第31話 図書館でお勉強
GW後半三日目。後二日で終わってしまう。本当は後半はゴロゴロしていたかったんだけど、予定が随分変わってしまった。
今日も午前十時前に陽子ちゃんが来て、俺と梨花と三人で、リビングで一学期の復習をしている。範囲はほとんど無いからそれが終わったら、予習もするつもりだ。
それは、良いのだけど…。何故か。俺の右に梨花が左に陽子ちゃんがいる。梨花は、少しだけど離れて座っている。これはいい。
だけど陽子ちゃんが、ほとんど俺とくっ付いている位に近い。
「陽子ちゃん、ちょっと近くない?」
「いえ、この位近くないと、教えて貰う時、困ります」
そんな事言っても全然質問されないし、もっと離れていても。
ふふっ、陽子ちゃんから今回の事を聞いた時は流石に驚いた。でも彼女は姉の事があるから、とてもはっきりと口に出せない。
だからGWの少しの間でいいから、お兄ちゃんと一緒に居たいと言って来た。それでまず実行したのが買い物。
選ぶのは私達だけど、陽子ちゃんはお兄ちゃんに、似合うと言われる洋服やサンダルを欲しがった。
そして今日と明日は勉強会。これで陽子ちゃんの思いは少しは満たされるはず。でもまさか、前々からうちのお兄ちゃんの事が好きだったなんて。
お兄ちゃんが陽子ちゃんの姉を暴漢から救った時からの一目惚れとはね。高校もお兄ちゃんのいる都立大橋高校に行きたいから一緒に入ってくれと言われた。
私も陽子ちゃんも中学時代の学力はトップクラス。もっと偏差値の高い高校に行けるのに、ランクを落として迄お兄ちゃんと同じ学校に行きたいという彼女の心に感動して、一緒に入った。
勿論、陽子ちゃんの姉とお兄ちゃんの関係があのまま問題なく続けば陽子ちゃんは心の内に秘めたまま、二人の為に我慢するつもりだった。
でもあの女がお兄ちゃんを裏切った。だから、まずお兄ちゃんが陽子ちゃんをどう思っているか、知る為に陽子ちゃんはお兄ちゃんに謝った。
そしたら流石私のお兄ちゃん。姉の罪を妹が負うなんて事は無いと言ってくれた。そして私のいい友達で有ってほしいと。
ならば、もう遠慮する事はない。私は陽子ちゃんを全面的に応援する。それが今日の勉強会だ。
ふふっ、上手く糸口を掴めると良いね陽子ちゃん。
午前十二時を過ぎた。
「お兄ちゃん、お昼にしよう」
「それはいいけど、コンビニに行くか?」
「ううん、陽子ちゃんと一緒にお昼作るから待っていて」
「えっ?それは嬉しいけど」
二人がキッチンに行った。まあ、コンビニ弁当より二人の作ってくれるお昼の方が全然いいな。
「お兄ちゃんで来たよ」
梨花が俺を呼びに来た。三十分程して出来上がったのは、焼き豚チャーハン、スープそれに野菜サラダだ。上手いものだ。
「美味しそうだな」
「うん、食べて」
「「「頂きまーす」」」
俺は焼き豚チャーハンを一口入れて咀嚼すると
「上手い!」
「そうでしょう、それ陽子ちゃんが作ったチャーハンだよ」
「本当。陽子ちゃん料理上手だね。とても美味しいよ」
「ありがとうございます」
あれ、何故か顔を赤くしている。
食べ終わって少し休んでから、午後三時まで続けた。
「今日はここまでにしようか」
「午後五時までやろうよ」
「そ、そうか」
なんか梨花やる気満々だな。
十五分位休憩を入れてから午後五時までやった。
「ふーっ、流石に疲れた。今日はここで終わりにしよう」
「「うん」」
「お兄ちゃん、駅まで一緒に来て」
「えっ、俺が?」
「うん」
意味分からないけど陽子ちゃんと梨花と一緒に駅まで行った。ほんの五分だ。
「じゃあ、ここ迄ね。また明日ね、陽子ちゃん」
「はい、悠斗お兄ちゃん、今日はありがとうございました」
「うん」
陽子ちゃんが自分の家の方に歩いて行くのを見届けてから俺と梨花は家に戻った。途中、梨花が
「ねえ、お兄ちゃん。陽子ちゃんの事どう思う?」
「どう思うと言われても。梨花の大切な友達かな」
「あの女の事は?」
「陽子ちゃんが姉の事で何も影響受ける事はない。それだけだ」
「そっかぁ。流石だね私のお兄ちゃん」
私は、いきなりお兄ちゃんの手を握った。有る事を確かめる為に。
「うぉ!どうしたんだ。いきなり手を握って」
「どう、何か感じる」
「梨花の手は暖かい」
「そう言う事じゃなくてさ。私も女の子だよ。こうして女の子から手を繋がれてももう抵抗ない?」
「言っている意味が良く分からない。でも妹から手を握られて嫌な思いはしないさ」
「そう、じゃあこれが陽子ちゃんの手だったら?」
「梨花、お前まさか?」
「気が付いたの?」
「梨花だから握っても抵抗ない。でも他の女の子は駄目だよ。まだ癒えてないんだ」
「そっか、そうだよね。ごめんね。無理させちゃって。でも明日の勉強会はいいでしょう」
「それは構わないけど。そうだ、明日の勉強は図書館にしないか。俺借りたい本があるんだ」
「うーん、そうなんだ」
ちょっと急ぎすぎちゃったかな。
次の日は、梨花のお願いで午前中だけ、リビングで三人で勉強して、二人が作ってくれたお昼を三人で食べて図書館に行った。フリースペースは開いていた。
三人で同じように右に梨花、左に陽子ちゃんが座る並びだ。でもこの二日間、二人から質問をされる事は一度もなかった。
勉強が終わった後、三人で家に戻りながら
「お兄ちゃん、本借りたいって言ってなかったっけ」
「あっ、忘れちゃった。あははっ」
「もう」
ごめんね、陽子ちゃん、ちょっと調子に乗ってお兄ちゃんに突っ込み過ぎちゃった。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます