第7話 世界征服計画を進めるよ、魔王ちゃん
翌日。
俺は会議室に乗り込んだ。
机に突っ伏して寝ていたアリシアが起きた。
「おはようタクト」
俺は周りを見た。
ゴクアークがオッサムを羽交い締めしながら床で寝ていた。
他もまだ起きてこない様子である。
さっそく、本題に入ろう。
「アリシア、勇者の連絡先知ってるんじゃないのか?」
「知ってるよ」
「連絡、取れないか?」
「なんのために?」
「もちろん、人間にケーキを食わせるためだ。人間に食わせるためには人間の協力が必要だ。それを勇者に頼む」
「あの勇者寝坊助だからなぁ。起きてるかな?」
「今すぐ返事が欲しいわけじゃない、とりあえず連絡を取っておいて欲しいだけだ」
そう言うととりあえず作業に取り掛かってくれることになった。
俺はそれからベータが寝ている机の傍によると、顔の横に置いてあった紙を取った。
「ケーキのレシピはこれか」
俺は紙をもぎ取るとそのまま会議室を出ていく。
そして、そのままキッチンの方に向かった。
キッチンの中では沢山のシェフが並んでいた。
俺はそいつらに向かって声をかけた。
「このレシピでケーキを作ってくれないか?」
そのとき、聞きなれた声が聞こえてきた。
「やっとケーキ作れるっ!わーい!」
魔王ちゃんがすでにキッチンの中でスタンバイしていた。
「魔王ちゃん、とびきり美味いのを頼むよ。人間と魔王軍との友好の証だからね」
「うん!タクト兄様にもあとで食べさせてあげるからね!」
俺はシェフたちに魔王様の面倒見を任せて会議室に戻る。
会議室の中に入るとアリシアに向かって俺は言った。
「どうだ?勇者から返事はきたか?」
聞いてみるとアリシアは右手の親指を立てていた。
つまり、返事が来たらしい。
「今から会えるらしいよ」
「話が早い勇者で助かるな。とりあえず会いに行こうか」
◇
俺たちは人間の暮らす領域まで移動を始めた。
勇者は今魔王領に一番近いラスダ村と呼ばれる場所にいるらしい。
さいわい移動時間はそこまでかからない。
というより魔王軍幹部のアリシアの瞬間移動によって、一瞬で到達することができた。
すごいよな。
よく漫画やアニメで敵の幹部が使うあれだよ、あれ。
俺たちの目の前に勇者が立っていた。
「おはよう、アリシア」
勇者はアリシアに声をかけていたが。
「ふん。久しぶりだな勇者。会うのは2日ぶりくらいか?くたばっていないようで安心だよ。お前を倒すのは私だ。だから、それまでは他の誰にも倒されるんじゃないぞ」
勇者相手にはなぜか尊大な態度を取っていた。
好きな子には素直になれないタイプかよ、お前は。
そんなこと思ってたら勇者が俺を見た。
「前の人か」
「あぁ、名前はタクトと言う」
そう言うと勇者は青い髪を靡かせて言った。
「勇者のフローラ。よろしくね、タクト」
スっ。
手を差し出してきた。
どうやら挨拶ということらしいので俺はその手を握った。
「それで、なんの用?あんまり魔王軍の人と会ってるとこ見られたくないんだけどね、現状」
俺はフローラに今までの事を話すことにした。
パチパチ。
驚いたのかまばたきしていただけのフローラ。
「えーっと、話が分からないけど、とりあえず敵意は完全に無いってことでいいの?」
「そうだ。新生魔王軍は『ラブアンドピース』をスローガンにしている」
笑顔を作るフローラ。
「うん、とてもいいと思う。争いは無益なだけだよ」
「そこで、魔王ちゃんは人間に友好の証としてケーキをプレゼントしたいようだが、間を取り持ってくれないか、と思ってな」
「お易い御用さ」
そう答えたフローラだったけど、首を傾げた。
「だが、人間にケーキを送ると言っても誰に送るつもり?」
「できるだけたくさんの人と言っていたな。とりあえずはこのラスダの村でかなり配れたらいいと思う」
「うん、わかった。なら魔王軍からの贈り物ってことは公表して希望者を募ってみようと思うよ、だけどさ」
俺はフローラの言いたいことをなんとなく理解した。
「もっとちゃんとした友好関係を築きたいのであれば人間の責任者にも届けないとダメ、と言いたいんだろう?」
「そう」
「まぁ、それは後で食べてもらえればいいと思ってるよ」
「そうだね、いきなりはちょっと難しいだろうからね。それで、そのケーキはいつ持ってくる?」
細かい話は聞いていないが、ケーキなんて1日あれば出来るんじゃないかな?
「最短で明日持ってこれるはずだよ」
「わかった。明日までに希望者を募っておくよ」
それからフローラは俺の目を見てきた。
「あ、そうそう。タクトくん」
「なに?」
「連絡先交換しない?いちおう、ね」
「まぁいいよ」
そうして連絡先を交換した俺たち。
「じゃあ、また会えるのを楽しみにしてるよタクトくん。ちゅっ」
投げキッスして村の方に戻っていった。
◇
魔王城に戻ってくると俺は魔王ちゃんに聞いた。
「魔王ちゃん、ケーキはいつ用意出来そう?明日持っていくかもしれないけど」
「え?明日?」
キョトンとする魔王ちゃん。
「無理そう?」
「無理だよぉ。ラスダ村の人口1000人くらいいるんだって。だからケーキ1000個必要だもん。3日くらいかかるかも」
「まさか全員に配るつもり?」
「うん!もらえない人いるとかわいそうだもん!みんなにあげるよ」
ニコニコの笑顔を浮かべる魔王ちゃん。
この笑顔を見ているとできることはやってあげたくなるな。
「任せてよ、魔王ちゃん。それも含めてケーキ配り作戦の計画を進めるよ」
俺は会議室へと戻って行った。
その道中で勇者に連絡をすることにした。
俺:明日はケーキを持っていけなくなった。予定を調整したいんだが
勇者:あー……ごめんね。タクト
(ん?なにか謝るようなことあっただろうか?)
俺がそう思っていたらフローラから返事が来た。
勇者:今人間と魔王軍の仲悪いよね?それは分かってるよね?それでさ、ちょっと問題が起きて……それでも明日は予定通り村に来てくれないかな?
俺:問題って?
勇者:過激派の反魔王組織の人が村に来てるんだよね。
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