第76話 それぞれのクリパ

今日から毎日投稿になります。残り四話です。お楽しみ下さい。


―――――


 俺は榊原先生から注意?脅された?後、駅に向かう途中で沙耶に金曜日の2Bの人達とのクリパの件を話した。


「悠斗、それって桂さんが仕組んだんじゃないの?」

「そう言われても男子からあそこまで言われて断るのは俺の今後の学校生活に影響でそうだったし」

「そうは言っても桂さんとそのお友達がいるんでしょう」

「でも男子も俺以外でも三人いるし」

「私、心配だよ」

「大丈夫だ。俺は桂さんとどうなる気もサラサラないから」

「でも…」


「それより、図書委員の件、あれどう見ても榊原先生の脅しだよな」

「ごめん、あそこで私が悠斗に抱き着かなければ」

「それはいいよ。でもいつも顔を出さない先生が何で来たんだ?」

「ああ、本当は私と話す予定だったのだけど、あれを見られて話がそれてしまったんだと思う。だから来るとしたら金曜日かな」

「そういう事?」

「ごめん」


 今回は沙耶の自爆の様だ。先生が来るのが先に分かっていればあんな事しなかったのに。弱みを握られてしまったな。


「でも、悠斗が図書員になってくれると嬉しい。悠斗が受付の時は私がいるし、私が受付の時は悠斗がいるし」

「それって沙耶から見ると全然変わらないんじゃないか?」

「そんなことないよ」



 翌、木曜日は、平穏?に過ごした。そして金曜日の放課後、直ぐに桂さんと男子達が迎えに来た。

「柏木、行こうぜ」

「分かった」


 ちょっとクラスの人達がえっ?って顔をしていた。矢田さんと遠藤さんは敵意むき出しで桂さんを見ている。

「悠斗さん行きましょう」


 言わなくてもいい言葉を。絶対にわざとだよな。



 

 連れて来られたのは、駅前のカラオケ店。俺は入った事無いけど、うちの生徒は結構利用しているらしくて、店員さんが常連さんの様に対応していた。


「悠斗さん、何か食べますか?一人一品頼まないといけないのです」

「そうなんですか?じゃあ、ポテトチップスで」

「分かりました。後あそこのドリンクサーバーで好きな飲み物が選べます」

「柏木、俺が教えるよ。でも嬉しいな。ここで変に通だとちょっとって感じだけど、カラオケ知らない所がナイスだぜ」

 これってどう答えればいいんだ?


「考えないで行こうぜ」


 ドリンクサーバーに行くと俺に声を掛けた男子が

「このグラスを取って、サーバーの受けに置いて飲みたい絵を押せばいいのさ」


 流石にそれは知っていたがこの男子が丁寧に説明してくれたので

「ありがとう、知らなかったよ」

「そうかぁ。良かった。嬉しいよ」


 理解出来ない嬉しさを言うと自分のドリンクを注いだ。ちなみに彼はコークとオレンジジュースと牛乳のミックスだ。本当に上手いのか?



