだ、だれだ?」


そう聞くとクスクス笑い始めた。


「知りたい?私の事」


ペロリ。


舌で唇を舐めていた。


「教えてあげるわ、魔王軍幹部のスイレン」


ピクリ。


「驚いた?驚いたわよね?魔王軍の幹部がここにいるものね。でも、安心なさい。ご主人もろともすぐに楽にしてあげるわ♡」


俺はため息を吐いて笑ってやった。


「残念だったなスイレン」


「なにが?」


「ここにいたのが俺だったってことだよ」


とりあえず、話だけは聞いてやることにしよう。


もちろんそのあとはぶん殴る。

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