第78話 けじめをつけないといけない
私は、悠斗から土曜日の午後八時に日曜日は体調が悪いから会えないと言われてとてもショックを受けた。理由は体調不良。
金曜日は、桂さん達のクリパ、そして土曜日は矢田さんや遠藤さん達とのクリパ。でもそれは午後五時に終わった。
悠斗は何故午後八時になって体調不良を理由に日曜日会うのを断って来たんだろう。土曜日クリパが解散した時は調子良さそうだったんだけど。
駅で別れて悠斗はそのまま家に帰った筈。その間三時間、体調を壊すほどの事が有ったんだろうか。
私は翌日、普段しない学校の最寄り駅で悠斗を待つことにした。時間は分かっている。電車が入って来てうちの学校の生徒が一杯降りて来た。
あっ。悠斗が改札を出て来た。えっ?渡辺さんも一緒だ。どうして?でも渡辺さんは直ぐに小走りに学校の方へ行ってしまった。どういう事?
私は悠斗に近付くと
「悠斗おはよう」
「あっ、紗耶か。おはよう。どうしたんだ。こんな所で?」
「うん、日曜日体調悪いって聞いたから心配して」
「そうか。もうこの通り元気だ」
「今、渡辺さんと一緒だったよね?」
「ああ、優子とは同じ駅だから、いつもここまで一緒なんだ」
「そうなの」
どういう事だろう。渡辺さんとは友達関係に戻った事は知っているけど。でも駅が一緒なら私だってそうするか。
「ところでさ悠斗。学校も後三日だよね」
「そうだな。直ぐに冬休みだ」
「ねえ、明後日のクリスマス。会う約束忘れてないよね」
「忘れてないよ」
「じゃあ、放課後…」
校門まで着いてしまった。
「沙耶、その話は後にしようか」
「うん」
二人で教室に入るといつもの様に中山君が朝の挨拶をして来た。それに応えて自分の席に座ったのだけど後ろの矢田さんの雰囲気が違う。
何がどう違うって訳じゃないけど。そう悠斗を見る目が違うんだ。何故か自信ありげに彼を見ている。
遠藤さんは変わらない。どういう事。悠斗は前しか見ていないから矢田さんとは目を合わせていない。いつもの事だけど。私がおかしいのかな?
午前中の授業が終わって、お昼はいつもの様に悠斗と中山君と三人でお昼を食べた。といっても後ろに矢田さん、前に遠藤さんが居るけど。
誰もクリスマスの話はしていない。クリパが終わったからもういいのかもしれないけど私と悠斗のクリスマスは終わっていない。本当はその話をしたいのだけど、ここで喋ったら、また何か言われてしまう。
我慢して黙ってお昼を食べた。悠斗は食べ終わるとちょっとと言って教室の外に出た。おトイレだろう。
矢田さんも静かに立った。別に彼女も行くんだろう。私も行こうかな。
廊下に出ると矢田さんが歩いていたけど悠斗は居ない。入ったのかな?矢田さんは思った通りだった。まあ当たり前か。私も入って用を済ませた後、洗面台で手を洗っていると
「塚野さん、柏木君とは上手く行っているの?」
どういうつもりで聞いているのか知らないけど
「はい、二人でゆっくりと楽しいんでいます」
「そう、ゆっくりとか。良かったわね」
そう言うと出て行った。何故か言葉に自信がある。私がおトイレを出て廊下を歩いていると悠斗が桂さんと何か話している。桂さんは嬉しそうだ。
近付くうちに二人は別れた。桂さんがこっちに歩いて来る。嬉しそうな顔いや笑っている顔をして私を見ている。何か有ったのかな?
