第2話 

「は──ッ!!」


 気づけば、俺は玄関の中にいた。


 懐かしい匂い。

 懐かしい景色。


 二年ぶりの実家に感動した。


 戻ってきたんだ……。


 実感が湧き出し、身体中に鳥肌が立っていく。


「あっ、そうだ。本当にステータスはそのまんまなんだよな……」


 試しに【ファイア】という炎を出す魔法を使ってみることにした。


「【ファイア】」


 右人差し指の先から炎が現れる。


 ふう、と息を吹きかけてその炎を消した。


「よし、本当にステータスはそのままみたいだな」


 てことは……。


「うおおお!! 俺の人生勝ち組じゃねェか!!」


 肉体面でも何よりも今の俺には魔法が使える。

 もう怖いものなどない。


「ふはははッ、この力で謳歌してやる!」


 なんてことを期待していたのだが、久しぶりのテレビをと付けた時のことだった。


 洞窟の中、無数のスケルトンを戦う一人の青年。


 剣を振り、無数のスケルトンを蹴散らしている様子が映されていた。


 映画だろうか。

 だろうか、というより映画以外の考え方はないだろう。


 右上のテロップにはこう書かれていた。


『スケルトンタイムアタック』


 と。


 さらに、左上のテロップには【生放送】と書かれていた。


 ふん、俺なら一振りでこのくらい量ぶっ殺せるなあ。


 少しやってみたい気持ちになった。


『田中拓真選手、120秒で11体!!』


 どうやら、二分間で何体のスケルトンを倒せるのかの競技のようだ。


『続いて、黒宮蓮也選手……』


 実況の声と共に、俺はぽかんと口を開けた。


「は!?」


 黒宮蓮也という名前に聞き覚えがあったからだ。


 画面に映されたのは間違いなく俺の知る黒宮蓮也だった。


「なっ……」


 ありえない。

 ありえずがない。

 なぜなら映画なのだから。


 黒宮蓮也。

 彼とは同じクラスメイトだ。

 けど、一言も話したことはない。


「おいおい、なんの冗談だこれ……」


 映画などではない。

 俺の知っているやつが知っている名前のままスケルトンを次から次へと蹴散らしている。

 なら……現実?


 そう考えるしかない。


『いやぁ〜、さすがとしか言えませんねえ。黒宮蓮也選手、まさかの120秒で41体のスケルトンの討伐を達成しましたよぉ〜。これがトップ配信者の実力なのでしょうか……』


 なんだなんだトップ配信者って?

 

 どうなってやがる?


 すぐさま俺はスマホで黒宮蓮也と検索する。


 当然のやつに黒宮蓮也のプロフィールが存在し、そこには


 "人気ダンジョン配信者"


 そう書かれていた。


 意味がわからない。

 ダンジョン配信者ってなんだよ。


 ニューチューブを開き、ダンジョン配信者と調べる。


「意味がわかんねェ……」


 試しに一番上に表示されていた、ミスターヴィクトリーという名前のチャンネルの動画を見てみることにした。


「よーしッ、今日はザコでも簡単に倒せるゴーレム講座をするぞぉッ!!」


 髪の毛のないムキムキな男──ミスターヴィクトリーはゴーレムに向かって殴りかかった。


「それはすなわち、筋トレをすることだア──ッ!! ヴィクトリーパーンチイイイ!!」


 拳はゴーレムに衝突するや否や、大爆発を起こした。


 粉々に砕けちるゴーレム。


 ミスターヴィクトリーは天井に向かって叫んだ。


「ヴィクトリーイイイ!!!!」


 と。


「ははは、どーなってやがるんだよ。いや、これは夢じゃねェなら……」


 考えられることは一つだけだった。

 これは、俺が戻ってきた現実世界はパラレルワールドだということ。

 ダンジョンが存在する世界線に来てしまったのだということ。


「あのくそ女神め、俺を変な世界線に送りやがって……覚えてろッ」


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰還した勇者はダンジョン配信が流行っているようなので異世界ノウハウで荒稼ぎする。 さい @Sai31

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