第40話 夏休みの宿題は暑さに気を付けよう
夏休みの宿題は、梨花と陽子ちゃんと一緒にやっている。お昼も作ってくれて嬉しいのだが…。
陽子ちゃんがこの前買ったプリントの付いた黄色いTシャツ着ている。それを何故か俺の左隣でTシャツの首辺りを持ってパタパタとしている。
お陰で女の子らしいいい匂いがしてくる。そして一緒に白い肌が見え隠れしている。ちょっと心臓に悪い。
「陽子ちゃん、暑いのならエアコンもっと強くしようか?」
「いえ、丁度良いです」
こっちを見てニコッとして首元をパタパタしている。
「だって、暑そうだし」
「こ、これは…そう癖です。癖なんです。すみません」
「それなら仕方ないけど」
どう見ても意図的にしか見えないけど。
陽子ちゃんは優子とは違い、梨花と同じでお胸はちょっと控えめだ。それだから良かったのだけど…。
なんで優子の事がこんなに頭の中に入って来るんだ。やっぱり陽子ちゃん、優子に似ているからなんだよな。でも今更か。とにかく宿題に集中しないと。
悠斗お兄ちゃんを何とか私に振り向かせたい。梨花ちゃんにお願いして、夏休みの宿題を一緒に出来る様にした。
私とあの人の顔が似ている事くらい知っている。姉妹なんだから。それを悠斗お兄ちゃんが気にしている。でもこればかりはどうしようもない。
だからこの機会を使ってあの人とは違う私の魅力を何とか悠斗お兄ちゃんにアピールするんだ。
今も気にしてくれた。本当は抱き着いきたい。隣にいるんだもの。でもそんな事恥ずかしくて出来ない。
プールも良いけどスタイルはあの人に負ける。比較される様な所には行きたくない。だから遊園地を選んだ。遊園地なら私の魅力をもっとアピール出来る。
ふふっ、お兄ちゃん。陽子ちゃんを意識している。がんばれ陽子ちゃん。
私、矢田康子。自分の部屋で夏休みの宿題をやっている。本当は柏木君と一緒にやって、私の魅力をアピールしようと思ったのだけど、断られてしまった。
やるならプールは無しだと言われて。プールは絶対に外せないマストだ。私はスタイルに自信ある。プールで思い切り彼にくっ付いて、心を惹きつけるんだ。
勿論それだけじゃない。彼が大好きな優しい女の子をだという事もアピールしないと。今の所、敵は塚野さんだけ。私より可愛い顔をしているけど彼女だったら何とかなるかもしれない。
私、塚野沙耶。今一人で夏休みの宿題をやっている。本当は柏木君と一緒にやりたかったけど、プール行きと交換だと言われると流石に出来ない。
私は着痩せする。水着になれば彼は必ず私に注目してくれるはず。顔だって矢田さんより全然可愛い自信がある。
図書室に毎日来てくれているから会話も出来ているし、それとなく彼を好きだとアピールしている。でもまだ渡辺さんの後遺症が残っている。だからそれを私の魅力で吹き飛ばしてしまうんだ。矢田さんなら何とかなる。
最近、背筋がゾクゾクする時があるが、大丈夫かな。風邪引いたとは思えないだけど。
夏休みの宿題を梨花と陽子ちゃんと始めてから、ほとんどが終わった。今日の夕方には終わりそうだ。二人もほとんど終わっている様だ。
お昼になり梨花と陽子ちゃんが作ってくれた昼食を食べている。毎日違ったメニューだ。ちょっと驚き。
「お兄ちゃん、宿題の進捗はどう?」
「今日中に終わりそうだ。明日の午前中、見直して全部終わりかな」
「そうなんだ。私達も同じ。だから明日の午後、一緒に遊べない?」
「それはいいけど。二人だけの方が楽しくないか。俺なんかいたって邪魔だろう」
「そんなことないよ。ねえ陽子ちゃん」
「はい、悠斗お兄ちゃんが居てくれると楽しさが倍になります」
「ねっ、だから良いでしょう」
全く梨花の奴。腹の中見え見えだぞ。でもなぁ。
「悠斗お兄ちゃん、私と一緒に遊ぶのは嫌ですか?」
「えっ、そんな事ないよ。うん」
「じゃ、じゃあ。明日の午後は一緒で良いですね」
梨花を見るとニヤニヤしている。また嵌められた。
「そうしようか」
「「やったぁ!」」
結局、次の日、七月最後の日は梨花と陽子ちゃんと一緒に映画を見に行く事になった。夏休み向けの映画だ。有名な男性と女性俳優による恋愛映画。
俺の左隣に陽子ちゃん、右隣りに梨花が座っている。チラッと左と右を見ると一生懸命食い入るように見るのは良いのだけど、何故か左手は陽子ちゃんに右手は梨花に摑まれて俺が手が動かせない。
ちょっと手を放そうとしてもギュッと握り返してくる。映画館の中だし夢中になっているんだろうからいいんだけど。変な感じだ。
ふふっ、悠斗お兄ちゃんの手をギュッと掴んでいる。映画よりこっちの方に気が行ってしまって心臓がドキドキしている。
大きくてちょっとゴワゴワ固いけど安心出来る手だ。ずっと掴んでいたい。映画がずっと続けばいいのに。
お兄ちゃんの手久しぶりに掴んだけど、とても大きい。拳の部分が固いのは知ってるけど、手を握っているととても心が休まる。
本当は彼女なんか出来て欲しくないけど陽子ちゃんがお兄ちゃんを好きだって言われてから応援する事に決めた。だから何とか実らせてあげたい。
やっと映画が終わった。明りがついて場内が明るくなると梨花は手を放したのだけど陽子ちゃんが放してくれない。
「陽子ちゃん、手が」
「もう少しだけ、良いですか。映画の余韻が」
そういう事?仕方ないか。
「じゃあ、場内から出るまでね」
「はい」
陽子ちゃん顔が真っ赤なんだけど。場内を出るまで俺の手を握って少し顔を伏せる様にして歩いている。この位は仕方ないか。でもここまでにしないと。
場内から出た所で
「ごめん、ちょっと行って来る」
「「私も」」
「じゃあ、ここで待合せね」
「はい」
ふう、トイレに来たけど、まだ陽子ちゃんの手の温もりが残っているよ。気持ちは分かるけど…。でもきつい言葉なんて言いたくないし。どうすればいいのかな?
私はコンパートメントを出ると手洗い場所に来た。自分の手を見ると悠斗お兄ちゃんの手の温もりが残っている。左手はしっかりと洗って、右手は少しだけ洗ってトイレを出た。悠斗お兄ちゃんと梨花ちゃんはもう出ていた。
「陽子ちゃん、〇ックでジュース飲んで帰ろうか」
「はい」
もう少しだけ悠斗お兄ちゃんと一緒に居れる。嬉しい。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます