第29話 GWの間の学校は賑やかだ


 GWの前半が終わった。昨日は映画を見に行って終わりだと思っていたら、なんと矢田さんに会った。


 そして彼女から俺が中学一年の時にチャラ男から助けたあの時の女の子だと知った。

 流石に驚いたけど、お陰でその時の話も有って、一時間半も話し込んでしまったらしい。外で待っていたボディガードの人ってお腹空いたんじゃないだろうか。



 そんなの事を思い出しながら学校に行くと大吾が

「おはよう、悠斗」

「おはよう、大吾」

「悠斗どこか行ったか?」

「稽古と映画」

「へーっ、映画?悠斗がな?」

「偶には俺だって映画に行くさ」

「大吾は?」

「いつも同じだよ。バスケと家の手伝い」


 何故か、塚野さんと矢田さんがジッと俺の話を聞いている。そんなに面白いか?


「今日は体力測定があるな」

「ああ、少しは背が伸びたかな?」

「悠斗は去年百七十二センチって言っていただろう。もう少しあるんじゃないか」



 そんな話をしている内に榊原先生が入って来た。



 お昼を大吾と一緒に食べた後、体力測定になった。普段道場で稽古しているからこれは大した事無い。体を柔らかいし、反復横飛びは得意だ。


 そんな俺を見て矢田さんが声を掛けて来た。

「はぁ、柏木君って、頭も良いけど運動能力も凄いね。反復横飛びなんて私大嫌い」

「そう、俺はそうでもない」

「何かやっているの?そう言えば稽古とか言っていたけど」

「まあ、ちょっとね」

「ふうん。また後でね」


 柏木君、頭いいし、武道もしている。あの時私を助けてくれたのはそういう事か。条件揃い過ぎ。彼だったら一緒に居ても私を守ってくれるし、元彼とは別れて随分経つから問題ないし。私じゃ駄目かな。



 なんか、背筋寒かったけど。気の所為か。身長は五センチ伸びて百七十七センチだ。せめて百八十にはなりたいな。何とかなるか。



 私、塚野沙耶。遠目で柏木君を見ているけど、彼凄い運動能力だ。反復横飛びも他の人より全然早い。


 垂直高飛びが一メートル二十センチって何?垂直幅跳びが三メートル越えっていったい何よ、羽が付いているんじゃない。測定限界を超えているんだもの。


 上体起こしも頭が後ろに着くんじゃないかってくらい反れるし、五十メートル走も滅茶苦茶早い。


 背だってもうすぐ百八十センチに届きそうだ。かっこいいなあ。彼を何とかして図書委員にして、親交を深めればチャンス有るかも。

 


 悠斗はやはり目立っている。クラスの女子が皆悠斗を見ている。他の人、運動系の部活の人より優秀だから余計だ。


 何で私、馬鹿な事してしまったんだろう。今更ながら自分がした事に嫌気がする。



「悠斗、終わったかぁ」

「ああ、終わったよ」

「握力どの位だった?」

「右が七十五。左が八十だ。何でこんな事聞く?」

「な、何。七十五?八十?お前やっぱりバスケしろよ。背も高くなったし。運動神経抜群なんだから」

「勘弁してくれ。バスケは大吾に任せるよ」

「そうなのかぁ、残念だなぁ」


 全部終わって着替えて教室に戻って、大吾と喋りながら窓から外を見るとまだ、やっている人が居る。まあ全校生徒が一斉にやるんだから当たり前か。


 段々他の生徒も戻って来た。塚野さんが

「柏木君、ちょっと見ていたけど、凄い運動能力ね。その能力ぜひ図書委員で使って」

 意味分からん?


「あははっ、意味分かんない」

「いいじゃない。意味なんて。ねっ、図書委員になって、私を助けて」

「そう言われても、他の人にも声掛けたら」

「うん、私は柏木君になって欲しいんだ」

 また意味分からなない。笑ってごまかしていると帰ってきた矢田さんが、


「柏木君凄かったね。メッチャ、目立っていたよ」

「そ、そうかぁ。そんな事ないだろう」

「ううん。目立っていたよ。昨日も優しかったし」


―えっ、どういう事?

―矢田さんが柏木君と昨日会っていた?

―これは、もう柏木君に話しかけても良いって事?


「矢田さん、要らぬ事言うから」

「でも事実でしょ」

「確かにそうだけど、偶々映画の後、偶然会っただけで」

「偶然も運命よ」


 ここ迄来たら塚野さんを利用する必要なんてない。私とは普通に話をしてくれるんだから。


 それに塚野さん、どう見ても柏木君を狙っている。確かに私より可愛いけど、女の子の魅力は顔だけじゃないんだから。



 全員が教室に戻って来た。もうグラウンドで走っている人も居なくなった。大吾と何故か、塚野さん、矢田さんとガヤガヤ話をしていると担任の榊原先生が入って来た。まだジャージのままだ。それでもお胸様は強力にアピールしている。凄いな。



 放課後になり、今日も図書室に行く。今日も塚野さんだ。確かに毎日は大変だな。でも俺はやらない。絶対に向いていないと思っているからだ。



 毎日、柏木君は図書室に来てくれる常連さんになった。何とか彼が図書委員になるきっかけは無いのかな?


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。



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