第3話 オカマを連れてきたよ、魔王ちゃん


 俺は魔王城の中にあるひとつの部屋にやって来た。


 扉をノックした。


「おい、開けろオカーマ」

「その声、タクトちゃんだったかしら?うふっ」


 中から野太い声が聞こえてきた。


「話がある。開けろ」

「うふっ♡タクトちゃんは好みじゃないから、だ、め♡」

「口答えするな」


 ドカッ。


 俺は扉を蹴り破った。


「や〜ん♡強引♡」


 中にいたのはピンク髪の坊主の筋肉ムキムキのおっさん。


 タンクトップだ。



【オカーマ】


・正式な名称は不明。オカーマと呼ばれている男。普段はナヨナヨしているが、戦闘時は「オカマ舐めんじゃないわよ!」の一声で全てを解決する、魔王軍でも1,2を争うくらい実は強いやつ。ちなみに体格は身長2メートルで体重100キロのガチガチ体型だ。



 オカーマは部屋の中で身支度を整えているようだった。


 わざわざカバンやキャリーバッグまで用意している。


「一応聞いてやる。何をしている?今すぐに会議に参加しろ」

「会議には参加しないわ〜ん」

「なぜだ?」


 オカーマはこう言った。


「乙女のHI・MI・TU♡よ、それは」

「まともに話す気がないと、捉えていいか?」


 俺は近くにあったダンベルを手に持つと力を込めて、粉砕した。


 ゴトッ。


 破片が床に散らばる。


「10秒くれてやる。考えを改めることだな」


 オカーマは顔を青ざめさせた。


「やだやだ、そんな怖い顔しないでよ、タクトちゃん、ふぅ〜」


 息を吐くとベッドに座るオカーマ。


「話すわよ。それはね」


 ポッと頬を染めるオカーマ。


「あたしは先代の魔王様に恋をしていたからよ♪♪」

「それと会議に参加しないこと、なんの関係がある?」

「今の魔王ちゃんには全くそそられないからよぉ。あの子女の子じゃない?あたしの好みは強い男。先代は強かったわ〜ん。だから従ってたけど、引退するってなると、もうここに残る意味もないわ〜ん」


 そこでウィンクしてきたオカーマ。


「もともとあたしも争いは好きなタ・チじゃないしね?」

「そうか。お前が会議に参加しないから魔王ちゃんは泣いていたけど」

「女の涙には興味ないわ〜ん。あたしが興味あるのは強いオ・ト・コ♡。今の魔王ちゃんには興味ないし、泣き叫ぼうと知ったことじゃないわよ、おほほほほ」


 そう言うと俺に目を向けてくるオカーマ。


「それとも、あたしに居残って欲しいのなら、あなたが次の意中の男になってくれるかしら?タクトちゃん?」

「まぁ、いいだろう」


 そう言ってみたがオカーマは笑った。


「なんてね、冗談よ。あたしもともと争いは苦手なのよ。魔王軍のバチバチの雰囲気もちょ〜にがて〜なの〜」


 そう言うとカバンとキャリーバッグを持って俺の横を通った。


「魔王様にはよろしく言っててね。じゃあ、ね。あたしは自分磨きの旅に出るわね。んふっ」


「どこいくんだよ、おっさん」


 ピクリ。


「あ゛あ゛ん゛?」


 振り返って俺を見てきたオカーマ。


 どうやらクリティカルヒットだったらしい。


「もう一度聞いてあげるわタクトちゃん。今なんて言ったの?」


 ビキビキビキ。


 オカーマの顔の血管が浮かび上がっている。

 とんでもない顔で俺を見下ろしてくる。


 俺が170センチくらいで向こうは2メートルを超える大男。

 その体格差から圧を感じるが……。


 俺は口元を歪めて答えてやった。


「どこに行くんだよ、おっさん。お前の居場所はここだろう?」

「オカマ舐めんじゃないわよ!!!小僧!!!キェェェェェ!!!」


 バキッ!!!!


 キャリーバッグの持ち手が壊れた。

 肥大化した腕がブレスレットを破壊した。


 俺をぶん殴ろうとしてくるオカーマ。


 ブン!


 俺はその拳を避けたが


(すごい風圧だな。風圧で部屋の中が台風を通ったようになっている)


「二度とその生意気でふざけた口開けないようにしてやるぞ!クソガキィィィィィィィ!!!(デスボイス)」


 ブン!


 振りかぶってきたその拳に向かって俺は蹴りを放った。


 バキ!

 バキバキバキキキキキキ!!!!


 オカーマの拳が一方的に砕ける。


「え?」


 驚愕しているオカーマ。


「おまえ、気絶はしやすい方か?」

「この子ヤバい♂」


 オカーマの腕に鳥肌が立っていた。


「今からお前が気絶するまで​顔面を……」


 俺が、次の言葉を吐き出すまでの刹那。


 オカーマは自分の心境を説明するようなセリフを早口で口から吐き出した。


「このとき、あたしはビビッ!っと思い知らされたのよ、魔王軍には先代魔王様よりイカすオ・ト・コ・♂がいるということを、うふっ♡」


 俺は本命の言葉を吐き出した。


「───────​───────​殴る」


「イッ♂ちゃぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」





 俺はオカーマを引きずって会議室へとやってきた。


 ザワザワ。


「ま、まさか。オカーマまでやりやがったのか?しかもブレスレットが壊れてるということは完全体のオカーマだぞ?俺でも勝てなかったと言うのに……」


 オッサムが俺を見ていた。


「なんだ、その口調は。俺はお前の友達ではないぞ」

「し、失礼しました、タクト様」


 オカーマを席に座らせた。


 こいつは基本は無害なヤツだと思う。


 なので、特に拘束は必要ないだろう。


 魔王ちゃんが喜んでた。


「オカーマさんまで来てくれたんですね!どんどん人が増えます!」


 ポカポカの笑顔を浮かべていたので俺もポカポカの笑顔を浮かべた。


 その時だった。


 オカーマが目を覚ました。


「あれ?あたし……?」


 俺の顔を見てきた。


「全部思い出したわタクトちゃん」


 ボソッと呟いた。


「あなたは強いわ♡これからはあなたに従うわ♡」

「とりあえず魔王ちゃんの言うことを聞いてくれ」

「分かったわ♡」


 そんな会話をしていた時だった。


 アリシアが立ち上がり口を開いた。


「魔王ちゃん。ところでなぜ、我々を呼び出したのですか?これはなんの会議なのでしょうか?」


 魔王ちゃんは俺たちの顔を見た。

 そして、口を開いた。


「もう4人集まってくれたのでお話を進めましょうか」


 天使のような笑顔を浮かべていた。

 俺はいちおう聞いておくことにした。


「魔王ちゃん、まだ4人しか集まっていない、あと9人幹部が欠けているが、集めなくていいの?俺に任せてくれたらすぐに殴……連れてこれるけど」


「全員集まってから話したいけど、今集まってくれてる人達に悪いよ。みんな集まるまで待たせちゃうことになるし」


 ということらしい、とりあえず話を進めることにするようだ。


 俺は執事としての仕事を行うことにした。


「今から魔王ちゃんがお話になる。清聴せよ」


 そのあと。


 魔王ちゃんは予想していなかった言葉を発した。


「人間さんたちのためにケーキを作りましょう」


 あまりにも予想外の言葉に俺たちは顔を見合せた。


 なんで、魔王軍の俺たちがケーキ作り?控え目に言って意味が分からない。

 どこの世界にケーキを作る魔王軍がいるんだ。


 オッサムが苦言を呈する。


「魔王ちゃん。意味が分かりませぬぞ。なぜケーキなのですか?ふざけるのもいいかげんに……」


 俺はオッサムの頭を掴んだ。


「魔王 "様" な。老い先短いのに、もっと短くされたいか?そんなに生き急ぐ必要もないと思うが」

「俺にだけ当たり強くないですか?タクト様」

「気のせいだ」


 そう答えてから俺は魔王ちゃんに聞いた。


「魔王ちゃん?なんでケーキ作り?」

「世界征服のためです」

「世界征服にケーキがなんで必要?」


「人間さんたちに魔王軍には敵意はないと伝えるのです。ケーキをプレゼントすれば敵意がないことが伝わるはず、ケーキでみんな幸せになって『ラブアンドピース』♡そして、争いはなくなるのです。平和な世界征服なのです」


「魔王ちゃんはケーキ作れるの?」

「無理です。アリシアさん?」


 アリシアは首を横に振りオカーマに視線をやった。


「あたしも無理ね。でも心当たりがあるわ、ほら、データキャラの幹部がいたじゃない?ベータって子。あの子に当たるといいと思うわ。きっとパーフェクトなレシピでケーキを作れるはずよ♡」


(幹部はどうせ全員連れてくる予定だし、まぁ、ちょうどいいか)




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3(+死体1)/13



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