第42話 プールに行く日が晴れるとは限らない
俺は、夏合宿から帰って来た後は、本屋に行ったり図書館に行ったりして過ごした。
「お兄ちゃん、明日、プールに行くって言っていたよね」
「うん、でもなぁ」
テレビに映る天気予報は、明日は曇り後、雨となっている。プールに行くのだから雨が降っていても問題無いという考えもあるけど、やはり雨の中プールに入るのは心が萎える。
さっき、大吾から明日行くのかと連絡が有ったが、断りの連絡もない限り中止する訳には行かない。
翌朝、起きて窓から外を覗くと重そうな黒い雲がしっかりと垂れ下がっている。でも中止になっていない。
俺が駅から電車に乗る前にプールに行く為に四人で作ったグルチャに今から乗ると入力した。
俺の家から学校方向に乗って、学校の最寄り駅から二つ目が塚野さんの最寄り駅、隣が大吾の最寄り駅そしてその隣駅が矢田さんの最寄り駅だ。
分かりやすいように一番後ろの車両に乗ったと連絡した。今は、まだ午前八時。順調に行けば午前九時半にはプールの有る遊園地の駅に着ける。
塚野さんが待っている駅に着くと可愛い白の七分丈パンツに黄色のTシャツ、茶のチェックでかかと付サンダルそれに大きなバッグを持っている。学校では見せない雰囲気だ。電車に乗って来ると
「おはよう柏木君」
「おはよう塚野さん」
「ちょっと天気悪そうだけど」
「天気にだけは逆らえないからね」
私の目論見がまさか最初から躓くとは、これは作戦変更必要かな。
大吾の待っている駅に着くと電車に乗って来た。俺と同じデニムジーンズに紺のTシャツとスポーツバッグだ。
「おはよう悠斗、塚野さん」
「おはようございます中山君」
「天気悪いな」
「ああ、こればかりはな」
そして矢田さんが待っている駅に着いた。電車に乗って来るとピンクのTシャツにデニム生地のショートパンツに赤のかかと付サンダル。塚野さんと矢田さんの趣味は違う様だ。当たり前か。
「おはよう、柏木君、中山君、塚野さん」
「「「おはよう」」」
「皆、少し天気悪いけど、今日は思い切り楽しもうね」
「矢田さんは元気いいな」
「当たり前よ。この日が来るのをずっと待っていたんだから」
「そ、そうか」
曇りという事は日焼けしやすい私の肌が焼かれなくて済む。紫外線の事はあるけど思い切り晴れているよりはいいかも知れない。日焼けの思いでは作れなくなったけどそれは仕方ないや。
お父さんがプールに行くと言うと心配したけど、私が中学一年の時助けてくれた男子で、今はもっと強くなっているし、その友達も男バスレギュラーで背が高くてがっちりしているからボディガードはいらないとお願いした。流石に居て欲しくない。
俺は大吾と夏休みの間の話をしながら座っている。矢田さんも塚野さんも楽しそう?に話をしている。良かった。
矢田さんと話を合わせているけど、本当は柏木君の隣で彼と話したい。けど今は仕方ない。ぐっと我慢だ。プールに着けば彼と話すチャンスはいくらでもあるだろう。
柏木君が中山君とずっと話をしている。あの二人に割って入って話すほど、まだ私は柏木君と仲が良い訳ではない。プールに到着してからだ。
俺が電車に乗ってから一時間半弱で遊園地の最寄り駅に着いた。目の前に遊園地がある。
「うわぁ、天気悪くても並んでいるなあ」
「悠斗、それは俺達も同じだ。それよりチケット売り場に早く並ぼうぜ」
「そうだな」
俺達は固まって四人で並んだ。十分も並ばないでチケットを買えた。入り口でチケットを見せてから右に曲がりプールの入口でもう一度チケット見せてから中に入った。
直ぐ左手にロッカールーム兼更衣室がある。
「着替えたらここで」
「「うん」」
俺と大吾が更衣室に入ると空いているロッカーを開けた。
「悠斗、この天気だと途中から雨降りそうだな」
「ああ、でも水の中だから中止って訳にもいかないし」
「そうだな」
そんな事を話している内に着替えも終り、大吾と二人で、外で待っていると二人が出て来た。