私は教室に戻って席に居る悠斗に
「さっき、桂さんと話していたでしょ?」
「ああ、金曜日のお礼を言われた」
「そうなんだ。嬉しそうな顔をしていたから」
矢田さんが
「だって柏木君が金曜日桂さん達2Bとクリパしたからでしょ。嬉しいんじゃない」
分かる気もするけど。
翌日はクリスマスイブだけど授業の後、大掃除が有って悠斗と過ごす事が出来なかった。大掃除も私は図書室に行って榊原先生と一緒に床の掃除や書棚にある書籍の整理とかしているので教室がどういう状況か分からない。
「塚野さん。柏木君と話した?」
「何をですか?」
「図書委員の話よ。あなたからも押してくれないと彼なってくれないわよ」
「でも先生が言っていたんじゃ…」
「何を言っているの。あんなの冗談に決まっているでしょう。彼は私が受け持つクラスの生徒よ。自分で自分の首を絞める気はないわ。
それにあなた達の関係まで関与する気は更々ないわ。まああんな事毎日やられたら困るから釘刺しただけよ」
「そうだったんですか?」
「当たり前じゃない」
悠斗が勘違いしている間に早く図書委員にさせないといけないという事か。
せっかくのイブだったけどこの日も駅で悠斗と別れた。でも明日は終業式。学校は早く終わる。絶対に成功させるんだ。
翌日の終業式はいつもの様に校長先生のお話と生徒指導から冬休みの過ごし方とか注意事項とか話が有って、それから教室に戻った。
後は、榊原先生が教室に来て通知表を渡して貰えば終わりだ。その後は、悠斗とうふふっ。
「どうしたの塚野さん。顔がにやけているわよ」
前に座る遠藤さんに言われてしまった。
「そ、そうかな。普通だよ」
「ふふっ、今日はクリスマスだものね」
「え、ええ。でも皆もそうでしょう」
「そうねぇ。じゃあ、柏木君貸してくれる」
「駄目!」
「あははっ、面白い」
そんな話をしている内に担任の榊原先生が入って来た。一言二言注意事項を言った後、通知表を渡してくれた。
そして挨拶して二学期が終わった。
「悠斗、帰ろう」
「うん」
はっきり言わないといけないな。何と言うかな。
今日は学校の最寄り駅から私の家の方に向かう電車に悠斗と二人で乗った。二人で吊革に並んで掴まる。ふふっ、これだけでも恋人同士に感じる。
二つ目の駅で降りる。ここからは歩いて五分だ。悠斗の手を握ると彼が握り直して来た。嬉しい。
「悠斗、今日は誰も居ないの」
「うん」
門を通って玄関を上がり洗面所で手を洗うと
「悠斗、まだお昼まで少しある。だから私の部屋に行こうか」
「うん」
彼、緊張しているのかな、さっきからうんとしか言わない。
「入って」
私は悠斗を先に部屋に入れた。そして私も入ってドアを閉めると
「悠斗」
彼に抱き着いた。そして顔を上に向けて目を閉じた。彼が抱き締めてくれない。私は目を開けて
「悠斗、どうしたの?」
「沙耶、出来ない」
「どうして?」
「友達に戻ろう」
「なんで?」
「沙耶、自信が無いんだ。君と関係を持ってもそのまま恋人としている事に…。自信が無いんだ」
「えっ?…。どうしたの。この前まではしてくれる予定だったよね。何で。他に理由があるんだよね。ねえ、何が有ったの?」
「沙耶…」
俺は金曜日と土曜日に起こった事をポイントだけ話した。
「そ、そんなぁ。まさか桂さんだけじゃなく矢田さんまで」
「だから、もう沙耶に相応しい男じゃなくなったんだ。こんな状態で君との関係まで持つことは出来ない」
「自信が無いってそういう事だったの」
「うん」
私は、ドアまで後ろ向きに下がると鍵を掛けたそして
制服の上着を脱ぐとシャツとキャミソールを一緒に頭から脱いだ。そしてスカートも。
「沙耶!」
「ねえ、悠斗。聞いて。この体は悠斗の為に毎日綺麗してずっと取って有ったんだよ。悠斗はもう渡辺さんとも関係がある。そこに桂さんや矢田さんが加わったからって私には関係ない。
私が大好きになった悠斗と言う一人の男が居るだけ。体の関係を気にするなら私にも同じ事をして。
そうすればそんな考え必要なくなる」
私はブラも取った。そして悠斗に抱き着くと
「離さない。絶対に誰が何をしようと絶対に話さない。悠斗して!」
彼の右手を私の左胸に持って行くと上から強引に掴ませた。
「どう?素敵でしょ。私以外で素手で触ったのは悠斗が初めてだよ」
まさかここまで積極的な子だとは。俺の右手から伝わる柔らかい感触が冷静な思考を邪魔している。
「沙耶、本当にいいんだな」
「うん」
友達からも色々聞いていた。悠斗は優しく本当に丁寧に優しくしてくれた。でも少し痛かった。
「沙耶、今日する予定じゃなかったから持って来てない」
「ふふっ、一番最初の時に学んだの。終わって丁度一週間。思い切り来て」
彼がと私の隣で目を閉じている。遂にこの時が来たんだ。もう悠斗は誰にも渡さない。ふふっ、桂さん、矢田さん、体の関係位で勝ったと思わないでね。勝負はこれからよ。
―――――
次回エピローグです。お楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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