 部屋に案内されたけど歌謡曲とか全然知らない俺は

「ごめん、全く知らないんだ」

「おう。流石だ。やっぱり柏木がアニソン歌う姿似合わないものな。俺達が歌うからその間話をしようぜ」


 勝手に個人的な理想の俺が作られている感じがする。一人が歌っている間は、残りの二人の男子が、黒川の事を聞いて来る。


「柏木、普通四メートル近い高さから飛び降りれないよな。なんかしているのか?」

「うーん、小さい頃から空手と棒術を稽古していた」

「すげぇ。だからあんなに飛べるんだ。俺なんか絶対に怖くて飛べないし着地も出来ないよ」


「おい、代われ。柏木、一年生からずっと成績一位じゃないか。何か魔法の勉強方法でもあるのか?」

「流石にそれは無いよ。予習と復習しかしていないよ」

「いや、俺だってその位は…」


「ねえ、男子だけ狡い。今度は私達!」



 今度は、女子達が俺に答え辛い質問をして来た。流石に答えに困っていると

「悠斗さん、飲み物が無くなっています。私が持って来て差し上げます」

「いいよ。自分で取りに行く」

「では一緒に行きましょう。私も無くなりましたから」


 ふふっ、いよいよスタートです。


 悠斗さんと一緒にドリンクサーバーに行ってお互いに好きな飲み物をグラスに入れた後、


「あっ!」



 桂さんが、いきなり躓いた。

「桂さん!」


 返事がない。仕方なく脈拍を取ると正常のようだ、でも声を掛けても返事がない。店員を呼ぼうとした時、女子が駆け付けた。


「どうしたの柏木君?」

「桂さんがいきなり倒れて」

「これって!直ぐに家に連絡する」

「えっ?救急車は?」

「そんな事じゃない!」


 じゃあ、どういう事なんだ?


 桂さんの頭の下に手を置いて目を閉じている桂さんをどうしようもなく支えているけど首元から手に感じる脈拍はしっかりとある。


 なんでこの子達は桂さんの実家に連絡したんだ?


 そんな事を思う暇も無く三分と経たないうちに男の人が現れた。


「お嬢様、いかがなされました?」

 返事がない。


「不味い。直ぐに運ぶぞ。君は一緒に来てくれ」

「えっ?!」

「えっ、じゃない。事は急ぐんだ、直ぐ来たまえ」


 何も分からないままにカラオケ店の外に出ると大きなステーションワゴンがカラオケ店の傍に横付けされて。真横のドアが大きく開いていた。



 何も分からなくとにかく桂さんと一緒に車に乗って十分も経たない内にどこかの家に連れて来られた。



 全く分からないままに彼女の体がベッドに乗せられて白衣を着た医師が彼女の体を触診している。

 そしてここ迄連れて来た男に


「面倒ですね」

「どう言う意味だ?」

「簡単な話だ。白雪姫症候群だ」

「はあ。しかしあれは…」

「とにかく事実だ。お嬢様がお目覚めになる条件は一つしかない」


 そう言うと男二人が俺の方視線を向けた。そして白衣を着た男が俺に近付くと

「君の名前は?」

「何でそれを聞く?」

「理由なんぞいい。名前は?」


 首元でも掴まれたら対応のしようもあるが真剣な目で俺を見ている。

「柏木悠斗だ」

「何!おい直ぐに御立(みたち)様に」

「はっ!」


 良くわからないが、さっき飛び出した男も白衣を着た男も居なくなってしまった。御立様って誰?



 五分も経たないうちに知っている顔が現れた。

「あなたは?」

「悠斗君。また会えるとは。何たる僥倖。娘の命と桂産業を救ってくれないか」

「どう言う事ですか?」

「簡単な事だ。君が美優に口付けしてくれればいい」

「意味が分かりませんが?」

「言葉の通りだ。娘に口付けしてくれないか。もう時間が無いんだ。娘の命を助けてくれ」


 いったいどういう事なんだ?でも時間が無いって?


「柏木君、時間を争うんだ」

「しかし」

「時間がない」



 どういうことか分からないままに彼女唇にほんのちょっと、本当に少しだけ触れると目の前に居る美少女が目を覚ました。


 そして俺の背中に腕を回して思い切り口付けをして来た。彼女の肩を掴んで押す様に唇を離すと

「悠斗さん…」


 彼女はもう一度目を閉じると俺の背中に回した手が解けた。

「葛城君、頼む。娘を助けてくれ。もう少し口付けをしてくれ。頼む」

「でも…」

「頼む」


 冷静な時だったら絶対にしなかったと思う。でも雰囲気にのまれた感じで仕方なしに桂さんにもう一度口付けをした。彼女の目が覚めるまでと思いそのまま口付けをした。


 後は…

 冷静さを失っていたのかも知れない。もしかしたストレスが溜まっていたのかも知れない。流れるままだった。いつの間にか男の人は居なくなり、俺と桂さんだけだった。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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