塚野さんは、可愛いオレンジの水着に薄水色のラッシュガードを手に持って防水バッグは肩から掛けている。
驚いたのは、そのスタイルだ。電車に乗った時もちょっと気になったが、細い体に大きな胸、括れた腰に適当に大きなお尻、そして思い切り色白だ。普段の彼女からは想像がつかない。
そしてその横に立つのは矢田さん。彼女は普段からスタイルが良いのは分かっていたけど、こうして水色チェックのビキニを見ると流石に驚く。紺のラッシュガードを持ってやはり防水バッグを肩から掛けている。
矢田さんが
「どうかな?」
「とても似合っている。素敵です」
「ふふっ、ありがとう柏木君」
「私は?」
「塚野さんもとても素敵です。ちょっと驚いています」
「そ、そう。ありがとう」
あれ、ちょっと顔を赤くしたよ。
私は、塚野さんと一緒に更衣室に入って、彼女がTシャツを脱いでブラも取った時に驚いた。
えっ?!何、そのたわわな膨らみは?って感じ。スタイルでは負けないつもりだったけど前言撤回だ。その上真っ白い肌。これは作戦変更するしかない。
「あの二人共ラッシュガードを来たら?」
「うん、でも曇りだしいいよ」
「私も」
なんか目のやり場に困る。
俺達がプールサイドに行くと売店側にも人が一杯いる。
「どうする悠斗」
「そうだな。降って来ても良い様な所が良いな」
「じゃあ、監視台のちょっと後ろ辺りにするか。あそこなら横の売店に逃げれる」
「うん、矢田さんも塚野さんもいい?」
「「うん」」
俺達はシートを敷くと簡単に準備運動して流れるプールに入った。プールサイドにも結構人が居る。
「柏木君、浮輪欲しい」
「私も」
大吾と俺は泳げるのだけど、二人共金槌の様だ。まあ、このプールで泳ぐ事も無いけど。売店で浮輪を二つ借りて塚野さんと矢田さんが浮輪の中に入った。二人共お尻を浮輪の中に入れている。
プカーッ。プカーッ。
二人は浮いているけど、俺と大吾は適当に遊んでいると矢田さんが、
「柏木君引っ張って」
「私も」
大吾の顔を見ると
「悠斗、二人同時は厳しいだろうから別々に引いたら」
「でも…」
「じゃあ、俺が塚野さんを引くからさ」
「えっ、でもその後は柏木君が」
矢田さんに先に声を掛けられた。いつ声を掛けようか考えていたのに。
俺が、矢田さんの浮輪の紐を持って大吾が塚野さんの浮輪の紐を持つと
「じゃあ、行くぞ」
「おう」
二人で浮輪を引っ張った。女の子が乗っているといっても俺も大吾も力はある。流れる方向に引いているので楽だ。少し引いていると
「ふふっ、気持ちいい」
矢田さんはご満悦の様だ。少しして
「悠斗、じゃあ、交代するか」
「えっ、もうちょっと」
「だめ、矢田さん、交代です」
塚野さんが矢田さんに突っ込んだ。へーっ、こんな事言うんだ。
また、引っ張っていると
「柏木君、浮輪後ろから押して」
「えっ?良いけど」
「じゃあ、中山君私も」
「分かった」
後ろから押すのは難しいけど、流れに沿って押している内に
「ふふっ、気持ちいい。もっと強く押して」
「いいの?」
「うん」
「きゃーっ」
ザブーン。
少し力を入れたとたんに浮輪が前のめりになり見事に塚野さんがプールの中に落ちた。
「柏木くーん」
アタフタしながら俺にしがみついて来た。足が立つのにどうして?
「あの、塚野さん、足が立つけど」
「でも、怖かった」
な、なんと思い切り体に抱き着いて来た。彼女の柔らかい胸がもろに俺の鳩尾にくっ付いている。
「ちょっ、ちょっと。塚野さんやりすぎ。柏木君から離れて」
「嫌です、怖かったです。だからもう少し」
「駄目ー!」
大吾を見るとニヤニヤ笑っている。どうにかしてくれ。
―――――
プール後半次話に続きます。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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