帰還した勇者はダンジョン配信が流行っているようなので異世界ノウハウで荒稼ぎする。

さい

第1話

 高校二年の五月のことだった。

 俺こと青崎彼方は学校からの帰り、玄関を開けたと同時に真っ白な光に包まれ異世界転移というやつをしたのだった。

 理由は一つ、魔王を討伐するため。

 つまり、勇者として選ばれたのだ。

 テンプレ展開なチートスキルを持つ俺は魔王討伐のため、旅をし、二年という時間を費やし魔王城へと魔王討伐のために仲間たちとやってきたのだった。


 そして、今──


「んじゃ、早いところ終わりにしますか!」


 俺は剣を鞘から抜き、剣へと意識を集中させる。


 ビチビチビチビチ。


 剣から黒い稲妻が発生した。


「終わりだぜ魔王!! この一撃でなッ!!」


 両手で剣を握り、魔王城に向かって剣を振り下ろした。


 ズドドドーン!!


 黒い斬撃が魔王城に向かって放たれる。


 魔王城に衝突すると同時に大爆発を起こした。


 バンッ!!


 圧巻だ。

 自分の力が本当に恐ろしい。


「ふん、俺の勝ちだァ、魔王!!」


 パーンッ!!


 と、黒く気味が悪い空は青空になった。


 こうして、俺は魔王討伐に成功したのだった。


 んでだ。

 国をあげての魔王討伐による祭りを終え、俺は──


「なんちゅー、勝ち方よ!!」


 女神のいる全方真っ白な空間にやってきた。


 初めて異世界転移した時もここから全てが始まったのだと思うと、なんだか寂しく感じてしまう。


「魔王との一騎打ちが定番な展開でしょ!!」

「うるせーな、んなの知らねェよ。わざわざそんなことする必要ねェんだよ」

「はあ……いろんな世界の勇者を見てきたけど、あなたのような勝ち方をしてるのは初めて見たわ」


 呆れている様子の女神。


 初めの頃に教えてもらったことだが、女神は俺以外のやつも異世界へと転移させて俺とは違うまた違う世界の勇者にしているらしい。


「まあ、いいわ。これでまた私の実績が上がったから」


 勇者が魔王を討伐して、世界を救う。

 そうすることによって女神たちは実績を得ることができるようだ。


「それじゃ、約束通り最後に元の世界に戻る前に一つ願いを叶えてあげるわね」


 ああ、そんな約束してたっけな……。


 異世界での冒険に夢中になりすぎて忘れていた。


「ん、確かあれだったよな。俺が戻るのは転移前の時間軸の世界なんだよな?」

「ええ、そうよ。それで、何を願う?」


 腕を組み考える。


 頭がよくなりたい!

 ……違うな。

 モテたい!

 ……いいけど、これもちがう……。

 ん!!


 どうせならもっといい願いを叶えてほしい。

 なんたって、俺は命をかけて冒険したのだから!


「ならよ、今の俺のステータスをそのままで現実世界に戻してくれよ」


 ニヤリ、としながらそう言うと、ポカンと口を開け驚く女神。


「うえ?」


 間抜け顔だ。


 この世界でのステータスをそのままで現実世界に戻れば俺のどんな願いも叶えることができる!!

 俺ってなんて天才なのだろうか。


「どんな願いも叶えるんだろ?」

「そっ、そうだけど……わかったわ。その願い叶えるわね!!」


 しゃあああ!!

 最強の状態で現実世界に戻れるだなんて、これ以上の喜びはないぜ。


 異世界で魔王を討伐した俺は、こうしてステータスそのままで現実世界に戻ることになるのだった。

 ただ、この時の俺は知らない。

 俺が戻る世界はパラレルワールドだということを。


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